これからの10年を見据えたモダンデータエクスペリエンスを、「Pure//Accelerate Digital」レポート
業績好調なピュア・ストレージがローンチした「Purity//FA 6.0」のインパクト
2020年07月28日 07時00分更新
「エンタープライズストレージはクラウドの時代に入っている。ブロックストレージ、ファイルストレージ、そしてオブジェクトストレージ――。我々はあらゆるクラウドをまたいで、これらのストレージをシンプルで一貫した“Storage-as-a-Service”として実現することで、エンタープライズの顧客にモダンデータエクスペリエンスを届けていく」
2020年6月10日(米国時間)、初のオンライン開催となったPure Storage(ピュア・ストレージ)の年次カンファレンス「Pure//Accelerate Digital」は、同社 CEO兼会長のチャールズ・ジャンカルロ氏がクラウドへのさらなるコミット、そして2019年9月に発表した同社の新たなイニシアティブ「モダンデータエクスペリエンス(Modern Data Experience)」を強調するオープニングキーノートでスタートした。
本カンファレンスにあわせ、Pure StorageではストレージOS最新版「Purity//FA 6.0」を発表している。Purity//FAは同社のオールフラッシュ製品群「FlashArray」シリーズで稼働するストレージOSであり、Pure Storageにとってのフラグシップソフトウェアとも言える存在だ。今回のアップグレードでは、とくに「ActiveDR」と「ファイル/ブロックのユニファイド対応」という2つの新機能が注目される。
本稿ではPurity//FA 6.0のアップデート内容を紹介しながら、ストレージ市場で好調な業績を続けるPure Storageの戦略、“モダンデータエクスペリエンス”の意味するところを読み解いていきたい。
重要な新機能、“ほぼRPOゼロのDR対策”と“ユニファイドストレージ”
前述したように、Purity//FA 6.0では多くの機能が追加/拡張されている。その中でも最も重要なアップデートがActiveDRと、Pure Storageが「//FA Files」と呼ぶブロックストレージとファイルストレージの機能統合である。以下、それぞれの概要を挙げておく。
●ActiveDR:同期/非同期に代わる“継続的な”レプリケーション
Purity//FAには、すでにデータ保護機能として近距離間の同期レプリケーションを実現する「ActiveCluster」や、ディザスタリカバリサイト(DRサイト)への定期的なデータコピー含む非同期レプリケーション機能が実装されているが、今回追加されたActiveDRは、いわば“継続的なレプリケーション”ともいえる新機能だ。都道府県や国をまたぐような遠距離拠点間においても「ほぼRPOゼロ」(RPO:目標復旧時点)のディザスタリカバリを実現する。
これまでの非同期レプリケーション機能では、定期的にDRサイトへデータをコピーする頻度が最短でも15分に1回程度だった。今回のActiveDRでは、ActiveClusterでも使われている「Pod」というメカニズムを用いて、2拠点にあるストレージアレイを従来よりも高い頻度で継続的にアクティブ/アクティブで同期する。これにより、障害時の高速なリカバリや、単一コマンドによるインテリジェントなフェイルバックが距離を問わずに可能になる。ActiveDR機能を有効にするための追加インフラも必要ない。Purity//FAの特徴であるシンプルで一貫したユーザエクスペリエンスもそのまま引き継いでいる。
カンファレンスに登壇したPure Storage ワールドワイドシステムエンジニアリング部門担当VPのショーン・ロズマリン(Shawn Rosemarin)氏は、ActiveDRを開発した背景を次のように語り、ActiveClusterで実現した近距離の同期レプリケーションのカバレッジを拡げることで、より多様なセキュリティニーズに対応した点を強調している。
「ランサムウェアや災害など、エンタープライズを取り巻く脅威は年々増大している。また、アプリケーションが稼働する環境が多様化していることから、ストレージのデータ保護機能には海を超えた拠点間であっても、リアルタイムでシームレスな同期が求められている」(ロズマリン氏)
すでに次のような検証済み構成環境において、ActiveDRを使用して重要なワークロードを保護できることが実証されている。
・VMwareのSite Recovery Managerに対応したActiveDRサポートを使用している仮想化ワークロード
・Microsoft SQL、Oracle、SAP、MongoDBなどTier1アプリ
●File//FA:FlashArrayをユニファイド化、ファイルアクセスも可能に
Purity//FAが動作するFlashArrayシリーズは、SAPやリレーショナルデータベースなど、低レイテンシが要求されるTier1アプリケーション/データベースワークロードを前提にしたブロックベースのストレージとして設計されている。一方、AI/マシンラーニングやデータウェアハウス、コンテナワークロードなど非構造化データを扱うことが多い「FlashBlade」シリーズはファイルベースのストレージとして設計されており、OSもFlashArrayのPurity//FAとは異なる「Purity//FB」が搭載されている。さらに、アーカイブやバックアップなど大量のTier2データ(コールドデータ)を扱う“容量”に特化したアプライアンス「FlashArray//C」シリーズも提供している。
このように、扱うデータやアプリケーションワークロードに応じて最適なパフォーマンスを発揮できるよう、ストレージラインナップを分ける――これがこれまでのPureStorageの戦略であった。
こうした既存の製品ラインナップの枠組みを大きく塗り替えるかもしれないアップデートが、ブロック/ファイルのネイティブなユニファイド統合を提供するFA//Filesである。これは、2019年4月にPure Storageが買収したCompuverdeのファイルストレージ機能をベースにした技術で、エンタープライズにおけるマルチクラウド化とそれにともなうファイル/オブジェクトストレージへのニーズ拡大を見据えての機能拡張といえる。
Purity//FAはこれまで、iSCSIおよびファイバチャネル(FC)といったブロックアクセスのためのストレージプロトコルをサポートしてきたが、2018年にはストレージとサーバの接続を高速化するNVMe-oF(FC/Ethernetに拡張)、そして今回のアップデートでファイルアクセスのためのSMBおよびNFSをネイティブサポートしたことで、幅広いマルチプロトコルアクセスを実現している。従来、ブロックストレージとしてFlashArrayを利用してきたユーザは、File//FAによりAI/マシンラーニングなどのアナリティクスワークロードもシームレスに実行することが可能となる。もちろん、これまでと同じ使い慣れたインタフェース(GUI/CLI/REST APIなど)で利用でき、ブロック/ファイルの両方の領域に対し、重複排除や圧縮、RAID-HAなどが有効となっている。
「我々の競合企業はまだブロックストレージにロックオンされており、いまだに10年前、20年前の技術――つまり、クラウドやフラッシュが登場する前の技術をベースにしたストレージを展開している。我々は違う。ひとつのプラットフォームでマルチユースをカバーし、1台であっても100台であっても、統合された環境でAPIによるシンプルな管理が可能だ。既存のPurityユーザであればアップデートコストも必要ない」(Pure Storage 戦略担当VP マット・キックスモーラー氏)
Purity FA 6.0では、このほかにも次のような新機能が追加されている。ActiveDR、File//FAを含め、マルチクラウドでの利用を前提にしていることがうかがえる。
・Microsoft Azureのクラウドブロックストレージ対応(ベータ提供)
・Google CloudへのCloudSnapによるバックアップ
・RSAの二要素認証/多要素認証を活用した確実なデータ保護
・VMware Tanzuのサポート
・サブスクリプションストレージサービス「Pure as-a-Service」におけるインタフェース「Pure1」のアップデート