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コロナ渦のいま、サイボウズ青野慶久氏とさくらインターネット田中邦裕氏が大いに語る<後編>

ポストコロナの時代、人々はようやくインターネットを使うようになる

2020年07月16日 10時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 6年ぶりとなるサイボウズ青野慶久氏とさくらインターネット田中邦裕氏の社長対談の後編は、ポストコロナを占う。時には厳しく、時にはポジティブに語る二人のトークには、オールウェイズコネクテッド、サブスクリプション、社会インフラなどさまざまなキーワードが飛び交った。(以下、敬称略 インタビュアー アスキー編集部 大谷イビサ)

サイボウズ 青野慶久氏とさくらインターネット 田中邦裕氏

悲観的な情報が多い中、ポジティブなメッセージを出したかった

大谷:前半(関連記事:帰ってきたサイボウズ・さくらの社長対談 クラウドと働き方はどう変わったか?)は6年前の対談の答え合わせが中心でしたが、後半は現在と未来の話をしていきたいと思います。まずコロナに関して言うと、お二人は「僕たちの緊急事態宣言」というプロジェクトを展開していますね。

青野:もともと共通の知人であるエッセンシャルマネジメントスクール(EMS)の西條 剛央さんが言い出しっぺ。コロナをきっかけに社会にメッセージを出したいということで、私と田中さんが呼ばれて「わたしの非常事態宣言〜でも悪いことばかりではないぞ(青野慶久) 」を出すことにしたんです。

田中:昨年3月に青野さんから誘われてEMSに参加しました。素晴らしいプログラムだったので、ポジティブなメッセージを出して行きたかったのです(わたしの非常事態宣言 〜 でも悪いことばかりではないぞ(田中邦裕) #わたしの非常事態宣言)。

青野:というか、なにより田中さんが基本ポジティブなんです。私はどちらかというと批判的なタイプ(笑)。

田中:EMSでリーダーシップについてみんなでアセスメントしたときも、青野さんとは全然違いましたよね。

青野:僕はどちらかというとスクラップ側で、田中さんはビルド側です。

大谷:なるほど。私も小説風の未来予想記事を書きましたが、ネガティブなことばかりではなく、ポジティブな変化も多いですよね(関連記事:2028年、リモートワークが消えた日)。

青野:目に見えないウイルスが世界をここまで変えてしまうわけだし、確かに怖いことも多いのですが、ポジティブと言って良い変化はいっぱいあります。代表的なのはテクノロジーは揃っていたのに、全然進まなかったテレワーク。みんな慌ててやり始めていて、ちょっと面白いですよね。

もちろん、最初はうまく行かないことばかりだろうし、生産性も下がると思いますが、コツをつかめば以前より効率よくなっているはず。出張や出勤がなくてもアウトプットは上がるし、無理に出勤させなくても良いので、働く人の幸福度も上がってくる。こうなると採用にも効いてくるので、考えてみればポジティブなこと多いですよね。

半年前は「会社来るの当たり前ですよ」と社員に言われていた

大谷:端的にポストコロナでの変化について、聞いてみたいです。

青野:ざくっと一言で言うと「人々はようやくインターネットを使うようになる」ということです。インターネットって当たり前のように普及しているように思われていますが、今となっては全然使われてなかったことがわかったわけです。

大谷・田中:なるほど!

青野:正直、行かなくてもいいのに飛行機で出張行っていたし、飲食店はネット使わない昭和型の経営をしてきたのですが、これからは人が集まれないので、おのずとインターネットに依存するようになります。だって、窓口業務なのに会ってはいけないんですよ(笑)。だから、普通の会社はもちろん、医療だったり、教育だったり、いろいろな分野でようやくみんなインターネットを使うようになるわけです。

大谷:ようやくインターネットが当たり前になると。

田中:うちの会社はリモートワークが割と普通だったので、全面リモートワークにもスムーズに移行できました。でも、「パケットが足らない」と言い出す社員がいます。「えっ?デザリング」と思ったら、自宅にインターネット回線がないので、いまから光ファイバ回線を引いている社員がけっこういるんです。「君たち、なんの会社で働いているんだと」(笑)。

大谷:さくらインターネットだろうと(笑)。

田中:そうなんです。だから、「オールウェイズコネクテッドかどうか」が今までとの違いかなと思うんです。最近、Amazonやヨドバシですら重いとかありますけど、実は利用者側も、事業者側もインターネット前提になってなかったんですよね。

新卒社員もずっとリモート勤務になっているので、先日オンライン呑み会をやったのですが、「会えないなんてつらいよね」と話しかけたら、ある新卒社員が「全然いいっす!今まで親からずっと外に出なさいと言われてきたのに、今は家にいろと言われて最高です」と言ってて、こいつは大物になるなと思いました(笑)。価値感の違いですよね。

大谷:確かに大物の予感しますね(笑)。

田中:私も「リモートワークだけあればいい」と言っているのではなくて、両方あっていいけど、「会社に行くのを前提にシステムが組まれている」のが気にくわんのですよね。リモートワーク前提で作られていればいいんです。だから、当社は「これからリモートワークを前提にする」と3月に宣言してしまいました。

出社していけないわけではないし、オフィスもなくさない予定ですが、個別の席も減っていくはず。だから、個別の席がほしいという人、新卒や転職でオフィスをぜひ見たいという人はそもそもうちの会社はなじまないかもしれません。「出社するのも、しないのも自由だよ」ならいいんですが、「出社しなければいけない人がいる」のはおかしい。

大谷:社員は理解してくれますかね。

田中:実は昨年末の朝礼で、「そもそも9時にここ来るのつらいし、なんで会社に来ないといけないんだ」という話をしました。われわれの生産設備であるパソコンは一人一台あるし、だったら家で朝から仕事して、日が暮れる夕方に終わらせればいいじゃないかって言ったんですけど、ほとんどの社員から「え?会社来るの当たり前ですよ」と言われたんです。

そのときはなんで出社しないのかわからないという結論だったんですが、それが(コロナ騒動を経て)ようやく社員に腹オチしてきた感じなんですよね。

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