2.5インチSSD「860 QVO」の正統後継シリーズ

8TBで10万円切りもあり得る!?最新SATA接続SSD「870 QVO」をレビュー

文●ジサトライッペイ 編集●ASCII

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8TBモデルもIntelligent TurboWriteの仕様は2TB/4TBモデルと同じ

 続いて、QLC NANDの要点とも言えるSLCキャッシュ(SamsungではIntelligent TurboWriteという呼称)の容量を見てみよう。

870 QVOのIntelligent TurboWriteの仕様
型番 MZ-77Q1T0B MZ-77Q2T0B MZ-77Q4T0B MZ-77Q8T0B
容量 1TB 2TB 4TB 8TB
標準キャッシュ容量 6GB
可変キャッシュ容量 36GB 72GB
最大キャッシュ容量 42GB 78GB
キャッシュ内シーケンシャルライト 530MB/s
キャッシュ外シーケンシャルライト 80MB/s 160MB/s

 Intelligent TurboWriteにおけるSLCキャッシュ容量も860 QVOと同じで、今回から加わった8TBモデルも2TB/4TBモデルと同サイズとなる。一般的に、TLC NAND(3bit記録)やQLC NAND(4bit記録)はそのまま使えばMLC NAND(2bit記録)と比べて速度が劣る。そこを疑似的にSLC NAND(1bit記録)のようにふるまえる領域をある一定容量で作り、そこに書き込むことでアクセス速度を上げる仕組みがSLCキャッシュだ。

 しかし、このSLCキャッシュという方法は当然その容量に限界がある。例えば、1TBのQLC NAND搭載SSDの全領域をSLCキャッシュ可能な領域に設定してしまうと、4bit記録のNANDを強引に1bit記録にする都合上、書き込める容量は4分の1にあたる250GBになってしまう。

 そんな状態の時に、仮に250GBよりも多いデータを一気に書いてしまうとどうなるのか? 製品によってそのふるまいは若干異なるが、SLCキャッシュからはみでたデータを記録するためにSLCキャッシュをQLCの領域に戻す作業が必要になり、その際に大幅なスピードダウンが起きる。ゆえに、スマートなメーカーはこのSLCキャッシュの容量設定を少なすぎず多すぎず、適切に設定しなければならない。

 人気を博した860 QVOの後継である870 QVOで、特に変更点がないとなると、おそらくこの容量設定がSamsung Electronicsの考える「ベストバランス」なのだろう。そして、それは8TBモデルでも同様の結論になったのだと思われる。

 また、Intellignet TurboWriteの領域が終わった後の速度は、860 QVOと比べて最大21%速いとしている。つまり、SLCキャッシュからはみ出るサイズのデータを書き込んだ際の速度が向上したということだ。

870 QVOのレビュアーズガイドより抜粋。2TBデータのランダムライト検証における速度の推移を表わしたグラフだ。Intelligent TurboWriteの領域は⼀瞬で 終わり、どちらも1113~12000秒付近まで30000~45000IOPS程度に落ちる。その後はまたがくんと速度が落ちるが、870 QVOは860 QVOよりも⾼い速度をキープしている

860 QVOとの速度差はわずかだが1TBモデルよりも8TBモデルのほうが速い

 ここからはベンチマークで870 QVOの実力を見ていこう。今回は870 QVOの1TBモデルと8TBモデル、比較用に860 QVOの1TBモデルを用意した。検証環境は以下となる。

検証環境
CPU Intel「Xeon W-3175X」(28C/56T、3.1~3.8GHz)
マザーボード ASUS「ROG Dominus Extreme」(Intel C621)
メモリー G.Skill「Trident Z Royal F4-3200C16Q-64GTRS」(DDR4-3200、16GB×4)、「Trident Z Royal F4-3200C16D-32GTRS」(DDR4-3200、16GB×2)×4
グラフィックス ASUS「ROG-STRIX-GTX1080TI-O11G-GAMING 」(GeForce GTX 1080 Ti)
ストレージ システムドライブ:Intel「SSD 760p SSDPEKKW010T8X1」(NVMe M.2 SSD、1TB)、データドライブ:Samsung Electronics「870 QVO MZ-77Q1T0」(SATA SSD、1TB)、Samsung Electronics「870 QVO MZ-77Q8T0」(SATA SSD、8TB)、Samsung Electronics「860 QVO MZ-76Q1T0」(SATA SSD、1TB)
電源ユニット SUPER FLOWER「LEADEX III GOLD ARGB 850W」(80 PLUS GOLD、850W)×2
OS Microsoft「Windows 10 Pro 64bit版」(November 2019 Update)

 それでは、定番ストレージベンチマークソフト「CrystalDiskMark」(7.0.0 x64)の結果から見ていこう。まずはオーソドックスな「1GiB」設定の結果。

870 QVO(1TBモデル)の結果(1GiB設定)

860 QVO(1TBモデル)の結果(1GiB設定)

870 QVO(8TBモデル)の結果(1GiB設定)

 概ねスペック通りといったところで、870 QVOと860 QVOの1TBモデルの性能差はほぼなかった。強いて挙げれば、4KBランダムリードが870 QVOのほうが16B/sほど速いぐらいだろう。870 QVOの8TBモデルになると、その差がさらに6MB/sほど開く。また、8TBモデルはQD1時のランダムリード/ライトが1TBモデルと比べて速かった。特にライトは1TBモデルの倍以上速く、Microsoft OfficeやゲームなどWindowsで動作する多くのアプリはQD1のワークロードなので、少しでもアプリの速度を高速化したいユーザーは8TBモデルを選ぶのもアリかもしれない。

 続いて、1TBモデルではIntelligent TurboWriteのSLCキャッシュの範囲外にはみ出るであろう、「64GiB」設定の結果を見てみよう。

870 QVO(1TBモデル)の結果(64GiB設定)

860 QVO(1TBモデル)の結果(64GiB設定)

870 QVO(8TBモデル)の結果(64GiB設定)

 870 QVOも860 QVOも1TBモデルはスペック通り、シーケンシャルライトの速度がIntelligent TurboWriteのSLCキャッシュが終わった後の速度である80MB/s程度になった。おもしろいのは4KBランダムの結果だ。870 QVOは860 QVOに対し、QD32時のリードで60MB/s程度速かった。なお、8TBモデルのSLCキャッシュ容量は最大78GBなので、1GiB設定時と同等の結果に落ち着いた。

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