イヤホンを購入した後で、自分好みにカスタマイズするのもポータブルオーディオの楽しみ方の一つだ。
ケーブルを交換する“リケーブル”なども人気だが、ここ1~2年で注目を集めているのが“イヤーピース”の変更だ。耳は個人ごとに形が大きく違うため、装着感にはどうしてもばらつきが生じてしまう。装着感をあげると、低音が逃げないようになるので音質も変化する。
イヤーピースで人気の製品として、イヤホンメーカーAZLAが開発した「SednaEarfit」(セドナイヤーフィット)がある。日本ではアユートが代理店を務めている。
SednaEarfitは、788人の外耳道を分析したデータ、医療グレードLSRシリコンの採用、2層構造の軸とホーン型のホール形状などによって装着感を高め、音質を調整している。
標準のSednaEarfitと、傘部の柔軟性を高めて耳道の負担を軽減する「SednaEarfit Light」の2タイプがこれまでリリースされており、それぞれに完全ワイヤレスイヤホンに適した軸の長さに変更したショートタイプがある。SednaEarfitはL/M/Sだけではなく、SS/MS/MLなどの細かなサイズを用意しているのも特徴だ。
そのSednaEarfitに新製品が登場した。人の体温で軟化して装着性を高めるという「SednaEarfit XELASTEC」(セドナイヤーフィット・セラスティック)だ。すでに6月26日から販売を開始している。
SednaEarfit XELASTECは、独KRAIBURG TPEの熱可逆性エラストマーを採用。熱により変形しやすくなる素材の特性を生かして、イヤホンを耳に装着していると、傘の部分が体温で軟化し、耳に吸い付くようなフィット感が得られるという。特定部分が痛くなるような現象も少ないという。またウレタンフォーム系のイヤピースと比較するとより耐久性が高いとしている。
ホーン形状ではなく、ストレートタイプの軸形状を採用している。SSやMLなどの細かいサイズ設定も引き継いでいるが、販売時は同じサイズを2個ずつ含めたパッケージのほかに、近いサイズを含めたペア(例えばSS/S/MSで一つのパッケージ)も用意されるという。実売価格は1サイズの2ペアが2000円弱、3サイズのペアが3000円弱となっている。
製品を試してみた。箱には完全ワイヤレスイヤホン専用とあるが、普通のイヤホンでももちろん使うことができる。
まずはAZLAの「AZEL」に装着して、SednaEarfit XELASTECのMLサイズを使用する。
はじめに思ったのは、イヤピースの傘部分の透明なデザインが美しいということだ。少しイヤホンの高級感が増して、どのイヤホンにも映えそうだ。次に感心したのは軸が柔らかいのでイヤホンにはめ込みやすいということだ。SednaEarfit Shortよりも柔らかく、はめ込みやすさはイヤーピースの中でもトップクラスのように思える。耳への装着感も柔らかく、抵抗なくすっと入る感じだ。痛みも少ない。
SednaEarfit Shortと比べて、低音がしっかり出るとともに、ボーカルの明瞭感が少し上がっているように思う。細かで小さな音が漏れていないという感じだ。AZELのようなエントリーイヤホンでも、微妙な差異だが音質の差を感じることができた。さらに時間とともに柔らかくなり、数分くらいでじわっと耳の形に変わっていくが、はめ込んですぐにでも違いは実感できると思う。
ハイエンドイヤホンのAcoustune「HS1670SS」にSednaEarfit XELASTECを装着してみると、より明瞭感が高く、楽器音も整って聞こえる。高性能なソースやイヤホンほど音質差は大きいように思える。おそらく、より細かい音が漏れなくなっていたり、遮音性の向上で外音ノイズに細かい音が埋もれにくくなっているためだろう。
完全ワイヤレスのLYPERTEK「TEVI」にも付けてみたが、吸い付くような装着感で脱落の恐れは少なくなるように思えた。いままでは「耳に置いている」感じだった感覚が、耳に張り付いているように感じる。ただし音質的な相違は小さいように思えた。またTEVIにおいてはML程度のサイズまでは、SednaEarfit XELASTECをつけたままで充電ケースに格納ができることを確認した。
試してみて、SednaEarfit XELASTECはかなり気に入った。装着感が優しく、音もいい。また完全ワイヤレスにおいてはより脱落がしにくくなるように思えた。AZELユーザーには特にお勧めしたいイヤーピースだ。イヤーピースであれば数千円でイヤホンをちょっとカスタマイズする楽しみが味わえるので試してみてはいかがだろうか。
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