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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第568回

難関のデータフロー方式に立ち向かったWave Computing AIプロセッサーの昨今

2020年06月22日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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データフロー・プロセッサーの夢破れる

 というわけで、この辺からオチに向かって進むわけだが、その第2世代のDFPは制御プロセッサーとしてMIPSの64bitコアを利用することをまず発表。次いで2018年6月には、そのMIPS Technologyそのものを買収した。

 2018年12月にはMIPS Open Initiativeと呼ばれる、MIPS命令のオープン化を発表する。このあたりから同社の方向性がどんどん怪しくなっていく。MIPS Openそのものは確かにそれを検討した潜在カスタマーがそれなりにいたようだが、ビジネスにさっぱりつながらない状況が続いた。

 その一方で、肝心のWaveオリジナルのDFPの方もさっぱり買い手がつかず、第2世代のDFPの作業も怪しくなっていったらしい。MIPSビジネスを推進していた元CEOのDerek Meyer氏は2019年5月に、後任CEOのArt Swift氏(MIPSのライセンスビジネス担当VPから昇格)も9月には辞任している。

 Hot ChipsでDFPの発表を行なったCTOのChris Nicol博士も2019年10月に辞任。2018年末に12人いた重役が、Nicol博士退任時には3人(現在は2人)にまで減るというありさまである。

 その翌月の2019年11月14日にWave Computingは突如としてMIPS Open Initiative打ち切りを表明。そして今年4月28日に、米国連邦倒産法11章の適用、つまり経営破綻したことを発表した

 現在はDIP(Debtor in Possession:旧経営者による事業再建)プロセスに入っているが、根本的にはDFPがとても手間が込んだ仕組みのわりに性能が出ず、AI業界にほとんど採用例がないのが問題であって、再建は容易ではない。

  • MIPS部門を売却して、その資金でDFPの立て直し
  • DFPを売却して、その資金でMIPS部門の立て直し

 今後Waveがとる道は、このどちらかしかないような気がするが、どちらもあまり魅力的でないのが最大の問題かもしれない。そしてデータフロー・プロセッサーの歴史には、また1つ「商業的に成功しなかった」事例が刻まれることになってしまった。

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