クアルトリクスが国内1万人の調査結果を発表、従業員の状況に対する会社側の理解とケアが重要
在宅勤務で「業務効率は下がった」が「今後も継続したい」―実態調査
2020年05月29日 12時30分更新
在宅勤務で「業務効率が下がった」は約5割、会社側のケアで緩和可能
それでは調査結果から、より具体的に在宅勤務の実施状況や従業員側の評価を見ていきたい。
そもそも、在宅勤務の実施率は業種ごとに大きく異なっている。今回の調査では、ソフトウェア情報処理、情報通信業、保険業などで70%程度の実施率(「完全に在宅勤務」「一部在宅勤務」の合計)となった一方で、医療や福祉、飲食店/宿泊業、運輸といった、対面業務や現場業務なしでは成り立ちにくい業種では15~25%にとどまる。
在宅勤務が実施できない理由を聞いた設問でも、「顧客と対面とのコミュニケーションが必要」という回答は上位に入る(29%)。最も多かったのが「勤務先にリモートでの接続環境が整っていない」(33%)、そのほか「リモートではアクセスできない情報がある」(25%)、「書類の受け取りや提出をする必要がある」(24%)が回答上位だった。
それでは、在宅勤務で業務効率は上がったのか。今回の調査で「効果が上がった」と感じている従業員は少数派である。完全在宅勤務をしている回答者のうち、効率が上がった(「効率が上がっている」「やや上がっている」の合計)のは18%にとどまり、一方で効率が下がった(「効率が下がっている」「やや下がっている」の合計)は48%と2.5倍以上に及ぶ。
ただしこれについては、在宅勤務をしていない回答者でも「効率が下がった」が約3割を占めており、単に勤務場所が変化したことだけが原因とは言えないようだ。市川氏は、そもそも緊急事態宣言下で経済全体が停滞していること、通常時と同じメンバーで業務が進められる状況ではないことなども、業務効率が下がったと感じる原因になっている可能性を指摘する。
さらに市川氏は、「(在宅勤務に対する)勤務先からの支援に満足を感じている人は、そこまで効率が下がっていない」とも述べている。勤務先の支援を「非常に不満」と感じている回答者の業務効率評価は、効率が上がったが9%、下がったが46%だったが、勤務先の支援に「非常に満足」している回答者群においては、効率が上がったが20%、下がったが34%と、結果が大きく異なっている。
前述したように、今回は多くの企業が準備不足の状況下で在宅勤務をスタートさせている。そうした中でも、従業員のニーズを理解して支援策を迅速に提供できる企業は、在宅勤務における業務効率低下を抑制できていると考えられる。