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前田知洋の“マジックとスペックのある人生” 第116回

マジックみたい!? 絵が変わる「レンチキュラー」をDIYしてみる

2020年05月19日 16時00分更新

文● 前田知洋 編集●ASCII

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レンチキュラーって……?

 レンチキュラーという技術をご存知でしょうか。これは左右の目にわずかに異なる画像を見せることで2Dの画像を3Dに見せたり、見る角度で違う画像を表示させたりする技術です。1900年代初頭に登場しました。

 身近なところでは文具店などで販売されている「3Dに見えるポストカード」といえばイメージしやすいでしょうか。昔は、タカラ(現タカラトミー)の「だっこちゃん」のマバタキする目にも使われていた……、でピンとくる人もいらっしゃるかもしれません。

よく知られる色鉛筆を使ったデモンストレーション

 

 古い技術ですから、原理は比較的簡単です。微細なカマボコ形のレンズが並んだ板が角度によって異なる画像を見せることで、3D、または変化する画像にと、見る人を錯覚させます。

見る角度で違う絵が見える

まだまだ活躍中、裸眼3DTVなどにも

 レンチキュラーは古い技術ですが、現在でもいろいろなところで活用されています。技術の向上で、より高精度の印刷が可能になり、冒頭でも紹介した3Dポストカードをはじめ、商業用のポスター、メガネなし(裸眼)の3DTVにも使われています。

 こう説明すると、なにか夢のような技術に思えるかもしれません。しかし、欠点がないわけではありません。3Dの場合は見る距離がある程度限定されることや、普通の印刷より数倍の費用がかかることなどです。

レンチキュラーをDIYしてみる

 いままで、そうしたレンチキュラーを個人で作ることは難しかったのですが、家庭用プリンターの解像度が上がったことやフォトレタッチソフトが身近になったことで、気軽にできるようになりました。

ステップ1 レンチキュラーレンズを手に入れる

 まず、レンチキュラーレンズを入手します。入手方法は「レンチキュラーレンズ 販売」でネット検索すると、企業や個人のオンライン販売などがヒットします。

 レンチキュラーレンズには「LPI(またはlpi)」で示される解像度があります。もし、工作やフォトレタッチが不安な方、もしくはお子様の研究工作が目的なら、40LPIを選ぶと良いかもしれません。筆者は、リタッチや工作に慣れているので、60LPI(糊なし)を使いました。

ステップ2 画像を用意する

 3D画像よりも、2つの画像に変化するタイプのほうが簡単です。3Dも以下と同じステップで作れますので参考にしていただければ幸いです。変化する画像はデザインの大きく異なるモノ、たとえば「昼と夜の風景」など違いが大きいほうが面白いはず。筆者はトランプを使いました。

 

ステップ3 出力サイズと画像解像度を決める

 入手したレンチキュラーレンズの解像度に合わせてレタッチソフトの解像度とサイズを設定します。3D画像なら横幅をレンズの解像度の倍数に設定、2つの画像に変化するタイプなら高さ、横幅のどちらをレンズの解像度の倍数に設定してもOKです。

解像度はレンズのLIPに合わせて設定

 筆者は60LPIのレンズを使い、高さを解像度の20倍の1200DPIに設定しました。出力するプリンターがその解像度に対応している必要があります。

ステップ4 2つの画像を1つにレタッチする

 2つの画像を格子状に組みあわせます。レタッチソフトのガイド線などを使いスリットを作ります。画面端の定規(ルーラ)はミリではなくピクセルに合わせたほうがやりやすいでしょう。今回は、1/60インチの幅に2つの(線のような)画像を収めました。

ハートの3とスペードのJを合成した画像

 ガイドにあわせて黒のスリットを作り、それを選択したのち、2つの画像を切り抜いて合成。

 もしフォトレタッチソフトでレイヤーが使えるなら、画像1、画像2、黒いスリットの3つにレイヤーを分けると便利です。

ステップ5 調整

 合成画像ができたら、出力してレンズにあわせてみます。うまく画像が変化しない場合は、プリンターの出力設定が「100%」になっているかを確認したり、紙送り方向を変えたりします。多くの家庭用プリンターでは、紙送りローラーよりも印刷ヘッドの精度が高いため、紙が送られる方向とスリットを平行にするとキレイに印刷できるはずです。

多くのプリンタでは紙送りとスリットを平行にしたほうがキレイに印刷される

 レンチキュラー画像を作成するフリーソフトもありますが、筆者の場合は幅などを画像調整をしたかったので、すべて手作業でおこないました。

ステップ6 貼り合わせ

 レンズが糊付きなら調整して貼り付けます。裏シートの端だけを切りレンズを動かして調整。ピッタリの位置が見つかったら、裏シートを剥がして接着させます。スマホの画面フィルムを貼る方法と似ています。

レンズの向きと解像度がピッタリ合うと、ひとつの角度からはひとつの画像だけが見える

 筆者はUVレジンを印刷面に塗り、レンズを調整してからUVライトを当てて接着しました。このステップで作業は終了、完成です。

DIYが苦手な方は専門業者に注文しましょう

 名刺や広告に使いたい方や、DIYが苦手な人はレンチキュラー印刷を少量でも請け負っている会社もあります。自社や自分ののPRや新製品のR&D、お子様の研究課題など、レンチキュラーを活用してみてはいかがでしょうか。

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。

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