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みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、横浜銀行、ふくおかFGなどの金融機関が参加

NEC、マルチバンクでの本人確認APIプラットフォームを展開

2020年05月08日 13時30分更新

文● 大河原克行 編集●大谷イビサ

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 NECは、金融機関におけるオンライン上での本人確認が可能なプラットフォームの提供を開始すると発表した。みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、横浜銀行、ふくおかフィナンシャルグループの5社の金融機関と、ポラリファイが協業に参加。「デジタル時代に対応した効率的かつ信頼性の高い本人確認方法の利活用を推進する」としている。

API経由で信頼性の高い本人確認が可能に

 NECは、プラットフォームの構築および運用を担当。参加企業とプラットフォームの開発および接続に関する検討を進め、2020年6月から順次稼働を開始する。まずは、「本人確認APIサービス」と「本人確認書類取得サービス」を用意。証券会社やクレジットカード会社など、厳格な本人確認が求められる事業者へのサービス提供を目指す。利用者は、運転免許証などの顔写真付きの本人確認資料を持たない場合でも、本人確認がオンラインで完結するため、より多くの利用者の利便性を高めることができる。

マルチバンクでの本人確認プラットフォーム

 NEC 第二金融ソリューション事業部ソリューション推進部長の児玉直宏氏は、「口座開設時などに求められる本人確認が、時間と場所を選ばずに、オンラインで完結するため、サービスの早期利用開始が可能になる。また、サービスの利用に際して、本人のみならず、多くの利用者が、より厳格な本人確認を経ることになり、より安心してサービスを利用できるようになる」とした。

 銀行および事業者は、APIを活用して同プラットフォームに接続すれば利用できる。金融機関は保有する氏名、住所、生年月日などの本人確認済情報を、本人の同意を都度得ることで、事業者は信頼性の高い本人確認が可能になり、これに基づいたサービスの提供ができるようになるという。これにより、本人確認APIのプラットフォームへの提供や、利用者の同意のもとにした本人確認済情報の提供、ユーザー認証を行なう。さらに同プラットフォームには、本人確認データは保持したり、蓄積したりはせず、利用者の許諾に基づいてデータを流通することになる。

サービスの提供イメージ

 児玉氏は、「あらゆる取引がデジタル化され、利便性が高まる一方で、不正利用など、デジタル社会における犯罪も増加している。本人を特定した上で、安心、安全なサービスを提供するニーズが急速に広がっている。現時点では、オンライン証券会社やFX事業者、仮想通貨事業者、クレジットカード会社、貸金業などからのニーズが高い。NECは、利用する事業者から使用手数料を徴収し、仲介手数料を得るビジネスモデルを想定している」という。

 カーシェアやシェアオフィス事業者のほか、クラウドソーシングや家事代行といった身元確認が必要な業種にも活用できるとしている。海外では、航空チケットの購入の際に本人確認をすることが決められているが、「今後は、テロ対策や、新型コロナウイルスの感染防止のために、搭乗者の身元を確認するといったトレンドも想定され、そうしたところでも活用が可能になる」などとした。

 今回、協業したポラリファイは、KYC(Know Your Customer)関連業務のノウハウの提供や、eKYC(electric Know Your Customer)ソリューションの提供を行なう。ポラリファイ以外にも、多様なeKYC事業者との連携を拡大し、プラットフォームへのアクセス性、利便性の向上を図り、幅広い事業者が利用可能なプラットフォームを構築するという。

複数の金融機関が利用できるオープンなプラットフォームの提供へ

 金融業界では、2018年の犯罪収益移転防止法(犯収法)の改正により、オンラインで完結できる本人確認方法のひとつとして、本人確認書類と銀行などへの顧客情報照会の組み合わせが認められている。同法の改正では、「写真付き本人確認書類+本人の容貌の画像送信、もしくはインターネット上のビデオ通話」、「ICチップ情報+本人の容貌の画像送信」なども認められており、これを使った仕組みが採用されている。だが、銀行の顧客情報を利用する例は、一部の銀行に留まっていた。

犯罪収益移転防止法への対応

 このプラットフォームを活用することにより、犯収法への対応が必要な事業者は、これまで本人確認時に行なっていた利用者宛郵便などの送付が不要になり、コスト削減や事務負担の削減が可能になる。また、利用者からサービス申込み時に入手する情報に加え、金融機関が持つ情報との照合が可能になるため、利用者の情報をより正確に把握して、サービス提供することが可能になる。

 一方、NECでは、同社が主催する産業横断イノベーション研究会「API Economy Initiative」において、複数の金融機関が参加し、業種や業界の垣根を超えたオープンAPIの利活用による安全、便利な社会の実現に向けて、約1年に渡って検討を進めてきた経緯があった。

 児玉氏は、「研究会において積極的に賛同してくれた金融機関が、今回、協業を発表した5社であった。金融機関が持つ本人確認済情報は、デジタル化が進展する経済社会において、認証基盤の一助になるとみており、これを幅広い業種で、安全に利活用できるよう、NECがオープンでセキュアなプラットフォームを開発し、金融機関が同プラットフォームを介して各社が有する本人確認済情報を提供することになる。事業者や利用者は、顔写真の画像ではなく、銀行に届け出ている本人確認情報を利用することができる」としたほか、「新型コロナウイルスの感染拡大の影響による経済の縮小は、経済を支える金融機関にとっては、歯がゆい思いがある。これは、金融機関が打ち出す新たな経済活動への取り組みであるとともに、既存の経済活動を維持する取り組みになる。外出や人との接触が自粛されるなか、このサービスは利用者、事業者に利便性を提供できるだろう」とした。

マルチバンク本人確認サービスのイメージ

 2019年から本人確認APIサービスに取り組んできた三菱UFJ銀行のデジタル企画部調査役の柳澤隆氏は、「事業者が、ひとつひとつの銀行とAPI接続して、契約するのは負荷になる。今回のように、ワンストップで提供できるプラットフォームがあれば、多くの事業者に本人確認サービスを提供できる」と述べた。

 将来的には、金融機関との話し合いを進めるなかで、残高や入出金明細情報、ローン情報、給与振り込み情報などの顧客情報にも対象を広げたり、幅広い業種を対象にしたシェアリングやマッチング事業への提供も検討していくことになるという。

総口座数は9500万口座 銀行全体での取り組みに意義

 現時点で参加を表明した金融機関の総口座数は9500万口座となり、そのうちインターネットバンキングなどが可能な6000万口座が、このサービスの対象になるという。将来的には、銀行数を拡大することで、1億口座以上を対象にサービスを提供したいとしている。今後、幅広い金融機関への参加の呼びかけを行ない、順次、接続する銀行を拡充していく予定だ。現在、北海道銀行、七十七銀行、北陸銀行、西日本フィナンシャルホールディングス、東日本銀行など十数行が参加を検討している。

 会見では参加する各金融機関もコメントを述べた。

 みずほ銀行 デジタルイノベーション部次長の田中秀樹氏は、「本人確認は、ネット取引が拡大するなかで必要になってくる。KYCが広がるなかで、銀行の情報の質は優位性があると考えている。安心、安全な社会を作る上で積極的に取り組みたい」とし、三菱UFJ銀行 デジタル企画部調査役の柳澤隆氏は、「個別行の取り組みとは別に、今回のような銀行全体での取り組みには意義がある。銀行口座は18歳以上では98%が持っており、その利便性を、さまざまなサービスのなかで使ってほしい」とコメント。

 三井住友銀行 法人デジタルソリューション部上席推進役の古賀正明氏は、「出資しているポラリファイがeKYCを提供しているほか、三井住友銀行でもAPIによって、世の中にどんな貢献ができるのかを試行錯誤している。今回の取り組みを通じて経済活動への貢献に焦点を当てて挑戦したい」と述べた。

 また、横浜銀行 デジタル戦略部グループ長の小糠純氏は、「銀行が持つKYC情報は信頼性が高い。幅広い事業者、個人の利用者にとっても有意義なものであり、これを地銀にも広く働きかけていきたい。地域事業者に利便性を提供する上でも必要な情報である」と語り、ふくおかフィナンシャルグループ イノベーション推進部主任調査役の平川昌路氏は、「金融機関の強みを生かせるサービスであり、金融機関同士が協業することで価値を高められる。このサービスを通じて、地域企業の経済活動に貢献したい」と述べた。

 NECでは、売上げ規模や提供する事業者数の目標は明らかにしていないが、「契約する事業者のすべての金融機関の参加を目指したい」とした。

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