現在、セイコーエプソンは、2021年度を最終年度とする「Epson 25 第2期中期経営計画」を推進している。
小川社長は、「中期経営計画の基本方針に変更はない」とし、「資産の最大活用と協業およびオープンイノベーションによる成長加速」、「本社からのコントロールによるグローバルオペレーションの強化」、「経済環境や戦略の実効性を踏まえた規律ある経営資源の投入」という3つの方針を掲げる一方、「大容量インクタンクモデルや、オフィス共有インクジェットプリンタなどの戦略商品の販売拡大を継続させると同時に、従来のエプソンでは実現できなかったような新たな成長分野での販売拡大が、2020年度の基本方針になる」と語る。
そのなかで、拡大しつつある先進国における大容量インクタンクモデルの認知度向上に取り組む姿勢をみせる。
「本体価格で選択するのではなく、生涯の印刷コストを比較してプリンタを選択することが当たり前になるように、TCOを訴求する一方、熱を使わないインク吐出技術である『Heat-Free Technology』など、環境性能の訴求も強化する」と、大容量インクタンクモデルのメリットを積極的に訴求する考えだ。
そして、「これらの取り組みは、オフィス共有インクジェットプリンタの拡大にもつながる。ディーラー各社と、インクジェットプリンタの価値訴求を行うとともに、ラインアップの継続的な強化に取り組む。さらに、サブスクリプション型サービスの拡大をはじめとして、エプソン商品を使うユーザーと直接つながることで、次なる打ち手につなげるなど、顧客接点の強化にこれまで以上に取り組む」と語る。
2019年度は、インクジェットプリンタ全体で、約1570万台を出荷。そのうち、約1000万台を大容量インクタンクモデルが占める。先進国でも、大容量インクタンクモデルの構成比は上昇しつつある。
一方で、これまでエプソンでは実現できなかったような新たな成長分野での販売拡大としては、商業/産業インクジェットプリンタにおけるプリントヘッド外販ビジネスの拡大のほか、この領域におけるエプソンブランドの完成品事業において、高生産性領域でのラインアップ強化を進めるとともに、ソフトウェアソリューションを組み合わせて提供することで、分散印刷などの提案を加速することになるという。
新型コロナウイルスによってビジネス環境は厳しい状況にある。しかも、終息したあとの社会は、これまでとは異なる常識が定着することが想定される。そのなかで、企業が生き残り、成長するためにはどんな手を打つのか。セイコーエプソンは、その模索を開始している。
この連載の記事
-
第606回
ビジネス
テプラは販売減、でもチャンスはピンチの中にこそある、キングジム新社長 -
第605回
ビジネス
10周年を迎えたVAIO、この数年に直面した「負のスパイラル」とは? -
第604回
ビジネス
秋葉原の専門店からBTO業界の雄に、サードウェーブこの先の伸びしろは? -
第603回
ビジネス
日本マイクロソフトが掲げた3大目標、そして隠されたもう一つの目標とは? -
第602回
ビジネス
ボッシュに全株式売却後の日立「白くまくん」 -
第601回
ビジネス
シャープらしい経営とは何か、そしてそれは成果につながるものなのか -
第600回
ビジネス
個人主義/利益偏重の時代だから問う「正直者の人生」、日立創業者・小平浪平氏のことば -
第599回
ビジネス
リコーと東芝テックによる合弁会社“エトリア”始動、複合機市場の将来は? -
第598回
ビジネス
GPT-4超え性能を実現した国内スタートアップELYZA、投資額の多寡ではなくチャレンジする姿勢こそ大事 -
第597回
ビジネス
危機感のなさを嘆くパナソニック楠見グループCEO、典型的な大企業病なのか? -
第596回
ビジネス
孫正義が“超AI”に言及、NVIDIAやOpen AIは逃した魚、しかし「準備運動は整った」 - この連載の一覧へ