日本電気(NEC)は4月23日、SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)ワクチンの設計に向けて、AI予測技術を活用した遺伝子解析の結果を公開した。
同社は2019年7月にがん治療を支援するための独自の機械学習を応用したソフトウェア開発を手掛けるノルウェーのバイオテクノロジー企業OncoImmunity ASを買収し、NEC OncoImmunity AS(NECオンコイミュニティ)を設立。本成果は、新型コロナウイルス感染症「COVID-19」感染拡大の対策として国際的に広がるワクチン開発を支援する取り組みであり、NECオンコイミュニティがNEC欧州研究所と協力して研究チームを立ち上げて得られたもの。本研究には、NECとNECオンコイミュニティが個別化がんワクチンの開発に使用しているAI予測技術を適用した。
本研究は、生物学の論文サイト「bioRxiv」で公開。研究結果では、数千種類のSARS-CoV-2のゲノム配列を解析し、世界中の人々に最もよく見出される100個のHLAアレル(多様な免疫の型)に対するエピトープ(ワクチンのターゲットとなり得るもの)を特定した。
具体的には予測アルゴリズムを用いて、コロナウイルスの名前の起源である表面のスパイクタンパク質だけでなく、SARS-CoV-2の全タンパク質を解析し、得られたデータをもとに、SARS-CoV-2のタンパク質の中から共通して見られるエピトープを重複して含む「ホットスポット」を、複数のHLAアレル型に対して特定。
また、本アルゴリズムを活用して、世界中の人々を最も広くカバーし、かつウイルスのタンパク質の中から変異が少なく今後も変異されにくいであろう保存領域で得られた最適なホットスポット群を優先的に選定した。さらに、安全性のためウイルスのエピトープで人のタンパク質との類似性が高く、特に重要臓器に発現しているものは除いた。