Ryzen Threadripper 3990XをLinux環境でベンチマーク
これまでRyzen Threadripper 3990Xのパフォーマンスをさまざまな側面から検証してきた。前々回はクリエイティブ系アプリで、前回はゲーム&ストリーミング&録画というメガタスク環境下で動かしてみた。
そして、本稿ではLinux環境でのパフォーマンス検証に入る。Windows 10では1プロセスあたり64スレッドまでしか使えないという「プロセッサーグループ」があるが、これが64コア(C)/128スレッド(T)のRyzen Threadripper 3990Xをいくばくか使いにくくしていると考えている人もいるだろう。
もちろんWindowsのアプリで対応することでプロセッサーグループの壁を越えることもできるが、プロセッサーグループの壁がそもそも存在しないLinux環境ではどうなのだろうか?
検証環境は?
Linux環境は筆者の好みから「Manjaro Linux」をチョイスした。検証時のバージョンは18.1.5、カーネルは「5.4.28-1」となる。
ここでの検証環境は前回ゲーム編とほぼ同一だが、ストレージはウエスタンデジタル製「WDS100T2X0C」を使用している。
【検証環境】 | |
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CPU | AMD「Ryzen Threadripper 3990X」 (64C/128T、最大4.2GHz) AMD「Ryzen Threadripper 3970X」 (ES版、32C/64T、最大4.5GHz) AMD「Ryzen 9 3950X」 (16C/32T、最大4.7GHz) AMD「Ryzen 9 3900X」 (12C/24T、最大4.6GHz) AMD「Ryzen 7 3800X」 (8C/16T、最大4.4GHz) |
マザーボード | ASRock「TRX40 Taichi」 (BIOS P1.60) GIGABYTE「X570 AORUS MASTER」 (BIOS F11) |
メモリー | G.Skill「F4-3200C16D-32GTZRX」×2 (DDR4-3200、16GB×4) |
ビデオカード | NVIDIA「GEFORCE RTX 2080 Ti Founders Edition」 |
ストレージ | ウエスタンデジタル「WDS100T2X0C」 (NVMe M.2 SSD、1TB) |
電源ユニット | Super Flower「Leadex Platinum 2000W」 (2000W、80Plus Platinum) |
CPUクーラー | CRYORIG「A80」 (簡易水冷、280mmラジエーター) |
OS | Windows10 Pro 64bit版 (November 2019 Update) |
また、各種ベンチマーク環境は「Phoronix Test Suite」で構築した。
CGレンダリング系の傾向はWindowsと同じ
まずCG系から検証してみよう。使用したテストは「C-Ray」「POV-Ray」および「V-Ray」レンダラーを利用したテストだ。
コア数が多いCPUほど速い、というごく当たり前の結果をなぞっただけのように見えるが、Linux版POV-RayはRyzen Threadripper 3990Xでも3970Xより速い点に注目。Windows版POV-Rayの公式ビルドでは64スレッド制限があるため、Ryzen Threadripper 3990Xと3970Xで差は付かず、128スレッド対応の特別ビルドを使ってはじめて差がついた。Linux版のPOV-Rayはその制約がないため、Ryzen Threadripper 3990Xの性能を引き出せている。
エンコード系では下位CPUが優越することもある
続いてはエンコード系を試してみよう。動画エンコーダーは「x264」「x265」「SVT-VP9」「libvpx」の4つ。テストの内容はPhoronix Test Suiteに準じているが、SVT-VP9のように選択肢(画質)がいくつか用意されているものについては、デフォルトと明示されているものを選択した。即ちSVT-VP9は「PSNR/SSIM Optimized」、libvpxは「Speed 5」としている。
エンコーダーの違いで傾向もかなり違っているのが面白い。まず、x264はRyzen勢よりもRyzen Thradripper勢の方が圧倒的に高速だが、3970Xと3990Xの間に差はほとんどない。Ryzen勢ではRyzen 7 3800Xがひときわ遅いものの、3900Xと3950Xの間に差はない。コア数だけでは頭打ちになるが、Ryzen Threadripperが特に速いのはメモリー帯域の差のようだ。
これに対しx265はどれも僅差。トップに立ったのはRyzen 7 3800Xなので、コア数やメモリー帯域はほとんど効かないエンコードだったことが分かる。同様の傾向はlibvpxにも言える。
最後にSVT-VP9はRyzen Threadripper勢が高速でx264に近い結果だが、ここでは3970Xが群を抜いて速い。Windows環境でのエンコード検証ではRyzen Threadripper 3990Xはあまり有効ではないが、Linux環境ではエンコーダー次第な面もあるが、3970Xより遅い時もあるといった感じだろう。
画像処理系はメモリー帯域が効く
次は画像処理系のベンチマークを試してみよう。まずはフリーのRAW現像アプリ「darktable」を利用したベンチだ。3種類のRAW画像に様々な補正処理を施す時間を比較する。GPU(OpenCL)を利用せず、CPUのみで実行した時の時間を比較した。
ここでもRyzen勢とRyzen Threadripper勢の間に深い溝があるが、Ryzen 9 3900Xと3950Xの間に差はなく、かつRyzen Threadripper 3970Xの方が3990Xより若干速いという点から、コア数はあまり効果がなく、メモリー帯域の太さが重要であると読み取れる。
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