3月に米オースティンで開催された先進スタートアップ主体のビジネスイベント「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)2018」。なかでも最大規模を誇る展示会が「TRADE SHOW」だ。ベンチャーから大企業まで、無数の最新プロダクト、サービスが出展されていた。
人工知能合奏技術を搭載したピアノ
ヤマハの「Duet with YOO」は、ピアノと映像表現を組み合わせた体験型インスタレーションだ。演奏するピアノの音に合わせて、スクリーン上に投影されたパートナーAI「YOO」がインタラクティブに変化する。そしてYOOには、独自開発の人工知能合奏システムが組み込まれており、まるで隣にいるかのようにプレイヤーの音を聴きながら連弾する。
演奏に慣れていなくても、YOOがタイミングを合わせて演奏を盛り上げる。また、プロのミュージシャンにとっては、昔からのパートナーのように息の合った演奏で応えてくれる。
東大関連チームが出展「Todai To Texas」
「Todai To Texas」は、東京大学関連のスタートアップやプロジェクトチームをSXSWに派遣するプロジェクトだ。今年も多くのチームが軒を連ねていた。
「Archileon」は、実寸大の建物がつくれる建築用3Dプリンターだ。曲線美を取り入れたデザインの建物を、低コストで建設できる。
従来の建築用3Dプリンターと異なり、自走式であるのが特徴。建造物より大きいUFOキャッチャー型の装置を作る必要がなく、時間とコストの大幅削減を可能としている。
続いて紹介する「Ninja Drone」は、飛行規制区域でも使用可能な、ワイヤーを伝って空中を移動する”飛ばない”ドローンだ。ロープウェー形式で直線状に行き来するだけでなく、3つのロボットアームによって別のワイヤーにも移動可能。広い会場内でも自由に動き回ることができる。
無線給電で完全に自律した状態で動かせるほか、カメラをつけることによってワイヤーを自動認識するといった機能も予定している。
屋外で展示されていた「WOTA」(ウォータ)は、孫泰蔵氏率いるMistletoe(ミスルトウ)発のスタートアップだ。排水の95%以上をキレイな水に再生するソフトウェアを開発している。濾過分析を独自のセンシングシステムとアルゴリズムによって実施。既存よりも安価で広く使える水の再利用システム「RAINBOX」として提供する。
「今のところ用途としてはシャワーや洗濯機くらいまでだが、2020年のオリンピックまでには、家全体のもの、少なくともコンセプトモデルレベルのものを明確にできたら」とCEOの北川力氏は語る。
じつは、2016年の熊本地震の際も現地に出ていたという。SXSWは、米国で実証実験的にサンプリングを行なうための前展開となる。水のインフラの心配は、日本でも今後人口減少・老朽化によって問題が顕在化する可能性がある。水処理にITを導入し、先んじて解決することを狙うという。