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百麺人・山本剛志の「語りたいラーメン店」 第8回

味で咲かせる心の桜はいつまでも散らない チラナイサクラ(東京・御徒町)

2020年04月09日 12時00分更新

文● 山本剛志 編集●ラーメンWalker

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 ※チラナイサクラは4月7日より新型コロナウイルス感染症の対策としてテイクアウトメニューのみで営業中となりますのでご注意ください

 2020年、観測史上最速で咲いた東京の桜は、「新型コロナウイルス拡散防止」という自粛の突風に煽られて、花見する機会を失ったまま散り始めてしまった。

 「今年の花見はお預けか」とお嘆きのあなたへ、御徒町の花見スポットをご紹介したい。その名も「チラナイサクラ」。

御徒町のガード下に店を構える

 御徒町駅南口から歩いてすぐの「御徒町らーめん横丁」に2014年開店。「気むずかし家」「烈士洵名」など、長野市を中心に様々なラーメン店を手掛けて、信州のラーメンシーンを切り拓いた塚田兼司氏が社長を務める「ボンドオブハーツ」による出店。

店内に描かれた巨大な絵にビックリ!

 客席の壁に大きく描かれた絵は、信州を拠点に活動している画家の越ちひろさんが、開店前の店に10日間通って製作したもの。桜の花と共に、あらゆる願いを叶えるという「如意輪観音」が描かれている。

 店長を始め、スタッフは女性を中心に構成されていて、浴衣姿でラーメンを作っている。

浴衣姿で提供(※本写真は編集部撮影)

 ラーメンだけでなくつまみメニューも豊富で、飲めるラーメン店でもある。

「味玉中華そば」

 基本メニューの「中華そば」に、半熟味玉をトッピング。鶏ガラに豚足や挽肉を加えた動物系をベースに、アサリやハマグリなどを使った「魚貝系」をプラスしたスープ。醤油ダレにはシジミエキスを加えていて、貝の旨みがこれでもかと広がる醤油味にまとめられている。化学調味料を使わずに仕上げている。

 塚田氏がプロデュースした小麦粉を使った中細麺は、ツルツルした食感がスープの旨みを引き出す。具にはアグー豚を使ったベーコンと鶏モモチャーシューを乗せている。ラーメン界の先達に想いをはせ、「いつまでも散らない桜でいてほしい」という想いが、力強さの中に優しさを込めた味に仕上げられている。

「王様中華そば」

 かつて長野市にあった老舗ラーメン店「光蘭」をオマージュして、信州のラーメン店で提供している「王様中華そば」。各店舗の味をベースにしているが、この店でもメニューに加えられている。大ぶりに切ったネギが入って、アツアツの醤油スープが染みこんでいく。たっぷり入った黒胡椒がネギと交差して絶妙な辛さを演出している。

「鶏と貝のつけ麺」

 こちらの麺は、塚田氏がプロデュースした、ラーメンとは異なる配合の小麦粉を使用した太麺。最後まで滑らかに啜れる優しさ溢れる食感。鶏白湯とアサリの旨みを加えて、甘さと酸味を感じるつけ汁が麺とマッチ。麺とつけ汁の一体感を口の全体で楽しめる。

「魔法の餃子」

 もちもちした皮に味がついていて、ニンニクやニラも入れてパワフルな肉の餡がたっぷり入った大ぶりな餃子。醤油や酢などをつけなくても美味しく食べられる所が「魔法」なのでしょう。

 他にも、「鶏の山賊揚」や「チャーハン」など、メニューは豊富。限定のラーメンやつまみメニューが登場する事も多いので、いつ行っても新しさを楽しめる。舌に心に、華やかな思いを残す店。

 現在は残念ながらコロナの影響で店内飲食は休止となり、お弁当やチャーハンなどのテイクアウトメニューのみでの営業だが、それでも散らない魅力を是非楽しんでほしい。

山本剛志 Takeshi Yamamoto (ラーメン評論家)

2000年放送の「TVチャンピオンラーメン王選手権(テレビ東京系列)」で優勝したラーメン王。全国47都道府県の10000軒、15000杯を食破した経験に基づく的確な評論は唯一無二。ラーメン評論家として確固たる地位を確立した現在も年に600杯前後のラーメンを食べ続けている。

百麺人(https://ramen.walkerplus.com/hyakumenjin/

本人Twitter @rawota

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