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百麺人・山本剛志の「語りたいラーメン店」 第18回

激戦区となった新宿で20年以上、名店から受け継がれた味 らーめん はな火屋(東京・新宿)

2020年06月25日 12時00分更新

文● 山本剛志 編集●ラーメンWalker

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 新宿西口の小滝橋通り沿いは、「麺屋武蔵」が出店した1998年以降「ラーメン激戦区」になった。「麺屋武蔵」が青山で創業した年に「中華そば 青葉」「くじら軒」も創業した事で、この3軒は「1996年組」と呼ばれるようになった。その言葉が定着した頃、「うちも1996年創業なんですよ」と言ってきたのが、「柳麺 ちゃぶ屋」店主の森住康二さんだった。

 「ちゃぶ屋」は1996年に新三河島駅近くの小さな店として創業。すぐに人気を集め、2001年に護国寺に移転したが、2012年に運営会社が破産して営業終了した。森住さんはその後、別のラーメン店などのプロデュースを歴任している。

 「ちゃぶ屋」出身の店は多く、それぞれに個性ある味を提供している。今回紹介する「らーめん はな火屋」もそのうちの一軒。しかし、他の出身者が護国寺時代のちゃぶ屋から独立しているのに対し、「はな火屋」は新三河島時代のちゃぶ屋から独立した事が大きな違いである。同時期に弟弟子の「ぶしょう屋」が池袋に開店したが、2005年に閉店している。

2019年に移転した「らーめん はな火屋」

 1997年に「柳麺 はな火屋」として開店。新宿西口の、小滝橋通りから一本入った場所で、「麺屋武蔵」が新宿に出店する前年、つまり「激戦区」と呼ばれる前からこのエリアに店を構えていた事になる。2019年に少し移転し、店名も「らーめん はな火屋」に少しだけ変わった。メニューは移転前と変わらず、味噌ラーメンやつけ麺も用意している。

「醤油らーめん」(700円)

 味の構成も移転前からの変化は感じない。先頭メニューの「醤油らーめん」は、豚骨メインで少し甘さを感じる澄んだスープ。そこにツルツルした口当たりが印象的な平打麺と、たっぷり入った焦がしネギの香りと苦味のインパクトが特徴になっている。たっぷり乗ったモヤシや、箸で掴めば崩れるほど柔らかなチャーシューを含め、新三河島時代の「ちゃぶ屋」の面影が、この一杯に表れている。

 「ちゃぶ屋」の味を受け継ぎつつ、今食べても現役の味なのが「はな火屋」の一杯。700円という価格も今では少数派かもしれない。激戦区となった新宿で20年以上店を続けてきたのは、味を含めて店を磨き上げてきたからこそだと、この一杯を完食して感じ入った。

山本剛志 Takeshi Yamamoto (ラーメン評論家)

2000年放送の「TVチャンピオンラーメン王選手権(テレビ東京系列)」で優勝したラーメン王。全国47都道府県の10000軒、15000杯を食破した経験に基づく的確な評論は唯一無二。ラーメン評論家として確固たる地位を確立した現在も年に600杯前後のラーメンを食べ続けている。

百麺人(https://ramen.walkerplus.com/hyakumenjin/

本人Twitter @rawota

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