筆者が居住する香港で5Gサービスが始まりました。香港には4つのキャリアがありますがそのうちの2社、CSLと中国移動香港が5Gを開始。日本とは異なる料金体形や、端末ラインナップを見てみたいと思います。
香港のキャリアの料金体系は日本のように音声+データというややこしいものではなく一括プランのみ。もはや音声通話はほぼ定額で、別途通話費がかかることはありません。そのため利用するデータ量でプランを選ぶことになります。5Gでは定額サービスが開始されると思いきや、残念ながら既存の4Gプランを大容量化したものに留まりました。
5Gということで100GBを使うことは当たり前になりそうなので、100GB前後のプランを見てみると、CSLが月398香港ドル(約5500円)で80GB、中国移動香港は月298香港ドル(約4100円)で100GB。高容量はどちらも300GBで、CSLが月698香港ドル(約9600円)、中国移動香港が月498香港ドル(約6800円)です。日本の5Gは割引サービスを受けると毎月3000円台のようですが、香港の価格は日本の定価レベルといったところでしょう。
端末はサムスン頼り、というのが実情です。CSLも中国移動香港も「Galaxy S20」「Galaxy S20+」「Galaxy S20 Ultra」を提供。サムスンは世界で最初に5Gスマートフォン「Galaxy S10 5G」を市場に投入して以来、ほぼ全世界の5Gキャリアに納入されており、5Gに関してのユーザーフィードバックも多く受けています。5Gのネットワーク回りの安定性は今のところサムスンが他社を一歩リードしていると言えるでしょう。
中国移動香港はサムスンのこの3機種のみを展開。一方、CSLはファーウェイ「HUAWEI Mate Xs」とVivo「NEX 3」も販売します。HUAWEI Mate Xsは言わずと知れた折りたたみスマートフォン。昨年発表した「HUAWEI Mate X」が中国でしか販売されず、ファーウェイの折りたたみ端末はうまくいっていないのでは? という懸念を感じさせました。しかし、HUAWEI Mate Xsはしっかりとグローバル展開されるようです。ただし、価格は19888香港ドル(約27万4000円)とかなり高価です。
また、VivoのNEX 3はポップアップのフロントカメラにフラッシュも組み込んだセルフィー機能強化モデル。中国では2019年9月に発売されており、すでに中国で多くのユーザーに使われています。価格は6698香港ドル(約9万3000円)で、香港の5Gスマートフォンの中では最安値です。
さて、気になるのは5Gの使えるエリア。日本の5Gはほぼ「点」の状態ではじまり、5Gを体験するにはその場所までいかねばならず、自宅付近ですぐ5Gが使える状況にはありません。香港もCSLのカバレッジを見るとまだ点のようで、エリアは多くありません。高層ビルが立ち並ぶ香港だけに、Sub6の電波も飛びにくくアンテナ配置には苦労しそうです。
そして、5GならではのサービスはVRを使ったライブ配信やバーチャルコンテンツ、4Kビデオや24ビット音楽配信などを提供。このあたりはどの国も同じですが、決め手となるコンテンツに欠けているという印象です。5Gの使えるエリアが広がることも重要ですが、5Gを積極的に使いたいと思わせるサービスが生まれてくることを望みます。
香港の5G開始は日本人にはあまり関係ないかもしれませんが、プリペイドSIMが自由に買える国だけにいずれプリペイドでの5Gサービスも始まるでしょう。またCSL、中国移動香港どちらも5G加入で中国への4Gローミングデータを最大20GB無料としています。中国での5Gローミングも早いうちに始まるでしょうから、中国で手軽に5Gを体験したい時に香港で出てくるだろう「5G対応プリペイドSIM」に期待が持てるのです。
しばらくは新型コロナウィルスの影響で海外渡航もままならぬ状況が続きますが、世界情勢が安定したころに外国人にも使いやすい5G商品が出てくることを楽しみにしたいと思います。
「スマホ好き」を名乗るなら絶対に読むべき
山根博士の新連載がASCII倶楽部で好評連載中!
長年、自らの足で携帯業界を取材しつづけている山根博士が、栄枯盛衰を解説。アスキーの連載「山根博士の海外モバイル通信」が世界のモバイルの「いま」と「未来」に関するものならば、ASCII倶楽部の「スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典」は、モバイルの「過去」を知るための新連載!
「アップルも最初は試行錯誤していた」「ノキアはなぜ、モバイルの王者の座を降りたのか」──熟練のガジェットマニアならなつかしく、若いモバイラーなら逆に新鮮。「スマホ」を語る上で絶対に必要な業界の歴史を山根博士と振り返りましょう!
→ASCII倶楽部「スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典」を読む
★ASCII倶楽部は、ASCIIが提供する会員サービスです。有料会員に登録すると、 会員限定の連載記事、特集企画が読めるようになるほか、過去の映像企画のアーカイブ閲覧、編集部員の生の声を掲載する会員限定メルマガの受信もできるようになります。さらに、電子雑誌「週刊アスキー」がバックナンバーを含めてブラウザー上で読み放題になるサービスも展開中です。
この連載の記事
-
第780回
スマホ
AQUOS R9 proのカメラ周りをドレスアップ! フィルター装着で広がるスマホの楽しみ方 -
第729回
スマホ
激薄折りたたみ「Galaxy Z Fold Special Edition」のケース3種類を試す -
第728回
スマホ
Xiaomi 14Tにフィルター装着できるMagSafeケース、香港の予約特典に登場 -
第727回
スマホ
Galaxyの2025年モデルがいよいよ登場「Galaxy A16 5G」が販売開始 -
第726回
スマホ
1700万円のシャオミ製スーパースポーツEV「SU7 Ultra」を広州モーターショーで見た -
第725回
スマホ
この冬一番の注目スマホ、超薄型折りたたみの「心系天下W25」がサムスンから登場 -
第724回
スマホ
駅名ごとGalaxy! クアラルンプールの「Samsung Galaxy駅」がスゴすぎた! -
第723回
スマホ
レトロデザインが可愛すぎる!? Nokiaケータイ風リュックの良さを知ってほしい! -
第722回
スマホ
iPhone 16発売直後の深セン、中国でも中古買い取りショップと転売が盛況 -
第721回
スマホ
日本と変わらぬ熱気がスゴイ! 中国・深セン版「ポタフェス」に行った -
第720回
スマホ
USBケーブルや電源プラグに4G内蔵も! 進化するモバイルルーターたち - この連載の一覧へ