収益性の低い半導体部門を独立させ
計測をメインに据える
さて2004年までの財務状況は下表の通りである。2003年はまだITバブルの余波が残っていたためか、低調ではある。といっても売上そのものは僅かながら持ち直している。
Semiconductor Products部門の業績(単位:ドル) | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
年度 | 売上 | 営業利益 | 純利益 | 部門別売上 | |||
Test& Measurement |
Automated test |
Semiconductor Products |
Chemical analysis/ Life Science |
||||
2003年 | 60億5600万 | -7億2500万 | -20億5800万 | 25億2900万 | 7億5500万 | 15億8600万 | 11億8600万 |
2004年 | 71億8100万 | 3億8600万 | 3億4900万 | 29億300万 | 9億2400万 | 20億2100万 | 13億3300万 |
営業利益が妙に低いのは、この年に10億ドル相当の税効果引当金が計上されているためで、営業利益が猛烈な赤字になっている格好だ。これもあって2004年には売上そのものがすべての部門で伸びるとともに黒字化も果たしている。
次の事業変革は2005年に発生した。この年、AgilentはSemiconductor Products部門を独立させることを決定する。背景にあるのは、計測をメインに据える同社と半導体製造がマッチしなくなりつつあることと、同部門の低い収益性である。
2002~2004年の業績は下表のとおりで、2002/2003年はともかくとして、2004年も営業利益率はわずかに8%でしかない。
Semiconductor Products部門の業績(単位:ドル) | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
年度 | 売上 | 営業利益 | ||||
2002年 | 15億5900万 | -1億1500万 | ||||
2003年 | 15億8600万 | -5900万 | ||||
2004年 | 20億2100万 | 1億6600万 |
もっとも2004年の年次報告によれば2004年度のROIC(投下資本利益率)は17%にも達しており、これはTest and Measurementの8%やAutomated Testの6%に比べてずっと高く、適切に投資を行なえばよりビジネスが改善する見込みは高いと思われた。
問題は、計測をメインとするAgilentがそこまで投資をすべきか? という話であり、その意味では分社化は適切な方策だったと思われる。
最終的にSemiconductor Products部門はAvago Technologiesとして独立する。当初はKKRとSilver Lake Partnersという2社のファンドにより買収され(買収総額は26億ドル)、まずは非上場企業として成立。2009年に上場を果たしている。
このAvagoの話は別にするとして、Semiconductor Productsを外に出したことで、Agilentは再び事業部門を再編。大きくProducts部門とServices部門に分割された。
Products部門はElectronic MeasurementとBio-analytical Measurement、Semiconductor test solutionsの3本柱からなり、Servicesは機器のインストールや保証サービスなどをまとめて担う形に改編されている。
ちなみにこの年、Barnholt氏は辞任。後任にはCOOを務めていたWilliam P. Sullivan氏がそのまま昇格した。
画像の出典は、Agilent Technologies Blog。
まずその2005年から2012年までの財務状況をまとめたのが下表である。2009年のみ猛烈に業績が落ちているが、これはリーマンショックの影響である。この年、同社は従業員の14%にあたる2700人を解雇するなどかなり苦しい局面を迎えていた。
Agilentの業績(単位:ドル) | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
年度 | 売上 | 営業利益 | 純利益 | 部門別売上 | |||
Products | Services&others | ||||||
2005年 | 51億3900万 | 18億100万 | 3億2700万 | 42億700万 | 9億3200万 | ||
2006年 | 49億7300万 | 14億3700万 | 3億30700万 | 41億2500万 | 8億4800万 | ||
2007年 | 54億2000万 | 6億3800万 | 6億3800万 | 45億500万 | 9億1500万 | ||
2008年 | 57億7400万 | 7億9500万 | 6億9300万 | 48億400万 | 9億7000万 | ||
2009年 | 44億8100万 | -3100万 | -3100万 | 35億6600万 | 9億1500万 | ||
2010年 | 54億4400万 | 6億8400万 | 6億8400万 | 44億6400万 | 9億8000万 | ||
2011年 | 66億1500万 | 10億3200万 | 10億1200万 | 54億8200万 | 11億3300万 | ||
2012年 | 68億5800万 | 11億1900万 | 11億5300万 | 56億5900万 | 11億9900万 |
ただ落ち込んだのはProducts部門で、Servicesはほとんど影響がないあたりが同社の強みでもあり、不況が一段落すると同社の業績もまた回復することになった。(続く)
この連載の記事
-
第803回
PC
トランジスタの当面の目標は電圧を0.3V未満に抑えつつ動作効率を5倍以上に引き上げること IEDM 2024レポート -
第802回
PC
16年間に渡り不可欠な存在であったISA Bus 消え去ったI/F史 -
第801回
PC
光インターコネクトで信号伝送の高速化を狙うインテル Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第800回
PC
プロセッサーから直接イーサネット信号を出せるBroadcomのCPO Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第799回
PC
世界最速に躍り出たスパコンEl Capitanはどうやって性能を改善したのか? 周波数は変えずにあるものを落とす -
第798回
PC
日本が開発したAIプロセッサーMN-Core 2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第797回
PC
わずか2年で完成させた韓国FuriosaAIのAIアクセラレーターRNGD Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第796回
PC
Metaが自社開発したAI推論用アクセラレーターMTIA v2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第795回
デジタル
AI性能を引き上げるInstinct MI325XとPensando Salina 400/Pollara 400がサーバーにインパクトをもたらす AMD CPUロードマップ -
第794回
デジタル
第5世代EPYCはMRDIMMをサポートしている? AMD CPUロードマップ -
第793回
PC
5nmの限界に早くもたどり着いてしまったWSE-3 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU - この連載の一覧へ