このページの本文へ

コロナ禍を生き残るためのテレワークの進め方 第1回

無料で提供サービスも多いこんなときこそ実践せよ

いまこそリモートワークにチャレンジ!PC、VPN、クラウドサービスはこう選べ

2020年03月06日 07時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

社内の業務システムにリモートアクセスするためのVPN

 業務の多くがクラウドサービスで実現している企業であれば、リモートワークは比較的容易だ。しかし、スタートアップ以外で業務システムがフルクラウド化されている会社はまだまだ少ない。業務システムのサーバーはオンプレミスで所有していることが多いので、会社以外からアクセスするためにはVPNが必要になってくる。

 VPNは特定のユーザーのみが安全にシステムにアクセスするための仕組み。VPNはVirtual Private Networkの略なので、まさにユーザーしか使えない専用線を仮想的に作り出す技術と言える。業務システムのサーバーを設置しているネットワークに安全に入るため、ユーザーのアクセスリクエストに対して認証を実施するVPNルーターやサービス、接続する側の端末にはVPNクライアントが必要になる。

 VPNルーターの導入で注意すべきは、同時アクセス数の見積もりだ。従来のVPNは本社と支社、営業所などのネットワーク同士をつなぐネットワーク間接続が多かったが、在宅勤務が前提となるとユーザーの端末と業務システムのネットワークをつなぐリモートアクセス接続になる。簡単に言ってしまえば、在宅勤務する社員の人数分のVPNアカウントを払いださなければならず、同時アクセスにも耐えうる性能も必要になる。当然、コストにも跳ね返ってくるため、今回の在宅勤務の用途であればユーザーと性能を柔軟に変更できるVPNサービスの方がオススメだ。

 意外とネックなのが接続元のVPNクライアントである。現在、VPNで用いられるプロトコルの多くはOSで標準サポートされているが、メーカーやサービス事業者によっては専用のVPNクライアントが必要になることもある。また、OS標準のVPN接続ではログ収集やアクセス制御などの機能が限定されるため、高機能な専用VPNクライアントが必要なことも多い。

 非常時ということで、重要なのは一度にすべての要件を実現しようと考えないこと。「オンプレミスとクラウドサービスを併用していて、認証をシングルサインオンでやりたい」「利用しているOSがWindowsのみならず、AndroidやiOSなど多様である」「特定のIPアドレスの接続しか許可したくない」などの用途を実現するためには、設計が複雑になる。あくまで非常事態として割り切った上で、要件を決める必要があるだろう。

最初の障壁はいまだに「ペーパーレス化」

 リモートワークと言うと、Web会議やコミュニケーションツールの導入というイメージがあるが、まずは「ペーパーレス」という前提がある。そもそも業務が紙に依存している場合、従業員に紙の資料を持ち帰ってもらったり、郵送で紙をやりとりする必要があるため、セキュリティやコストの点で現実的ではない。現在のリモートワークは、ペーパーレス化の前提をすでにクリアしているユーザーが、クリアしていないユーザーに対して語りかけていることが多く、議論がかみ合ってないことも多い。

 こうした実態はアドビが先日発表した「テレワーク勤務のメリットや課題に関する調査結果」でもあきらかだ。この調査報告では、「テレワークで働いているときに、紙書類などの処理対応のためにやむなく出社した経験があると回答した人は64.2%」に上っており、紙のワークフローがリモートワークの足かせになっている実態があきらかになっている。

「紙書類の確認や捺印などでやむなく出社」64.2%が経験アリ」(アドビ調べ)

 個人的な事例で恐縮だが、妻の勤めている中堅の不動産会社は紙のワークフローを放置したまま、フリーアドレス化とリモートワーク対応を同時に進めたため、実効性がまったく伴わないものになった。膨大な契約書のデータ化をどこまで進めるか、どこがコスト負担するかで半年間もめた結果、紙のワークフローは結局なくならなかったのだ。

 確かに社用ノートPCを家に持ち帰ることは可能だが、少なくとも妻の業務は紙の契約書の確認が必要になるため、オフィスへの出社が必須になった。やむをえず行なわれた措置が時差通勤だが、実際には始業時間が後ろにずれただけのため、単に帰りが遅くなるだけの話だった。しかも、3月以降の休校措置により、子供たちが終日在宅しているため、結局働き方の柔軟な会社にいる夫の私が在宅勤務を実施することになった。とはいえ、このパターンが使える家族は必ずしも多いとは思えないので、なんらかの形で在宅勤務にチャレンジしていく必要がある。改めて指摘するが、紙のワークフローはリモートワークにおいても大きなネックだ。

 紙の資料しかない場合はデータ化が必要になる。こうしたケースではアスキーでも連載しているAcrobat DCやAdobeScanのようなツールがオススメだ。クラウド側で文字認識(OCR)をかけてくれるため、検索可能なテキストとして保存されるし、Officeのフォーマットに出力できるなどファイル形式の汎用性が高い。

関連記事
柳谷智宣がAdobe Acrobat DCを使い倒してみた(連載INDEX)

 いったん紙の資料がデジタル化されてしまえば、参照や検索などは手元のPCでも容易になる。電子承認や文書の保護なども可能なので利便性は一気に高まる。現場でできることはまだまだ限られているだろうが、オフィスでしか取り扱えない紙をデジタル化するのが第一歩だ。

カテゴリートップへ

この連載の記事