kintoneとクラウド会計ソフト freeeを連携させることで、中小企業は販売・仕入・棚卸試算・原価管理から会計までを一気通貫でシステム化できる。この連携を成功させるためには、freee(以下、会計freee)が提供する「freee for kintone」に加えて、グレープシティのkintoneプラグイン「krewData」が重要になるという。kintoneパートナーであり、会計freeeのユーザーでもあるソウルウェアとジョイゾーに連携の価値と秘訣を聞いた。
kintoneとfreeeを連携させるfreee for kintoneとは?
ノンプログラミングで業務アプリを作れるサイボウズのkintoneとクラウド会計として多くのユーザーを持つ会計freee。2019年7月、freeeはkintoneとの連携ツール「freee for kintone」の無償提供を開始し、連携を強化した。なお、対象となるのは、kintoneスタンダードコースの契約ユーザー、会計freeeのプロフェッショナルプランもしくはエンタープライズプランを利用しているユーザーになる。
freee for kintoneはデータ連携を可能にする業務アプリとプラグインのセットで構成されている。たとえば、販売管理では見積もり、請求、売り上げ計上、入金までをカバーしており、kintoneのアプリからデータを引き継ぎ、会計freeeから見積書・請求書を作成できる。連携内容もカスタマイズでき、会計freeeで請求書を発行したくない場合は入金・出金を示すシンプルな「取引」として作成できる。これにより、会計freee側で登録した請求書の入金状況について、kintone側から一覧で確認できる。
freee for kintoneでは従来あった販売管理に関わる業務アプリとプラグインに加え、新たに以下のプラグインが提供されている。
・各種マスターデータ取得プラグイン
・取引先登録プラグイン
・書類登録プラグイン
・請求書登録プラグイン
・試算表取得プラグイン
・取引登録プラグイン
・振替伝票登録プラグイン
用途によってこれらのプラグインを組み合わせることで販売管理にだけでなく、仕入管理・棚卸資産管理・原価管理などを会計freeeと組み合わせて業務フローを設計できるようになる。
kintone&会計freeeの連携、メリットとデメリット
このfreee for kintoneをいち早く導入し、顧客にも提案しているのがkintoneパートナーのジョイゾーとソウルウェアだ。ジョイゾーは定額制SIサービス「システム39」を展開しつつ、プラグインも提供するkintone専業のシステム事業者。一方のソウルウェアはkintoneに帳票出力の機能を追加する「RepotoneU」、勤怠管理・経費精算クラウド「kincone」を提供する。ジョイゾー 代表取締役 四宮 靖隆氏とソウルウェア 代表取締役 吉田 超夫氏の2人にさっそく会計freeeの導入から聞いていこう。
大谷:まずは会計freeeを導入した経緯を教えてください。
四宮:うちは別のクラウド型の会計サービスから会計freeeに乗り換えました。以前使っていた会計サービスも機能面では特に不満はなかったのですが、請求管理を行なうのにkintoneと連携できるAPIがなかったんです。CSVファイルで流し込んでいましたが、件数が増えて、いよいよ限界を感じました。ちょうど弊社の定額型SI「システム39」でkintoneと会計freeeの連携も模索していたので、思い切って切り替えました。
吉田:うちも別の会計ソフトを使っていましたが、2016年に経理担当が滋賀県からリモートワークすることになった時点で、パソコンにインストールするタイプはあきらめ、クラウド型の会計freeeを導入しました。
大谷:既存の会計システムを使っていたということでしたが、導入はスムースでしたか?
四宮:財務・会計の知識がなくても使えるようになっているかわりに、概念が特殊でやや苦労しました(笑)。会計freeeの場合、入金・出金を記録したら自動的に仕訳されるのですが、既存の財務会計ソフトの感覚で使うと違和感があるので、慣れるのに3ヶ月くらいかかりました。
吉田:会計freeeって、入金と支払いのパターンが複雑だと帳尻あわせるのが大変なんです。とはいえ、うちの経理は複式帳簿を見るのが苦手な初心者だったので、会計freeeの方が使いやすかったそうです。
大谷:次にkintoneと会計freeeとの連携をどのように実現しているのか教えてください。
四宮:そもそもkintoneで財務会計のシステムを作るのは難しい。餅は餅屋なので、基本的には財務会計システムと連携する必要があります。
こうした連携のために、freeeからfreee for kintoneというツール(アプリとプラグイン)が提供されています。これを使ってkintoneのデータを会計freeeの項目にマッピングすれば、会計freeeに登録されている支払先や入金元などの取引先情報、売り上げや請求、勘定科目などをkintoneと同期させることができます。操作は手動にはなりますが、ノンコーディングで作れます。
大谷:具体的にはどういった連携イメージになるんですか?
四宮:ジョイゾーの販売管理の場合、kintoneのSI、プラグイン、チャットボットのJobocoの大きく3つのサービス・製品があり、それぞれ受注管理が違うため、その1つずつに販売管理用のkintoneアプリが用意されています。しかし、freee側の取引データベースは1つなので、freee for kintoneのプラグインで3つのビジネスで個別にマッピングさせる必要がありました。
吉田:基本的にはうちも同じですね。ただ、弊社はfreee for kintoneのプラグインではなく、CSVで連携させています。うちも受託開発とプラグインのサブスクリプション、その他の売り上げで管理がそれぞれバラバラなので、これらをCSV形式のデータに出力して同期させています。
大谷:freee for kintoneの連携で複数の販売管理に対応するのはまだ難しいのですね。
四宮:受注データには企業独自の項目があり、用意されていない項目が出てくるので、freeeのテンプレートに合わせられるよう、kintone側を作りなおす必要が出てきます。
吉田:うちもビジネスごとにCSVファイルを出力して、人力で作業していたのですが、効率を重視しているので1つにまとめるようにしています。商材が1つという会社でない限りは、この問題は起こると思います。
freeeとkintoneのデータ連携にはkrewDataしかない
このようなケースでkintoneと会計freeeの連携に重要な役割を果たすのが、kintoneアプリのデータを自由自在に集計・加工・結合できるグレープシティのkintoneプラグイン「krewData」だ。GUIの画面から入力アプリと出力アプリを設定し、必要な処理をドラッグ&ドロップで設計していけばフローを作成できる。また、データ集計処理をスケジュールで定期実行することも可能だ。ジョイゾーとソウルウェアに導入までの経緯とメリットを聞いていこう。
大谷:このfreee for kintoneのデータ連携部分を補うのがグレープシティのkrewDataなんですね。
四宮:はい。うちがkrewDataを導入したのは、まず複数アプリでデータ連携させるのに個別に作り込むのが大変だったから。会計freeeのインターフェイスにあわせて、アプリ側のデータを整形するのですが、krewDataはこうしたデータ連携が得意なので、選択肢はこれしかないですね。
吉田:たとえば、契約書と請求書が異なる場合、契約先の名前で会計freeeに登録するにはいくつかの作業が発生します。あとは取引先によって支払いサイトが違うとか。そうした細かい要件にあわせた整形もkrewDataでやっています。
大谷:なるほど。そもそもの導入のきっかけはなんですか?
吉田:krewDataが販売される前、プラグインのサブスクリプション契約は、前月の請求データを1つずつコピーして手作業で作っていました。一時期、RPAにやらせていたのですが、3ヶ月に1回くらい処理が止まってしまうので、これはやめようと(笑)。
困っていた頃に、ちょうどkrewDataが出たので使ってみたら、問題なく動きました。前月の請求データをコピーし、契約を解除したユーザーのデータをコピーしないようにしたり、日付を調整して、会計freeeで今月の請求データを作ります。この作業をkrewDataではバッチでやってくれます。
四宮:なによりkrewDataはバッチ処理で定期的に動いてくれるのが大きいです。これができないと、AWSのLambdaをトリガー経由で動かす必要があります。krewDataの最小ライセンス価格ではフローを定期的に実行できる数は3つまでなんですが、これがまた絶妙な数なんです。うちは2つでがんばっています(笑)。
吉田:うちはライセンス増やして上限数あげました(笑)。
大谷:ジョイゾーはどうやって使っているんですか?
四宮:新規のお客様がkintoneの顧客DBに入ってくるので、毎日バッチを動かして会計freeeに同期させています。プラグインの販売管理は1顧客1レコードになっているので、契約しているお客様で、なおかつ年額・月額の支払いをそれぞれ分けて、データを出力しています。
krewDataのいいところはこうした条件をすぐに変更できるところです。今まで銀行振り込みしかなかったけど、口座振替を追加するといった場合でも、請求日や支払い予定日の設定を変更すればいいので、そこは助かります。サブスクリプションのようにプラン変更する場合も柔軟に対応できます。
吉田:うちは自社製品のRepotovasとRepotoneUを連携させてます。これらもkrewDataと連携するので、いちいちボタンを押さなくても、自動的に郵送やFAX、メールでお客様に送ることができます。請求書のフォーマットもいろいろ選べますしね。
四宮:請求書は会計freeeでも作れますが、どっちでやるかは分かれると思います。うちはトヨクモの「プリントクリエイター」と「kMailer」を使って請求書を作っていますが、請求まで含めて会計freeeでやりたいというお客様もいらっしゃいます。会計freee側にデータを持ってきて、請求書を出して、入金や財務管理までやってしまうというパターンです。
kintone+会計freeeは中小企業向けの基幹システムになる
今まで業務システムはそれぞれサイロ化しており、データも手入力で移行させる必要があった。また、既存のシステムにカスタムなコードで増設を重ねた業務システムも多く、ビジネスの変化に柔軟に対応していくのが難しかった。
しかし、今のSaaSのトレンドはサービスとの連携だ。自社にフィットしたアプリケーション同士をAPIで連携させることで、1+1の価値を生み出すことが可能になる。しかも昨今のアプリケーション連携は、コードを書くことなく連携できる。現場のユーザーが自らの業務を効率化・自動化を実現できる。
大谷:会計freee+kintoneにkrewDataを組み合わせたメリットを教えてください。
吉田:仕訳データを作るのって、やっぱり手間がかかるんですよ。それを自動でできるというのがこのソリューションの最大のメリットです。月末で締めて、翌月に払うみたいな会社は多いと思いますが、krewDataを導入してからは1週間、いそげば2日間くらいで締められます。
さらに、kintoneのデータをグラフやピボットテーブルで可視化できるkrewDashboardを使えばグラフィカルに比較できるし、会計freeeを見れば残高まで追えます。財務状況がリアルタイムに近い状態で見られるので、経営者としてはうれしいですよね。
四宮:基幹システムがkintoneと会計freeeだけで作れます。うちのように中小規模だけど複数の商材を持っている会社であれば、この2つで十分まかなえます。
あとコスト面と柔軟性ですね。正直、krewDataを使いこなすには、ある程度の設計スキルが必要ですが、慣れてしまえば自社でできます。SIerにイチから開発をお願いするのに比べれば、トータルコストは絶対下がるはず。業務のフローってやはり変化していくものなので、業務を理解している現場でできるのはうれしいです。
吉田:うちの会社は最近インサイドセールスの担当が入ってきましたが、顧客情報を集めてスコアリングするとか自分でやっています。krewDataが出てきてくれたので、非エンジニアでもあれこれ試行錯誤できる。これこそkintoneの思想だと思います。
大谷:それって、ジョイゾーやソウルウェアのようなテック企業じゃなくても可能なんでしょうか? 導入のアドバイスを教えてください。
四宮:初期導入はやはりSIerに相談した方がいいと思います。とはいえ、定着や運用は現場で問題なくできると思います。うちはそれなりに試行錯誤したので、kintoneと会計freeeとの連携についてはお客様にきちんと提案できます。
吉田:うちはプロダクトが主力商材なので、連携のご相談が来たら、そのままジョイゾーさんにパスです(笑)。もちろん、ほかの会社にも紹介しますが、どこかで弊社のRepotoneUを使ってくれればOKです。
kintoneと会計freeeを連携させたいニーズは大きい
1+1の価値を生み出す会計freeeとkintoneの連携。自動化をもたらす会計システムとして多くのユーザーに支持される会計freee、現場の業務を効率化コミュニケーションkintone、そして両者の柔軟な連携を可能にするkrewDataは、「つないで作る」業務システムの次の可能性を感じさせる。もはやつながないのはもったいない。最後にグレープシティへの要望を聞いてみよう。
吉田:krewDataの設定にメモを付けられる機能を入れてほしいと要望しています。krewDataのデータ連携フローってけっこう壮大なものになるんです(笑)。
四宮:作ったときの達成感すごいですけどね。オレ、こんなの作ったんだ!みたいな。
吉田:だから、あとで変更をかけるときに、「なんのためにこの処理入れたんだっけ?と」ってなりがち(笑)。だから、メモを付けられるとうれしいです。
四宮:うちもわりと要望を出していて、たとえば、ルックアップフィールドを更新する機能は改善されて、自動採番も対応中と聞いています。
ただ、データ連携のテンプレートみたいなものはあるといいかもしれません。最近「システム39」でもkrewDataを提案することも増えていて、今は半分くらいの案件で提案しています。アプリ間のデータ連携の要望が多くて、毎月決まった日に請求データを出したいとか、1つのアプリに複数レコードまとめて作りたいとか、今までカスタマイズが必要でしたが、今はkrewDataで済みます。ただ、吉田さんが言ったとおり、設定ファイルが大きくなるので、よく使うものはテンプレートがあるとより提案しやすいです。
吉田:それから、freee for kintoneへの要望もありますね。現状では処理を動かすのにユーザーのボタン操作が必要なのですが、これを自動化できるようにしてもらえるととてもいいですね。あと技術的な情報がもう少し増えると助かります。
四宮:確かにfreee for kintoneに関しては技術的な情報が少ないですね。開発者向けの技術マニュアルと技術質問を受けてくれるサポートがあるとうれしいです。システム間でデータを連携させるには技術情報やサポートがどうしても必要なので。
吉田:でも、kintoneも最初はそういう情報少なかったですからね。freeeも最近コミュニティ活動に力を入れているので、kintoneのコミュニティとお互い情報共有できれば連携も進むと思います。
大谷:会計freeeとkintoneのユーザー数考えれば、連携させたいニーズもけっこうあるのではないかと思いますけどね。
吉田:うちのサイトでも、直接言及していないにもかかわらず、会計freeeとkintoneに言及しているページの閲覧数がとても高いです。やりたいけど、迷っているという会社多いのではないでしょうか?
(提供:グレープシティ)