OracleがItaniumのサポートを打ち切り
これがHPにとって大打撃となる
こうした動向に先んじてItaniumのマーケットは急速に縮小していった。諸悪の根源はインテルにあり、ロードマップ通りにItaniumを出荷できなかった&その間にx86プロセッサーがItaniumを上回る性能を叩き出すようになったのが最大の理由である。
とは言えHPはそもそもItaniumの共同開発パートナーということもあって、そう簡単に切るわけにはいかなかった。ただHPほどのしがらみがない他社はガンガン切り捨てを開始している。
例えばIBM/LenovoはItaniumを搭載したeServerやIntellistationといったエントリー~ミドルレンジ向けサーバーは提供したものの、POWERチップがあることもあってかハイエンドには採用せず、またAIXの移植作業も行なわれたものの、最終的な提供はなされなかった。
これはSolarisも同じである。Dellは割と早い時期にItaniumに見切りをつけている。マイクロソフトは2010年4月にWindows ServerとSQL ServerのItaniumサポート打ち切りを発表している。
そしてOracleは2011年3月に、Itaniumのサポート打ち切りを発表する。ただこのOracleのサポート打ち切りは、ItaniumベースのHP-UXマシン上でOracleを利用するユーザーを多数抱えているHPにとっては、いきなり製品ラインがまるごと屑になるのと同じ意味である。
マイクロソフトのケースと異なり、HPとOracleはItaniumベースのマシンに対するOracle製品供給の契約を結んでいる。それもあり2011年6月にHPはOracleを提訴。最終的に2012年、この訴訟でOracleは敗訴し、引き続きItanium版の製品開発とサポートを行なうことになった。
ただOracleは引き続き提供されるとは言っても、Oracle「だけ」があればアプリケーションの動作に問題がないわけではなく、新しい製品やサービスが移植されないItaniumでのアプリケーション環境は、どんどん厳しいものになっていく。
もちろん定型業務だけをやっていればこれもありなのだろうが、新しいビジネスに向けて新しいソリューションをシステムでサポートしたいと思っても、そのサポートに利用するソフトがItaniumでは動作しないとなると、やはりItaniumの利用シーンが減っていくのは避けられない。
この頃にはほぼItaniumの寿命は早晩なくなると見られており、そうなるとBusiness Critical Systemsの売上が着々と減っていくのも既定路線と見なされていたというべきだろう。
余談になるが、2016年にHPEはOracleを再び提訴している。これは2011年の打ち切り宣言により、顧客のItanium離れが加速した結果、HPEはビジネス上の損害を受けたというものである。
第一審は2016年7月に結審し、Oracleに対してHPEに30億ドルの損害賠償金を支払うように命じている。Oracleは2017年1月に控訴しており、今のところまだ結審していない。
ちなみに第一審の時点では30億ドルだった賠償額は、その後利息がおそよ毎日100万ドルの割合で発生している結果、現時点では38億ドルまで膨れ上がっている。

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