2歳児くんの保護者をしています盛田諒ですこんにちは。0歳のころは泣くことでしか意思を伝えられなかった子も3歳に近づくにつれて人間らしい会話ができるようになっていくのでえらいもんですね。話が通じないころは得もいわれぬ尊さを感じて神様などと呼んだものですが、この前「はるくんは何で動いてるんだろうね、電池かな、ガソリンかな」と聞いたら「はるくんは人だよ?」と人間宣言をされてしまいいました。そりゃそうですね。こっちが悪かった。
この1年、週末にはそんな2歳児を疲れさせるべく、葉山くんだりから方々へと出かけてきたものです。ふらっと行ける範囲では金沢動物園、京急油壷マリンパーク、津久井浜観光農園あたりによく行きました。ちょっと足を伸ばしたところでは、小田原城址公園内の小田原こども遊園地、こどもの国、はまぎん こども宇宙科学館。どこも年季の入った昭和な雰囲気で居心地がいいんですよね。名づけて昭和パーク。全体に公園のようにゆるい空気があり、気楽でいいものです。
新江ノ島水族館とか横浜・八景島シーパラダイスのようなピカピカのレジャー施設も楽しいのですが、なんせ激混みなので、人ごみの中でたたんだベビーカーをひっぱり、走りまわる子を追っかけながらだだっ広い施設をめぐっていくだけで完全に体力が尽きるんですね。帰宅して「お疲れさまでした」とビールを飲むところまでが込みになっている、いわばハレの日のレジャー施設です。
昭和パークの中でもヘビロテしているのが、三浦半島の南西部にある水族館・京急油壷マリンパーク。京急電鉄70周年記念事業として1968年に作られた施設で、ただ珍しい魚を見せるだけでなく、魚の生態や行動を活かした教育型の展示をしたことでも知られます。全体に年季が入っているのですが、学校のジオラマが入った水槽でイシダイが計算をするパフォーマンスをしてみせたり、子どもの興味を惹こうという工夫のあとがあちこちに残ってます。「魚の感覚をショーに仕組んで見せる新しい水族館」という構想を提唱した末廣恭雄初代館長の「いま子どもに見せるべきはこういうもんじゃ!」という熱い意気込みを感じさせられます。意気込みに投資した京急もエラいもんです。
ショーといえば、油壷マリンパークに来たすべての人に見てほしいのがいるか・あしかのパフォーマンスショー。「魔法使いにかけられたお姫さまの呪いを解いたものに財宝をやる」という話を聞きつけた「ペンギン海賊団」がパフォーマンスをしながら奮闘するという芝居仕立てになっています。麦わらが腕をのばしてぶん殴ったりすることもない平和な舞台。話の楽しさ、当時は最新鋭だったであろう照明を使った演出の面白さもさることながら、いるかたちがオラオラオラーッ!と惜しみなくジャンプしまくるのが最高です。ハンバーグ大盛りのお子様ランチみたいな満足感があるんですね。
ショーは屋内だけでなく、外の舞台を見ればヒーローショーもやっています。派手なアクションが見られることは大きなお友だちのあいだで知られているらしく、仮面ライダーゼロワンの舞台では客席の前後に三脚を立て、でかいレンズを構えた人たちがずらりと並んでおりました。トランポリンを使った宙返りやら香港スピン、フランケンシュタイナーなどの大技が次々くりだされ、普段テレビを見ていない子も売店のからあげ片手に見入っていました。
舞台の近くには児童遊園もあり、古びたコイン式遊具がたくさん並んでいます。お金を入れずに運転手ごっこをやっている子も多く、節約志向の親としては安心感があります。どこからか「これは動かないやつなんだよ」という声が聞こえて親同士の連帯感が生まれたこともありました。まずい、アンパンマンが動きはじめた。ねえあっちでカワウソ見ようよ。ねえねえ。
こうして昭和パークを公園感覚で楽しめるのは、子ども向けの遊び場に惜しみなく投資をしてくれた人々がいたからなんですよね。レガシーってのはこういうものなのかもしれないなと思いつつ、昭和な遊び場によりかかりすぎかなとも感じます。少子化が進むいま、青山こどもの城みたいに店をたたむところも増えてくるはず。お金をチャリンチャリンと落として支えていくのが使命なのかもしれません。次は動かしましょうか、アンパンマン……。
書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ。2歳児くんの保護者です。Facebookでおたより募集中。
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