自動走行ロボットによる無人配送など、空陸一貫輸送がインフラ化する未来
交通インフラWEEK×ASCII STARTUP出展募集説明会/講演会
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日本能率協会とASCII STARTUPは、「交通インフラWEEK 2020」の出展募集説明会と講演会「自動運転、スマートシティで生まれる交通インフラのビジネスチャンス」を市ヶ谷・五番町グランドビルのKADOKAWAセミナールームで開催した。講演では、CBcloudのITを活用した物流の最適化、楽天の自動走行ロボットによる無人配送サービス、JR東日本のMaaS実現へ向けたオープンイノベーションの取り組み事例を紹介、パネルディスカッションでは、交通インフラへ新しい技術を導入するためのポイントが議論された。
空港、電鉄、運輸関係者が集う「交通インフラWEEK 2020」出展者を募集
2020年4月8日~10日に幕張メッセにて開催する「交通インフラWEEK 2020」は、「第5回 駅と空港の設備機器展」、「集中展示 駅と空港内のサービスロボット」、「第3回 駐輪・駐車場システム・設備展」、「第5回 バス・トラック運行システム展」、「第1回スマートタクシーEXPO」の5つの展示会で構成される。前回「交通インフラWEEK 2019」の総来場者数は3日間で3万447人、出展者数は449社/811ブース(同時開催含む)という大規模なイベントだ。
とくに、昨今のMaaSやSociety5.0の推進から、先端テクノロジーを活用した交通インフラの注目度が高まっている。「交通インフラWEEK 2020」では、日本能率協会×ASCII STARTUPのコラボ企画エリアを設け、出展企業も募集。交通インフラは、生活を豊かにするための人の移動と物流のニーズは多岐にわたり、ITやAI、ロボットなどの技術をもつ企業やスタートアップにとって新たな事業を生むチャンスだ。
今回の講演会「自動運転、スマートシティで生まれる交通インフラのビジネスチャンス」は、JR東日本、自動走行ロボットによる配送サービスを開始した楽天、運送業界のIT化を促進するCBcloudの3社による最新事例の紹介と、交通インフラに求められるビジネスについて議論を展開した。
登壇者は、東日本旅客鉄道株式会社 技術イノベーション推進本部 ITストラテジー部門 次長 中川 剛志氏、楽天株式会社で自動走行ロボットによる配送サービスのプロジェクトを担当する牛嶋 裕之氏、運送業界のIT化を促進するCBcloud株式会社 執行役員 クライアント本部長の皆川 拓也氏の3名。モデレーターはASCII STARTUPの北島幹雄が務めた。
以下、登壇各社によるプレゼンとパネルディスカッションの模様をお届けする。
配送依頼から1分半でドライバーが見つかる「PickGo」
CBcloudは、即時配送マッチングプラットフォーム「PickGo」、車両管理ソリューション「ichimana」、宅配業務効率化ソリューション「LAMS」、カーリースの4つのサービスを展開している。PickGoは、物流版のUberとも言えるサービスだ。荷主から配送依頼が入ると、即時にドライバーのスマホに情報が届き、手の空いているドライバーとマッチングする。PickGoに登録可能な配送ドライバーは、軽自動車規格を業務用で登録している個人事業主に限定しているが、サービスインから3年で全国1万5000人超のドライバーが登録しており、毎月500~800人増えているという。
実績としては、マッチング率99%以上、発注からドライバーがエントリーするまでの時間は平均1分31秒と速い。荷主は各ドライバー評価実績からドライバーを選ぶことができ、位置情報からリアルタイムで運行状況を追跡できるのがPickGoならではの特徴だ。
現在は軽貨物の輸送に限られるが、今後は運送会社との連携を進め、一般貨物まで拡大する計画だ。
さらに新サービスとして、モノのMaaSへとサービスを拡げ、ANA Cargoと連携して空陸一貫輸送を開始。また、インバウンド顧客の増加を見据え、人と荷物を分離した輸送をJR東日本とともに進めている段階だ。
楽天の自動走行ロボット、エリア限定でサービス中
続いては、楽天の牛嶋 裕之氏より、自動走行ロボットによる無人配送サービスについての説明。
楽天の自動走行ロボットによる無人配送は、アプリで商品を注文するとロボットが自動走行してお客様の元へ届ける、というもの。2019年5月には千葉大学キャンパスで実証実験、9月21日~10月27日は、横須賀市のうみかぜ公園内で有料の配送サービスを実施した。
楽天では、まずは限られたエリアでの実績を積み、今後は買い物が困難な地域等への日用品等の配送にドローンや自動走行ロボットによる無人配送を活用していくのが目標だ。
政府でも「自動走行ロボットを活用した配送の実現に向けた官民協議会」が立ち上げられ、物流クライシスへの対応策として、無人ソリューションへの期待が高まっている。楽天では、自動走行ロボットの公道走行が可能になり次第、ネット通販の商品配送やオンデマンドデリバリーへ自動走行ロボットを導入していく考えだ。
JR東日本のMaaSへの取り組み
中川氏は、JR東日本の技術開発部門の取り組みを中心に紹介した。
首都圏は人口減少の影響は遅いとはいえ、働き方改革により、通勤電車などの利用率を維持するのはいずれ困難になると予想されている。またUBERやLIFTなど新しいモビリティサービスが登場し、既存の交通インフラは変革を迫られている。
JR東日本では、1)安心・安全、2)サービス&マーケティング、3)オペレーション&メンテナンス、4)エネルギー・環境の4分野で技術開発のスピードを速めるため、オープンイノベーションに力を入れている。
2017年9月にはオープンイノベーションの取り組みとして「モビリティ変革コンソーシアム」を設置。新しいモビリティサービスや自治体などと連携して、乗客を目的地までを安心・安全に届けるサービスをつくっていくのが目標のひとつである。具体的にはJR東日本のアセットを活用した数々の実証実験や、アイデアソン、ハッカソンの実施、実証実験施設を社外への提供、といった活動を行なっている。現在、モビリティ変革コンソーシアムには約160社が加入し、新たな連携が生まれているという。
コンソーシアムのワーキンググループ「Door to Door 推進WG」では、出発地から目的地までの移動をサポートする仕組みを考えている。首都圏では「Ringo Pass」アプリを利用して、バイクシェアやタクシーなどの交通サービスの検索から、SuicaやQRコードによる決済までを1つのアプリで行なう実証実験を実施した。
そのほかの事例として、小田急電鉄、東急電鉄などとの連携による各地でのMaaSの実証実験、大船渡線BRT(バス高速輸送システム)の自動運転、三井物産との共同によるユーザーの移動ログのマーケティング活用、千葉の海浜幕張駅とZOZOマリンスタジアムにサイネージを設置しスマホアプリで周辺情報や混雑予測を配信する、AI案内ロボットを駅に設置しAIを育てる、といった実証実験が多数紹介された。
一方で、CVC「JR東日本スタートアップ会社」を設立し、JR東日本の鉄道資源を活用したスタートアップ各社との協業を推進している。
将来展望として2027年を目途に、他社の交通サービスと連携し、出発地点から目的地までを安全・安心・ストレスフリーに移動できるモビリティ・リンケージ・プラットフォームの実現を目指すという。
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