なじみの児童館
2歳児くんの保護者をしています盛田諒ですこんにちは。1月17日、小泉環境大臣と滝川クリステルさんの子どもが生まれたそうです。やぎ座ですね。小泉大臣は2週間ぶんの育児期間を取ると表明。まあどうせ政治家のパフォーマンスだろとか法定の育児休業も月80時間までは働けるんだから素直に取得すりゃよかったんじゃないかなど色々言いたくなってしまう話ではありますが、育児の苦労がわかる政治家が増えるのはいいことです。
●男はまだまだ「父親なのに」
大臣に限らず、人手不足の折、女性が現場に駆り出され、男の育児が当たり前になりつつある世の中ですが、男として育児をしていると「ゲタはかせてもらってるなあ」と思うことは多々あります。妻が出張で出かけると、保育士さんから「大変ですね、今日は男子チームですね」と声をかけられたり。子連れで児童館に行くだけで「パパえらいですねえ」とほめられたり。ベビーカーを押しているだけでほほえましい視線を受けることもあれば、親からは「大丈夫なの?」と心配され、子どもが親の手伝いをしているかのごとき特別扱いを受けられます。
これが妻だったら「大変ですねえ」と共感されることはあってもほめられることはなく、むしろ「やって当たり前」ですまされてきたはず。自分が妻だったらこの溫度差に「なんだテメー男ってだけでチヤホヤされやがって」とイラッとくるところがあったんじゃないかと思います。実際「熱を出して一人で子を見るのはしんどかった」という記事を書いたとき、妻から「自分だけしんどいように書かれるのはいやだ」と言われたこともありました。ごもっともです。
男も女も親としてできることは変わらんぞと言ったところで、子育ては母親の仕事であるという認識はまだ変わっとらんというわけです。
先日「ママをやめてもいいですか!?」という育児映画の試写に行ったのですが、登場するお母さんが口をそろえて「母親だからという重圧が大きい」と言っていました。私自身、子の命を守らなければと思うことはあっても「父親だから」という圧を感じたことはなく、むしろ、良くも悪くも「父親なのに」という目が向けられます。以前は男が育児を手伝うという表現に「親が子どもの面倒を見るのが手伝うって何言っとるんじゃ」と噛みついていたこともあったのですが、重圧については確かに手伝うことくらいしかできていないように感じます。
●「〜〜だから」というプレッシャー
そんななか、父親が普通に育児をすることで母親の重圧が少しでも軽くなっていくのかなあと思う一方、男性は男性で「父親なら仕事するのが当然だ」という重圧を感じている人も多いんじゃないかと思います。
映画の中に、アツシくんという気になるお父さんが出てきます。アツシくんは子育てをしているお母さんに対して「頼まれたらやるって言ってるでしょ?」とか「こっちが仕事してるってことも頭のすみに置いておいて」などと不用意なことをぽろっと口にするような人。そのたびにお母さんのみならず観客もカチンとこさせるのですが、様子を見ていると、どうも接し方が不器用なだけで誠実な人のようなんですよね。「生まれる子どものためにも頑張らないと」ということをボソッと言う場面もあり、仕事をすることに責任を感じているようでした。
アツシくんは三人目の子が生まれたあと二週間の育休を取得し、以前より家事育児をするようになります。そこでお母さんが「ママをやめたいと思わなくなりました!」と言って、明るい音楽が流れてくるのですが、「アツシくんは仕事と育児を両立できるほど器用な人なんだろうか……」と若干心配になりました。職場を含めて夫妻があたたかく見守られてほしいです。
きっとまじめな人ほど「私がちゃんとしないと誰かが迷惑する」と考えて「〜〜だから」というプレッシャーを感じやすいんですよね。私はそもそも人間としてちゃんとしてないので「いいじゃんだって私は私なんだも〜ん」くらいの気持ちでいるんですが。生きてるだけでがんばってるもん、できないことがあってもしゃーないじゃん、できるときにやればいいんじゃないと。
小泉大臣が育児するよというニュースには「大臣なんだから職務を優先しろ」「育児するなら議員辞職すべき」との厳しいコメントがついてました。政治家に厳しい目を向ける必要はあるものの、ホテル代を政治資金から出したとかならまだしも、育児くらいでそこまで騒がんでもいいんじゃないですかと思いました。プレッシャーってのはこういう声からも生まれてくるものなんじゃないかと思うので。まあ大臣は子の夜泣きで寝不足になり、ちょっとしたことでクリステルさんに怒られるがいいですよ。幸せな地獄へようこそ。
書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ。2歳児くんの保護者です。Facebookでおたより募集中。
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