メカニカルな加工精度においてはダントツ!
さて、昨今、一大市場に成長した文房具の世界にはハンドクラフトモノも多い。筆記具の世界もそれは同様だ。筆者も今やごく普通のありきたりの筆記具ではモノ足らず、ことあるごとに何度となく素材の良さを打ち出したモノや、加工精度や工芸的な良さを打ち出したモノ、デザインが超ユニークで変態なモノなどを好んで買ってきた。しかし、メカニカルな加工精度では今回のメカシーがもうダントツだ。
ほぼアルミケースの加工精度だけで衝動買いしてしまったメカシーだが、忘年会を終えて自宅に戻ってからじっくりとメカシー本体を触ってみた。当然ながらそのギミックと精度はケースの出来から十分に想像できるものだった。
ボールペンのリフィルを開発することは極めて厄介で大変なビジネスだが、既存のメジャーなリフィルを利用してボールペン本体を作ることは比較的容易なので、チャレンジする個人や企業も多く、なかなか楽しい世界だ。
しかし普通の実用的かつ、シンプルな筆記具であるボールペンのために作られたリフィルを利用して、機構的に際立ったことを実現するのはなかなか難しい。そんな中で、メカシーはなかなか楽しくて周囲に自慢できる「超」の付くボールペンだ。
まず芯の繰り出し方式だが、一般的に多いノック式や、ねじりやスライド繰り出しではなく、「クランクノブ」と呼ばれる直径14〜15mmの円盤を親指の腹で約180度回転させることで、回転運動を直線運動に変えてボールペンのリフィルを繰り出す仕組みだ。
指先の滑り具合は個人差や季節差でさまざまだろうが、筆者はスリップすることもなくクランプノブの回転でスムーズにペン先を出し入れ出来た
クランクノブの名前のいわれもここからだろう。手や指先が滑りやすい人は少し無理があるのかもしれないが、筆者はこれと言った問題もなく芯の出し入れは容易に出来た。
もうひとつのギミックである「クリップ・アッセンブリー」も秀逸だ。一般的に筆記具は多少レガシーだが、クリップ機能を使ってジャケットの胸ポケットや書類、手帳の表紙などに挟んで固定したり一緒に持ち歩くことが多い。
リリースアームのスライドだけで、沈胴していたクリップ・アッセンブリー全体が瞬時に浮上してくる。指先でクリップを押し込んで沈胴させた状態のクリップは、完全にメカシー胴体面と面一(つらいち)になっていて極めて合理的な美しさだ
その目的のためにクリップは、筆記具本体より外側に飛び出し、出っ張った状態である必要がある。ただし、移動とホールドのためには便利なクリップも、筆記具の究極の目的である文字や絵の筆記をするという時点では、その出っ張りが邪魔になることも多い。
メカシーは、携帯時にも筆記時にもクリップの性能を100%出せるように、使わない時は沈胴式のカメラレンズのようにクリップのほとんどの部分が、本体に沈み込むむギミックを実現している。筆記を終えてメカシーをジャケットのポケットに収める時は、サイドにあるリリースアームをクランプノブの方向に横にスライドする。
そうすることで、筆記時にはメカシー本体に沈み込んでいたクリップメカ全体が、メカシー本体から浮き上がってクリップできる状況に変化する。これは筆者が愛用しているLAMYのボールペン「ダイアログ2」や万年筆の「ダイアログ3」のクリップと同様の哲学だ。

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