その場で画像を共有できる驚きのあるデジタルカメラ
しかし、内蔵メモリーに記録された画像を即座に会議の出席者が共有する方法はなかったのだ。当時ミーティングの同席者に、その場でフロッピーディスクを手渡して即座に今撮影したばかりの議事録を共有できることは、画期的なことだった。筆者にとってマビカは、そんな楽しい驚きのあるデジタルカメラだった。
さて今回、2度目の衝動買いをしたマビカは23年を経過しているにも関わらず、なんと取説から付属品までそのすべてが揃っていたベストバイ商品だった。
10倍ズーム付きのマビカは、バッテリー込みで720g。大人の男性なら片手でも持てるが、女性なら両手で持ちたくなる大きさと重さだ。操作系のほとんどは昨今のデジカメと変わらず、ファインダーとなる2.5インチTFT液晶画面の周囲に、使い勝手を考えて的確に配置されている。
そしてマビカの最大の特徴は、当時のビジネスデータの受け渡し標準記録メディアであった3.5インチ、容量1.44MBのフロッピーディスクであったことだ。当時はほぼ100%のパソコンに内蔵されていたフロッピーディスクドライブは、正面からみたマビカの右側面にある。
開閉ボタンをスライドすることでドライブの蓋が開き、一般的なフロッピーディスクの取り出しに使用する小さな突起を指先で押せばフロッピーディスクが飛び出してくる仕組みだ。
そしてマビカのもうひとつの特徴は電源に当時、松下電器産業(現パナソニック)と競争していたかまぼこ型のビデオ用リチウムイオンバッテリー(7.2V 1350mAh)を採用し、マビカで約500枚の写真撮影ができるというスタミナだった。
フロッピーディスクは1967年にIBMによって開発され、商用モデルとして8インチサイズのものが1972年に発売された。IBMでは「ディスケット」と呼ばれ、長く大型コンピューターの操作コンソールの周辺や超レガシーなパンチカードデータ入力の次世代メディアとして使われていた。
ICT世界では当時から次機種は容量が2倍以上、価格は半額以下……というのが通例で、フロッピーディスクも例外ではなかった。8インチの後にマビカ(FD7)でも使われている3.5インチ1.44MBサイズが登場、その2倍の2.88MBサイズで終焉となった。
その後は、デジタルカメラ自体の可搬性能の追求や、画素数の急激な拡大によって、フロッピーディスクではサイズ、要求容量に応えられず、PCMCIAカード、SDカード、microSDカードと、どんどん小さなスタティックメディアに移行するとともに、その容量は急拡大を余儀なくされた。
2000年以降になると、ネットワーク経由以外のビジネスデータのオフラインのやり取りはUSBメモリーが引き継ぐことになる。筆者宅にはUSBメモリーは数えきれないほどあるが、あいにくフロッピーディスクはここ10年ほど見たことがなかった。
しかし家中を探し回った結果、過去何十回という断捨離を逃れて奇跡的に自室に残っていたたった2枚のフロッピーディスクを発見した。そして有頂天になり、23年ぶりに再び手に入れたマビカと遊んでしまった。

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