前衛的なハイエンドPCを発表するも
名前が消えたVoodoo
ただ、HPが期待した程度にはVoodoo事業部のハイエンドPCは売れなかったようで、テコ入れが行なわれる。それまではVoodoo事業部が独自に企画・設計・製造・販売を行なうという、ある意味HPらしいビジネススタイルだったが、Voodoo事業部が企画・設計を担当し、これをPC事業部が製造・販売するという製品が登場した。これが2007年に発表され、2008年のCESで展示されたHP Blackbird 002である。
記事では構造がわかりにくいので別の写真で示すと、ケースそのものは一見ミドルタワーであるが、後端の一ヵ所でスタンドに止められ、少しだけ上を向いているという独自のもの。
画像の出典は、HPのKnowledge Base
内部は当然水冷で、しかも主要コンポーネント(HDD、拡張カード類)はドライバーレスでアクセス可能という優れものだった。ちなみに価格は2500ドルからとされていたが、普通にパワフルな構成にすると1万ドル近い価格になる。
画像の出典は、HP Community
なぜこれがBlackbird “002”か? というと、もともとはHPのエンジニアの発案による極秘プロジェクトとしてスタートしたものの、最初のプロトタイプ(Blackbird 001)は廃案。旧COMPAQのチームに加え、VoodooPCの創業者兼CEOであり、買収後にVoodoo事業部のトップとなったRahul Sood氏がデザインのやり直しに手を貸したことで、002が出来上がったという話である。
HPはこのBlackbird 002を“VoodooDNA”と称していた。要するにVoodooPCのもともとの思想やデザインのフォーマットをVoodooDNAとして表現し、このVoodooDNAを体現した製品としてBlackbird 002を売り出したわけだ。
あいにくと、Blackbird 002もまたそれほどには売れなかった。それどころかVoodooという名前そのものが2008年の途中でなぜか消えてしまった。
現在もOMENとEnvyという製品ブランドは残っているし、そのOMEN(たとえばOMEN Xシリーズ)にはVoodooPCのロゴが現在も示されているが、“Global Voodoo Business Unit”は途中で“Global Gaming & Advanced Computing Unit”という、だいぶ穏当な名称に切り替わった。
Sood氏自身も2010年にはHPを去り、途中マイクロソフトに寄り道などしつつ、2014年からはUnikrnというe-Sportsの会社を興して現在もここに携わっている。
VoodooPCの買収が果たしてコストに見合う程度の効果があったのかは謎ではあるが、そもそもそれほど大規模な会社ではないし、買収金額もそれほど大きかったとは思えないあたり、それほど成功しなかったとしても大した問題ではなかっただろう。
もっと金額の大きなEDSなどはそれなりの成果を上げたし、3COMは個人的には微妙な気はするが、エンタープライズ向けの売上(とくにネットワーク関連機器の売上)増加にはつながった。
明らかに失敗と思うのはPalmの買収だと思うが、これをいまさら論じても仕方がない。そもそもM&Aが100%成功、なんてことはありえないのであって、トータルとすればHurd氏のM&Aに関する打率は悪くなかったと思う。
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