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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第544回

経費削減とM&Aで売上を増加させたHP 業界に多大な影響を与えた現存メーカー

2020年01月07日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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 Hurd氏がどんなヘマをしてHPから放り出されることになったのか? と言う話はまた後で説明するとして、まずHurd氏が在任中にやったことであるが、基本的に言えばリストラを含む経費削減と、M&Aを軸にした売上増加である。

Fiorina氏退任のあと、新たにCEOに選任されたMark Vincent Hurd氏

M&Aを軸にした売上増加

 まずM&A、全部を並べると長大なリストになるので避けるが以下の合計36社を在任中に買収している。

Hurd氏が買収した企業数
2005年 7社
2006年 7社
2007年 8社
2008年 7社
2009年 2社
2010年 5社(Hurd氏退任まで:2010年通算では7社)

 この中には筆者の連載でも取り上げた3comPhoenix TechnologiesPalmなども含まれている。

 Phoenix Technologiesに関しては、会社そのものは買収していない(連載386回 に書いた通りPhonenix Technologiesは現在も非上場の企業として存続しており、BIOSその他の製品を提供中である)が、Marlin Equity Partnersに買収される(2010年11月23日)直前の2010年6月、Phonenixが提供していたHyperSpace/HyperCore/Phoenix Flipといった製品群をまとめて1200万ドルの現金で買収している。

 ちなみに買収金額で言えば、2008年に買収したEDSの139億ドルが群を抜いて高く、次いで3comの27億ドル、3PARの23億5000万ドル、Opswareの16億ドル、Palmの12億ドルといったあたりになる。買収金額が非公開なものもあるので、ひょっとすると漏れがあるかもしれないが、非公開のもののリストを眺める限りは10億ドルをこえるものはなさそうだ。

 もっともHurd氏退任後の2011年8月にも、英Autonomy Corporationを110億ドルで買収したりしているため、Hurd氏だけがM&Aに熱心だったというわけではないのだが。

 2005~2007年にかけては印刷分野やソフトウェアの買収が多かった。たとえば2007年2月にはBristol Technologyを買収している(買収金額は非公開)。日本のユーザーにはあまりなじみがないかもしれないが、もともとは開発ツールメーカーで、UNIXやSystem/360向けのソフトウェア開発ツールを手掛けていた。

 ところが、同社の開発したWind/U(もちろん発音はウィンドウ)のお陰でマイクロソフトとの4年に渡る訴訟合戦に巻き込まれる。Wind/Uは、非Windowsプラットフォーム(UNIXやOpenVMS、OS/390など)上でWindowsアプリケーションを動かすというもので、Linuxで言えばWineにあたるもの、と考えてもらえばいい。

 1998年から2001年まで続いたこの訴訟合戦は、最終的にBristolが損害賠償100万ドル+法定費用370万ドルをマイクロソフトに支払うことで決着がついたのだが、なんであれマイクロソフトと訴訟になるとわりと目立つのがアメリカのPC業界であり、それもあって筆者もBristolの名前が非常に懐かしい。

 訴訟のあと、同社はITインフラ方面に舵を切り、顧客データ分析を行なうDataAlchemyやトランザクション可視化を行なうTransactionVisionといったソフトを開発しており、このTransactionVisionがHPのお眼鏡に適ったらしい。

 一方2008年からは、EDSに代表されるITテクノロジーや、3COMに代表されるネットワーク系企業の買収が目立ち始める。たとえば買収が確定したのはHurd氏退任後の2010年9月であるが、在任中からDellと争ったのが3PARというストレージメーカーである。

 3PARはThin Provisioningという技術を利用したInServというストレージサーバーを開発・販売していたが、まずDellが約11.5億ドルで買収を表明。HPが15億ドルを掲げて対抗。Dellが16億ドルに引き上げ、HPが20億ドルを提示。Dellは23億ドル強を提示するものの、HPが僅かに高い24億ドルを提示して決着がついている。この買収劇を指揮できなかったのはHurd氏にとっては心残りだったかもしれない。

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