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4000人集まった進水式、水素社会に向けた第一歩

水素を運ぶ船「すいそ ふろんてぃあ」が注目される理由

2019年12月27日 18時00分更新

文● 貝塚 編集● ASCII

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注目度の高い事業ということもあり、進水式には、4000名ほどの来場があった

「水素には、その可能性が大いにあると思います。実際、サウジアラビア国有の石油会社サウジアラムコは、原油から水素を取り出して、液化することで、石油などと同じく燃料の一種という扱いで輸出することを目指しています」

NEDOの次世代電池水素部 燃料電池・水素グループの主任研究員 横本 克巳氏

ーーNEDOは褐炭から水素を取り出す事業にもかかわっていますね。この水素は、どのように作られるのですか?

「『ガス化炉』というものを使います。掘り出してきた褐炭を、乾燥・粉砕してガス化炉で蒸し焼きにすることで、水素を取り出します。

 水素の精製段階でCO2が出ると思われるかもしれませんが、ここで出たCO2は、オーストラリアの地中の耐水帯に埋めて、大気中に放出されないようにすることを計画しています」

ーー将来的には、CO2がまったく出ない精製方法が生まれることも考えられますか?

「まったく出ないかというと断言はできませんが、ほかの原料や素材から、水素を精製する研究も日々進んでいます。その中で、よりCO2の排出量が少ないものを選択していく、その方法を研究していく、という考え方だと思います」

ーー普及したら、どのような使われ方をするようになるのでしょう。

「主に、インフラ事業で使われることになると思います。特に、まずは電力や運輸の分野で使われはじめるのではないでしょうか。例えば発電所では、化石燃料の代わりに、液化水素を燃やしてタービンを回し、発電するといった使われ方をすると思います。

 あくまでも燃料なので、一般消費者から見える部分で、わかりやすい何かが起こるということではないんです。ただ、燃料として使ったときに、CO2が排出されないという部分に、大きな価値があります。影から、環境保護を支える存在です」

ーー一般消費者といえば、ガソリンスタンドで買えるようになる可能性はありますか?

「それも考えられますね。日本やアメリカ、ヨーロッパでも、ガソリンや軽油と並んで水素が補給できるスタンドが設けられ、一部のスタンドではお客さんが燃料電池自動車に補給している例もあります」

小型船といっても、人と比較するとかなり大きな船であることがわかる

ーーすいそ ふろんてぃあについても聞かせてください。この液化水素運搬船は、どのような意義を持つのでしょう。

「水素の有用性は、これまでもずっと言われていたんです。ただ、具体的に社会がそれに向けて動くということがなかった。『水素は将来のエネルギー』と言っていたのが、普及に向けて、はっきりと一歩を踏み出したのが、今回のすいそ ふろんてぃあだと思っています」

ーー国際的に見ても、先進的な動きと言えそうですか?

「はい。世界的にも大きな動きだと思いますし、国家としても重要な事業だと思っています。すいそ ふろんてぃあは小型の船ですが、将来、もっと大きな液化水素運搬船を作る時代に向けて実証実験を重ね、データを蓄積していけるはずです。国際海事機関(IMO)の規格の策定にも役立てられます。大型船については、2030年頃の商用化を目指しています」

ーー名前もユニークですよね。

「船の名称は、私たちも進水式で知ったんです。「frontier(最前線の)」と付いていますので、まさに水素社会に向けた第一歩としての性質を表していると思います」

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