NEDOが推進するプロジェクトにおいて、東大などの研究グループは印刷プロセスだけで機能するRFIDを製造する技術を世界で初めて開発した。
これはNEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の戦略的省エネルギー技術革新プログラムとして進められていた研究で、東京大学、大阪府立産業技術総合研究所、トッパン・フォームズ、JNC、デンソー、富士フイルム、日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース、TANAKAホールディングスで構成されるグループによるもの。
研究では、有機半導体をフィルムに塗布して製造する有機TFT整流素子だけでRFID論理回路を製作した。これには従来の塗布型有機半導体よりも高いキャリア移動度を持つ新開発の塗布型有機半導体「アルキルDNBDT」を用い、さらにフィルムに塗布すると同時に結晶化して膜を形成する「塗布結晶化法」、塗布工程の際に有機半導体にダメージを与えないリソグラフィー手法を開発した。
さらにアンテナ回路を接続したフィルム回路は、乗車カードや電子マネーに用いられる非接触通信用の商用周波数である13.56MHzで応答するRFID電子タグとして機能することを確かめた。印刷可能な有機整流回路によって初めてRFID通信の基本特性が得られたため、低コストRFIDタグの開発に直結する成果で、さら論理回路部を搭載したRFIDの試作を進めて実用化に向けて研究開発を加速、RFIDタグだけに限らず高速動作の有機電子デバイス、各種センサやメモリの開発を目指すという。
すでに印刷プロセスで製造する有機半導体としては有機TFT液晶ディスプレイの駆動にも成功(今回と共通する研究グループによる)しており、演算素子から無線通信、表示までこなすデバイスを印刷手法だけで低コストで製造できる目処が立ったと言えるだろう。