エデュケーション@プログラミング+ 第24回
ナビタイムジャパンの学生向けコンテスト
地図情報・ルート探索が生かせることはこんなにある! NAVITIME APIチャレンジ2019レポート
2019年12月21日 09時00分更新
はじめて学生たちにAPIを提供したコンテスト
12月10日、株式会社ナビタイムジャパンの「NAVITIME API」を活用した学生向け研究・開発コンテスト「NAVITIME APIチャレンジ2019」の最終審査会と表彰式が行われた。自動運転やEV、ライドシェアやキックボードシェア、MaaSなど、モビリティ分野が大きな変革を迎えつつあるのがいまだ。そうした背景のもと、今回はじめて、高校・専門学校生・大学生・大学院生を対象に、同社のAPIを活用することで業界の活性化と人材育成をめざすというものだ。
NAVITIME APIは、ルート探索や地図表示などの機能を、Webサイト、スマートフォン向けアプリなどに簡単に組み込むことができる。コンテストでは、あらかじめ次の3つの出題テーマが示されていた。「電車やバスなど様々な移動手段によるルート検索を活用し、MaaSの研究・開発を行う」、「各種交通手段や観光スポットを元に、地域のインバウンド観光について研究する」、「各種交通手段や観光スポットを元に、地域のインバウンド観光について研究する」である。
当日の最終審査には、今年5月のエントリー開始から11月初旬の一次審査を通過した9チームが参加、プレゼンテーションを行った。ふだん、我々がお世話になっているのはルート探索や地図上の情報を知るところまでがほとんどだろう。ところが、応募作品の内容をみると、提示されたテーマに応えるだけでなく、今後の社会変化に関係するさまざまな利用方法があることが示されたといえる。以下、最終審査に残った作品を紹介する。
静岡大学 Team Posada
旅館およびホテルの周辺探索支援のための観光マップ表示システム~旅館の女将さんのためのシステム~
観光客の移動手段(車、バス、自転車、徒歩など)、求めているジャンル(食、買い物、レジャーなど)によって、モデルルートなどのアドバイスを支援するためのシステムを開発。静岡県浜松市北区三ケ日町の観光協会と連携、チームが所属する研究室で作成した観光資源データとNAVITIME APIを組み合わせた。「有名観光地ではないので〇メートル先に観光スポットがあるなどの表示がない」といった課題にも答えるものになっている。
灘高等学校 酒井智礼
Sharney
最終審査会に残った唯一の高校生。日本国内の旅行目的地として「北海道」、「沖縄」、「京都府」、「東京都」のトップ4は、この10年間変わっていない。SNSによって「どこに行ったか?」は共有されるようになったが、旅のプロセス(計画)まではあまり共有されていない。そこで、ルートの投稿・共有によって「なにがしたいか?」、「なんとなく旅行しない」に答えるとともに、より広範な旅行の魅力を伝えることをめざす。旅行に関して「知識のギャップを埋める」システムの提案。
東京農工大学 坂根太郎
公共交通機関と自転車を併用したルートの作成
自宅を始点とした移動について、適切な駅までは自転車で移動、そこから先は公共交通機関を使うことで最適な移動ルートを求めるアルゴリズム。既存のルート探索の一部を自転車での移動に置き換えることで実現した。東京都内でも都心と郊外では駅の密度は大きく異なる。新宿区には28の駅があり、小金井市には3つの駅しかないそうだ。そうした中で適当な出発地と目的地のペアを385通り設定して評価。駐輪場の費用を100円とし、駅から駐輪場への移動を時間を5分と想定してシミュレーションした結果、7割以上で自転車を用いることで移動時間の最短化が可能だった。
芝浦工業大学/Team SUZUKI
「口コミ情報とソーシャルロジスティクスに着目した複合領域最適化」
ロジスティクスからソーシャルロジシスティクス(社会全体の最適化)を求める交通サービスの見直しが検討されている。そうした動きの1つがMaaSだが、現状では、実際に移動する人たちのメリットが配慮されにくい設計になっている。そこで、顧客ニーズを口コミから収集、関係する企業側の視点も入れて2つの方向から最適化する。具体的には、栃木県の那須地域を対象に、観光地の顧客ニーズ、観光地の定量データから、最適ルートを求めた。
芝浦工業大学/関倖太郎
「乗り捨て型MaaSにおける車両再配置のコスト削減」
カーシェアリングには2種類の方式があり、海外は「フリーフローティングベース」(路上や公共駐車場を使う)、国内は「ステーションベース」(専用のステーションを利用)がある。ステーションベースの場合、そのステーションが満車だと車を置けないという問題が生ずる。それを最適化する再配置をするためのアルゴリズムを提案とシュミレーション。
慶応義塾大学/Tanaka_lab
「NAVITIME_meet」
複数の人が集まる場合に、「移動時間」や集合する「目的」などを総合評価して最適な待ち合わせ場所を求めるシステム。目的に応じて全員が集りやすい場所を求めるものだが、「飲み」が目的なら新橋、「時間」では御徒町などの結果がでる。会社説明会の会場の決定や家探しにも応用できる最適化問題だそうだ。アプリケーション的には友だち登録機能なども考えられ現行のナビタイムとの相性もよい。
東洋大学/寺田一世
トランスパス
東京2020のオリンピック、パラリンピックを想定したナビゲーションシステム。会期中には、国土交通省によると東京の交通を知らない人が1日あたり92万人がやってくるとされるが、彼らに対して現在地から大会会場までの最適ルートを1つだけ示す(ロンドンオリンピックでは競技に関してオープンデータがあったが今回はスクレイピングで対応した)。オリンピックが終わっても、それによって高い満足を得てもらい、東京の観光客が増えることをめざす。また、他のイベントにも転用可能でもある。
横浜国立大学/優勝してタワマン買う
“NAVITIE×Uber Eats” Is All you need
Uber Eatsが配達員の報酬を削減というニュースが流れたばかりだが、Uber Eatsの配達員が効率的に配達して稼げるようにするためのシステムを提案。1件ずつ配達するのではなく、複数のオーダーに対して最適な巡回経路、最適シフト検索を行い、お店・配達・お店・配達とこなすようにする。また公共交通機関の利用も想定。Uber Eats以外にも買い物代行サービスは増えており配達員不足にも貢献できるという。
慶応義塾大学/TRIp
NAVITIMEトラベルPlus days
「ナビダイムトラベル」の旅行プランニング機能の発展形として、複数日程の旅行に対応した。帝国ホテルを中心に、東京ディズニーランドや横浜中華街、鎌倉の大仏などいくつかのスポットを想定したルートをシミュレーション。スポット間の移動時間などを考慮してルート計算を行い、1日目はホテルの南側、2日目は北側などの結果を求める。配送計画問題や複数人の巡回セールスマン問題をもとにしているが、複数人を2日間とみなした着眼点も評価された。
※個人名の場合も敬称略させていただきました。「すぐにあってもよい」といえる応募作品が多数
とくにナビタイムAPIの中心機能といえるルート探索に関連する最適化のアルゴリズムを提供する作品、同APIを使ったサービスが目立ったが、今回、「特別賞」、「優秀賞」、「最優秀賞」には、次の3作品が輝いた。
最優秀賞(賞金100万円)
チーム:慶応義塾大学/Tanaka lab
作品名:NAVITIME_meet
優秀賞(賞金30万円)
チーム:横浜国立大学/優勝してタワマン買う
作品名:NAVITIME ×Uber Eats
特別賞(賞金10万円)
チーム:慶応義塾大学/TRIp
作品名:NAVITIMEトラベルplus days
審査員による講評では、株式会社ゼンリン 執行役員 総合企画室長の松山稔氏からは、「どのチームも社会の課題や困りごとにちゃんと着目して、誰のニーズに応えるか、テクノロジーを工夫してくれた。もっとサービスに磨きをかけていってほしい。惜しくも、賞に選ばれなかったところもサービスに生かせるかもしれない」。株式会社JTBパブリッシング 法人情報事業部 担当マネージャーの佐々木 健介氏からは「NAVITIMEトラベルplus daysは、すぐにでも導入したいと感じた。芝浦工業大学の関さんのMaaSの話も興味深く聞いた。NAVITIME meetに関していうと定期券の範囲などの要素も入れてもらうとさらに実用性があがる」。
NTTタウンページ株式会社 データベース開発部 事業推進部門部門長の江田勝憲氏からは、「NTTグループはいろいろな会社があって、それぞれ課題をもって動いている。バイクシェアだったり、観光系のデータベースであったり、それに関連することを学生のみなさんに課題をとらえてAPIで解決することを考えていただいた」。
審査員長の株式会社ナビタイムジャパン 取締役副社長 兼 最高技術責任者の菊池新氏は、「各チームとも完成度が高く、作り込んできてくれた。個人的には、数式がたくさん出てきてアルゴリズムがたくさん出てきてワクワクしていた。今回提供したAPIのシステムではやりきれなかったところもあると思うので、ぜひ入社して取り組んでほしい」と語った。
全体を通しては、各審査員とも自社のサービスと関係する課題をとらえてくれたこと、実用化できると思われる内容のものが多かった点を評価。なお、ナビタイムAPIは、今回のコンテストでは学生のために限定的に公開されたが、今後はアカデッミクパックを提供するなど、法人だけでなく個人にも使ってもらうための料金プランや提供方法を検討中だという。また、同APIは、今年9月に「API 2.0」にバージョンアップ。現状、英語、韓国語、中国語(繁体字、簡体字)、タイ語に対応、今後もニーズの高い言語に対応していく予定とのこと。
今回の発表内容を見ても、まだまだ地図やルート探索を生かした利便性や新しい社会システムのための利用があることが感じられる。今後、ナビタイムAPIのきめ細かな情報を生かしたサービスのお世話になることが増えると楽しそうだ。
NAVITIME APIチャレンジ2019 開催概要
■主催 株式会社ナビタイムジャパン
■協賛 NTTタウンページ株式会社、株式会社JTBパブリッシング、株式会社ゼンリン
■『NAVITIME APIチャレンジ』
応募資格:2019年4月現在、高校、大学、大学院、専門学校に在籍している学生の方
審査プロセス:2019年5月8日~6月30日 応募受付期間、10月頃 一次審査(書類選考)の発表
2019年12月10日(火)最終審査会、各賞発表、表彰式
https://api-sdk.navitime.co.jp/challenge2019/
■『NAVITIME API』
https://api-sdk.navitime.co.jp/
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