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まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第65回

1週間で15カット上げる人材を育てるために必要なこと

ついにアニメスタジオでも働き方改革が始まった!~P.A.WORKS堀川社長に聞く〈前編〉

2019年12月26日 12時00分更新

文● まつもとあつし 編集●村山剛史/ASCII

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地方アニメスタジオの雄、P.A.WORKSを率いる
堀川憲司氏に聞いた「アニメ制作現場の働き方改革」

 労働集約型産業の常で、アニメ制作の現場は東京の一定地域に集中しがちだが、昨今は日本各地にアニメスタジオが勃興し、地方から世界へエンタメを届けるべく奮闘中だ。今回はそんな地方アニメスタジオの雄、P.A.WORKS代表の堀川憲司氏に、東京以外に拠点を持つことのメリットのほか、今年から試行を始めた独自の働き方改革の内容など、豊富なテーマで語っていただいた。「社員の10年後の成長」を見据えて奮闘する堀川氏の試みとは……?

プロフィール〉堀川憲司氏

 1965年生まれ、愛知県出身。富山大学理学部在学中にアニメ業界を志し大学を中退。専門学校を経て竜の子プロダクション、Production I.Gに在籍したのち、1997年真下耕一とともにビィートレインを設立。2000年に富山県東礪波郡城端町(現・南砺市)に越中動画本舗株式会社を設立。2002年に「株式会社ピーエーワークス」に社名を変更。代表作に「true tears」「花咲くいろは」「SHIROBAKO」など。

作品づくりから組織づくりへ

―― 今、東京の拠点はどのように機能しているのですか? チラッと伺った話では、以前はほとんど東京に出張していらっしゃったのが逆転して、今は畑仕事もされているそうじゃないですか。

堀川 してますね(笑)

―― 富山に居る比率が高くなっている?

堀川 ええ、『さよならの朝に約束の花をかざろう』を最後に、今後はこちらで。これまでは情熱を持って、「僕(堀川氏)はこういうものを作りたいんだ」と制作現場に近いところで作品をプロデュースしていたんですけれど、社内のプロデューサーの年齢がファン層と同じぐらいになってきたこともあり、各プロデューサーたちが見たいものを作ったほうがファンと同じ目線になると思ったので、彼らに対して、「もっと作りたいものをどんどん出して。チャンスはいくらでもあるんだよ」と。

 外でのプロデューサー経験がないとわからないかもしれないけれど、割とうちはオリジナルの企画を通してきたので、彼らに「作りたい企画があるんだったら強くアピールして通せばいい。だから情熱を込めてどんどん企画を生み出していこう」という話をしています。

 あとは経営的に、僕が楽しんで作っている場合じゃなくて、組織を強くする経営者の役割を担わないとダメだと思ったので、本当はずっと現場で作品を作っていたいのですが、組織を作るほうに完全にシフトしようと思って富山に戻ってきましたね。

―― 富山のスタジオを拠点にして組織を作る、と。

堀川 そうですね。

―― これまでは堀川社長がプロデューサーという立場で、東京で製作委員会とも話をされてきたわけですが、では現在の東京拠点には相馬さんが?

堀川 相馬も富山本社が拠点です。東京のスタジオには辻(※一点しんにょう。以後同じ)、山本、橋本という3人のプロデューサーがいます。辻は取締役であり制作部の部長でもあります。彼らを中心に東京のスタジオを回していて、富山本社の制作管理は相馬が中心になって回している感じですね。

―― 堀川社長は経営者としての組織づくりのほかに、相馬さんとペアで動きながらプロデューサー道みたいなものを次の世代へ伝える役割も担っていらっしゃるのかな、と感じました。

いずれは富山のスタッフから監督を輩出したい

―― どうしてもこの点にこだわってしまうのですが、昨今テレビから配信の時代に移りつつあるようにみえますが、やはり東京にも拠点は引き続き必要であると思いますか?

堀川 富山本社で制作できる内製率を高めることを目標にしていますが、必要な人数にまでスタッフが育つにはまだ時間がかかりますね。あと、音響等ポスプロのスタジオが東京にある限りは、やはり東京にもひとつ拠点は必要です。制作管理の中核になる作画・演出・3DCGのスタッフは富山本社で増やしていくつもりではいます。

―― 制作中は監督も富山の拠点に詰めて作業されるんですか?

堀川 今のところ本社に在籍している監督は『有頂天家族』の吉原正行監督くらいですね。吉原監督はここでクリエイション部の部長もやっているので。そのほかの作品の監督はフリーランスの方ですべて東京のスタジオです。吉原は本社でプロパーの演出も育てていて、今は4人になったのかな。演出を希望するスタッフには適正があればチャンスを与えて、いずれ彼らのなかから監督が出てくれば……と。ここは長い目で見ています。

―― 現状、監督は東京からリモートで指示を出しているのですね。

堀川 基本的に、プリプロとポスプロ(編集・音響)は東京、作画と3DCGと演出は富山本社です。監督は東京にいるスタッフとは直接打ち合わせをします。一方、富山本社にいるスタッフとはテレビ会議システムを使って打ち合わせするかたちです。

―― そして終盤、音響の段階で東京へ。

堀川 はい、演出はポスプロになると上京します。なお、富山本社のスタッフが担える作画は、まだ全体の半分くらいだと思いますね。

―― 1クールの作品だったら6話分くらいですか?

堀川 たとえば12話あったら、グロスとして制作会社に発注するのが2本くらい。富山本社が作画を担当するのが6~8本で、2~4本は東京でフリーランスの作画を集めて作る。今はそんな割合だと思います。

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