まつもとゆきひろさん 記者撮影
注目が集まる子どものプログラミング教育。専門家はどうあるべきだと考えているのでしょう。プログラミング言語「Ruby(ルビー)」作者のまつもとゆきひろさんは、プログラミングはあくまで楽しむものであり、強制されるようなことがあれば本末転倒ではないかと話します。
●マシになったプログラミング教育
── まつもとさんは6年前、小中学校でのプログラミング教育について問題点を指摘されていましたね。
成績がつくプログラミング教育にはいまだに否定的です。まずプログラミングの楽しさを知らない人が教えるのは難しいし、すべての学校にプログラミングの楽しさを知っている人を用意するのは難しいんじゃないかと。もうひとつ、プログラミングは特に若いうちは差が出やすくて、小学生でもアプリを作って表彰される人もいれば、「コンピューターって何? つまんないんだけど」という人もいる。それで1から5までの成績をつけますかと。そういう意味で否定的でしたね。
── 来年度から小学校でプログラミング教育が必修化します。6年前と比べて内容はよくなったと感じますか。
来年度からの新指導要領では、プログラミングそのものではなく「プログラミングに絡めた表現(プログラミング的思考)をしましょう」ということになりましたよね。授業の中にアルゴリズムを表現するとか、データを集計するようなことを入れていくと。そこに「プログラミング体験のカリキュラムを入れてもいいよ」ということになったので、最悪なことにはなってないんじゃないかなと思います。
── マシになったわけですか。
入り口としてはいいんじゃないかと。先生はどこかのメーカーが作ったパック教材を使ってワケもわからず教えると思うので、最大限の教育効果があるかといわれたらだいぶ疑問ではありますが、少なくとも体験はできる。そこが入り口になってプログラミングを始める子はいると思うんですね。ほっておいても家にコンピューターがあってプログラミングをやる子はいると思うんですが、そうではないけど適性があるという子はいると思うんです。プログラミング体験は成績もつかないので、「プログラミング大嫌い」というアレルギー反応をおこす子どもを作らない形でおさまりそうな気がしていて。現在の日本の教育状態において、最初の一歩としては十分なんじゃないかな、という気がしています。