骨伝導の仕組みには、まだまだ研究の余地がある
話は少し変わって、骨伝導の特徴について。PEACEの「音楽用モデル」は聴力に問題がない人をターゲットにした製品だが、BoCoはマイクで周囲の音を集音し、骨伝導で伝える「聴覚補助モデル」も提供している。BoCo株式会社の磯部純一氏は以下のように語る。
磯部 「いまは音質の調整を感覚でやっていますが、人が音を感じる仕組みについては専門家の力を借りながら研究を続けています。これは“音質の向上”と言うよりは、“どのような障害で音が聞こえないか”を知る上で重要です。
例えば、老人性難聴(全体的に耳が衰えている人)は、もともと健常者なので、大丈夫な場合が多いのですが、特定の場所に障害がある人の場合、骨伝導にしても、有意性のある結果が出ない場合があります。また、生まれながら聴力に障害があった人は、神経が長い間使われていなかったのに、骨伝導にすることで聞こえるようになるのはなぜかという議論もあります。
骨伝導は、通常とは違うルートで音を聞きます。個人差がありますが、難聴の人で、最初の1週間は聞こえなかったけど、突然聞こえるようになったという人もいます。また、健常者でも、骨伝導イヤホンを使い続けているうちに、ボリュームを下げても聞こえるようになることがあります」
今後はヘッドセット型と完全ワイヤレス型に特化
骨伝導イヤホンの市場はまだまだ、立ち上がったばかりの面もあり、様々な進化の可能性がある。BoCoとしては、目標だった完全ワイヤレスの製品が実現したことで、従来からあるヘッドセットタイプと完全ワイヤレスの形態に絞り込み、より進化させていくことに舵を切りたいとする。
磯部 「同じ骨伝導でも、完全ワイヤレスの製品を作るノウハウと、ヘッドセットタイプの製品ではだいぶ違います。われわれは骨伝導に特化したメーカーなので、そのノウハウを積み上げて製品に反映しています。特にリスニングポイントと、それに合ったチューニングのノウハウが必要です。
骨伝導デバイスは製品にするためにパッケージングするのですが、それではデバイス本来が持っている性能が少し落ちてしまう面があります。デバイスそのものを直接自分の耳の好きな位置に当てて聞いた本来の性能が、パッケージングしても出せるようにしたい目標はあります。パッケージングの技術に関しては、より得意とするメーカーがあるかもしれませんが、競合するというよりは、まずは骨伝導デバイスそのものを普及させていくために、市場を広げていきたいですね。
デバイス開発という意味でわれわれは多くの特許を持っています。インバウンド向けの通訳機能や、両手をふさがずにナビゲーションができる登山での利用なども視野に入れながら、様々な協業先を探していきたいです」
PEACEのGREEN FUNDINGでの募集は11月21日まで。12月中旬から順次発送を開始する計画。興味のある人は、リーズナブルにその機能を試せるこの機会を見逃さない方がいいだろう。