バックアップから“サイバープロテクション”へ、包括的なデジタル資産の保護を目指す
アクロニスCEO来日、新領域への拡大と次世代製品をアピール
2019年10月30日 07時00分更新
「競合他社が提供する従来型のデータ保護ソリューション、バックアップソリューションは、もはや“意味がない”と考えている。サイバー攻撃に対する保護能力を備えておらずセキュアではないため、(保護対象の)プライマリデータと同時にバックアップデータも簡単に失いかねないからだ」
アクロニス・ジャパンは2019年10月29日、来日したアクロニス創設者兼CEOのセルゲイ・ベロウゾフ氏が出席する記者説明会を開催した。今月米国のイベントで発表した“進化版データ保護ソリューション”の特徴やユーザーメリット、他社ソリューションとのアプローチの違いなどを説明した。
これからは「空気や水、食料と同じように“サイバープロテクション”が必須に」
アクロニスは、データセンターやPCのバックアップソリューションベンダーとして長年の実績を持つ。しかし現在の同社では、データ保護やバックアップにとどまらない「サイバープロテクションのグローバルリーダー」を標榜している。身の回りにコネクテッドデバイスがあふれ、世界のデジタル化が進む中で、同社では「サイバープロテクション(デジタル資産の保護)」が水や空気、食料と同様に人間の生存に欠かせない基本要件になると考え、保護対象の領域を拡大していく方針だ。
ベロウゾフ氏は、アクロニスの目指すサイバープロテクションの基本原則として「SAPAS」というキーワードを挙げた。「S:安全性」「A:アクセシビリティ」「P:プライバシー」「A:真正性」「S:セキュリティ」という5つの頭文字をとったものだ。このうちの真正性は、ブロックチェーン技術を適応し、バックアップデータも含めてデータが改竄されていないことを保証するものである。
この基本原則に基づいて「あらゆるデータ、アプリケーション、システムに対応するサイバープロテクション」をシンプルかつ効率的、信頼性の高いかたちで提供するのが、現在のアクロニスが考えるミッションだとベロウゾフ氏は説明し、その実現に必要なのが「統合」だと語る。複数の製品/機能を使う場合も単一エージェントで機能し、同一の管理インタフェースやポリシーが適用でき、さらには複数の機能モジュール間でデータを共有して互いにメリットを享受できるような仕組みだ。
これを実装したものが、前述した“進化版データ保護ソリューション”である。統合型のインフラ/プラットフォーム上で、バックアップやディザスタリカバリ(DR)といった従来からの機能に加えて、マルウェア保護、データ真正性の認定/検証、エンドポイントの脆弱性診断と修正プログラム一括配信、リモート監視といった、新しい機能群も展開していく戦略だ。
それぞれ、統合インフラは「Acronis Cyber Infrastructure」、統合プラットフォームは「Acronis Cyber Platform」、そして上述した7つの機能を提供するパッケージは「Acronis Cyber Protection」と命名されている。スケールアウト効率の高いSoftware-Defined型のインフラ、パートナーが独自機能を開発できるSDKやAPI、サンプルコードを備えたプラットフォームに、実績のあるデータ保護技術だけでなくAI/機械学習やブロックチェーンといった最新技術も統合し、サイバーセキュリティ領域のサービスも提供可能にしている。単一のエージェント、単一の製品パッケージで提供される点も特徴だ。
説明会では、プロアクティブ(事前)/アクティブ(リアルタイム)/リアクティブ(事後)という3つの実行段階に分けて、Cyber Protectionの主要機能がデモで紹介された。
たとえばプロアクティブな保護機能としては、エンドポイント1台ごとにOSやソフトウェアのセキュリティ更新プログラム(パッチ)の適用状況を調査する脆弱性診断機能や、未適用パッチを配信する機能などを備える。つまりエンドポイントにインストールされた単一エージェントを通じて、OSやソフトウェアの情報収集も行っているわけだ。
まとめとしてベロウゾフ氏は、冒頭に紹介したコメントのように「次世代の」データ保護ソリューションが必要になっていると述べたうえで、それを実現しているのはアクロニスだけだと主張した。さまざまな業界においてデータ保護に関する業界規制やガイドラインも定められる中で、今後は「“セキュアなかたちで”データを保護することが重要になる」と述べている。
国内クラウドパートナーを2年間で10倍に拡大する目標を掲げる
アクロニス・ジャパン 社長の嘉規氏は、これからのアクロニスが目指す方向性のポイントとして「『あらゆる』データ、アプリケーション、システムを保護する」点だと述べた。PCやデータセンター、クラウドといったこれまでの保護対象だけでなく、たとえばスマートファクトリー(工場)やコネクテッドカー(自動車)といったものにもエージェントを配信することで、包括的な“サイバープロテクション”の対象にしていくというビジョンだ。
日本国内ではクラウドパートナーへの取り組みを強化していく方針だ。7月に開催した事業戦略説明会では、現時点の国内パートナー50社を2年後の2021年には「500社」へと10倍に拡大する目標を掲げた。
パートナーはアクロニスがホスティングするクラウドサービスの再販だけでなく、パートナーデータセンターでのサービスホスティングも可能であり、パートナー自身で開発したサービスや機能を組み合わせることもできる。さらにはパートナー名義でのサービス展開(OEM提供)も可能であり、こうした柔軟さを武器として、パートナー展開を強化していく。
また今月には、これまでIIJやニフクラといった国内の再販パートナーと展開してきたプログラムをまとめ直し、新規パートナーでも容易にサービス再販がスタートできるようにガイドを作成、公開している。
嘉規氏は、現時点では名前を明かせないものの、国内の「ほぼすべての」大手SIerにもパートナー契約の提案を行い、新たなサービスコンポーネントのひとつとして興味を持ってもらっていると述べた。
「今年の第3四半期(7~9月期)は過去最高の売上を達成できた。12月で今年度が終わるが、2019年度は過去最高の売上を達成できると思う。今後さらに、SIerとの具体的な協業なども発表できると考えているので、引き続き注目していただきたい」(嘉規氏)