2年前こんな大きい靴を履けるときが来るのかと思っていた14cmの靴が小さくなってしまった
2歳児くんの保護者をしてます盛田諒です、ヴァラー・モルグリス。夫婦二人でダークファンタジー「ゲーム・オブ・スローンズ」にハマりました。飛びちる血しぶき、裏切り、だましあい。とても子どもに見せられたもんじゃありませんが、何かと厳しい日々がわたしたちを氷と炎の戦場へと向かわせるのです。ああ学匠、わが子がジョフリーのようになったらどうしたらいいでしょう。
厳しいって話ですが、実際子育てしながら働くことをなめておりました。家族がいると仕事に責任感が出るとかいう昭和なイメージありますがそんなぼんやりした話じゃないですこれ。普通に過労で厳しいです。0〜3歳児がいちばんヤバいという話はよく聞きますが想像を軽く超えてきましたね。共働き親すなわちワーキング・ペアレンツ、ワーペア正直きっついですわこれ。
ほんと疲れ方が異常です。子が生まれたころ時間がめちゃ早いことに恐怖をおぼえたのですが、今度は体力がめちゃめちゃ減りますね。時間もエネルギーも等しく子に吸い込まれていきます。じつは子に見えてるのはブラックホールで、わたしは事象の地平面に近づいてるんじゃないでしょうか。
●家にいても休まらない
テレビでよく仕事に疲れた父親が「おかえり〜!」って子どもの笑顔見て笑顔になるシーンあるじゃないですか。たしかに笑顔にはなるんですけど疲れてることは変わらないんですよあのお父さん。家にいても気が休まるどころか戦場でして、休めるときなんて一瞬あればいいもんです。
朝は基本6時起き。乾燥機にかけておいた洗濯物をたたみ、身支度をして、妻の出勤とともにおふとんでゴロゴロしている子を起こし、朝食をとり、着替えをさせて、保育園行かないとごねる子を保育園に預け、食器を洗い、ふとんをあげて、仕事へ行きます。
帰るのはだいたい20時くらいです。急いでごはんを食べた後は夫婦で協力して子どものお風呂、着替え、歯磨き、寝かしつけをやっていきます。子は「これ取ってほしかった!」「自分でやりたいの!」「絵本読みたいの!」と秒単位でやりたいことを思いつき、家にあるものすべてを使って斬新すぎるいたずらを試みてきますので、こちらも夫婦の連携でなんとかことに当たります。
夫婦どちらかが子を見ている隙に部屋を片づけ、食器を洗い、洗濯物を干し、身支度をして、おふとんに入る。「おとうさん電車なの」と言いながらわたしのおなかの上でボンボン跳びはねる子がなんとか寝たあと、こちらが沈むように寝るのが23時ごろ。子は睡眠時間短めのショートスリーパーなので親の自由時間はほぼありません。夢の中で自由を満喫します。
土日は土日で全身全霊フルパワーの子につきあうことになるわけでヘトヘトです。自由時間といえばせいぜい子がお昼寝をしている2時間くらい。「2時間だけのバカンス」とはこのことか、宇多田ヒカルさん分かっとるわと謎のシンパシーを感じます。こうして心と体がすり減ると通勤時間にスマホを開いて血と炎の制裁を求める夫婦ができあがるわけですね。ドラカーリス!
●ワークとライフの逆転現象
ワーク・ライフ・バランスでいうところのライフが戦場になってくるとむしろ働いているときのほうが気が休まるという逆転現象が起きてきます。そういや仕事が終わっても家に帰らずフラフラする「フラリーマン」というやつがニュースでとりあげられたこともありましたね。マンたちの多くは妻の苦労を顧みない失格夫かもしれませんが、まじで限界まで過労している可能性もありそうです。
その意味、ワーク・ライフ・バランスのために仕事を休みやすくするとか時短勤務できるようにするってのはたしかに子育て支援ではあるんですけど、それで働くモチベーションが上がるかというと疑問があります。結局休みの穴埋めしてるの自分ですし。子育てをしながら「働く」ことをサポートすることを考えたらライフ方面の支援策があってもよさそうなものです。
そのときいちばん有効な支援は親の代わりに子どもを見てくれることだと思うんですが、理由を問わず子どもを一時預かってくれるファミリーサポートとか、子どもが熱を出したときに預かってくれる病児保育みたいな支援ができるのは会社じゃなくて住んでいる地域になるんですよね。会社が働き方改革をしていても地域の支援がなければ手詰まりで働けない改革です。余談ですが家に仕事を持ち帰ってリモート残業するなんて無理ぴょんです。少なくともわが家では。
実際厳しいライフのおかげでライフ(体力)が削られてワークの生産性が落ちていたら何のためのワーク・ライフ・バランスやねんという話じゃないですか。子育てならまだしも家族の介護がライフになったときにはほんとにしんどくなると思います。「仕事休んで介護していいよって言われても、まあそうなんだけど……」と重いモヤモヤを抱えている人もいるんじゃないでしょうか。
子がいるのはほんとに楽しくうれしくて、仕事でメンタルしんどいときに救われるということもたくさんあるんですけどね。それでも共働き子育てラクではないです。性別関係ないです。個人差もあるとは思いますが、働きながら子育てをしているみなさん、ワークとライフに仕えてこられたみなさんに心からヴァラー・ドへリスと言いたいです。盛田 諒でした。
(9月27日の連載は休みました)
書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ。2歳児くんの保護者です。Facebookでおたより募集中。
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