1日目基調講演は「シンギュラリティ」と「DX」、アレン・マイナー氏とITR内山悟志氏が登壇
DB技術者カンファレンス「db tech showcase Tokyo 2019」開幕
2019年09月26日 07時00分更新
データベース技術者のためのテクノロジーカンファレンス「db tech showcase Tokyo 2019」が2019年9月25日、東京・秋葉原で開幕した。27日までの3日間開催されており、参加は無料(Webサイトからの事前登録制)。
25日の基調講演には主催者であるインサイトテクノロジー CEOのアレン・マイナー氏と、アイ・ティ・アール エグゼクティブ・アナリストの内山悟志氏が登壇し、現在のデータ活用の延長線上にある「シンギュラリティ」「デジタルトランスフォーメーション」について語った。本稿ではその概要をまとめる。
アレン・マイナー氏「シンギュラリティは“協力協調型”の日本から生まれてほしい」
db tech showcase Tokyo(以下dbts)は2011年にスタートしたテクノロジーカンファレンス。今年は「Beyond data towards insight/データを超えて、Insightへ」というテーマを掲げ、これまでのデータベース技術セッションに加え、AI/機械学習、クラウド、IoTなど、データからインサイト(洞察)を導き出すためのテクノロジーを包括的に扱う内容となった。
マイナー氏によると、今年のdbtsには初日までにおよそ1200名の参加登録があった。登録時のアンケートによると、SIerなど「ITを販売提案する」立場の参加者が約半数(46.7%)を占める。より詳しく職種別に見ると、SE(28%)、インフラエンジニア(18%)、ITコンサルタント(13%)、データベース管理者(DBA、7%)などだ。
今回の基調講演でマイナー氏がメインテーマとしたのが「シンギュラリティ(技術的特異点)」だった。未来学者のレイ・カーツワイル氏が2006年の著書で予想したところによると、このままAI技術が乗数的に進化を加速させていくと、2045年ごろには高度に進化したAIが人間のコントロールを離れ、自律的に育つ(自ら学習し成長する)ときを迎える。
その先にAIとテクノロジーがどのような進化を遂げていくのか、現時点では予測不可能だが、重要なのが「AIそのものの倫理観」、AIが倫理観を持つことだとマイナー氏は指摘する。倫理観に欠けたAIが暴走すれば、やがて人間社会や生命に直接/間接的な危害を与えかねない。
マイナー氏は「米国や中国ではなく、日本から『倫理観を持った』シンギュラリティが生まれてほしい。それは可能だと考えている」と語った。日本企業の多くが「理念からすべて始まる」という倫理的意識を持っていること、技術発展の先に自社の生き残りや支配的立場の獲得ではなく市民一人ひとりの幸福という目標を置いていること、企業経営もコアコンピタンスへの集中ではなく「イノベーションの多様性」を重視したスタイルであること、などを理由に挙げる。
また、多数の中からごく一部の生き残った企業が次世代の支配的勢力になり、新陳代謝が起きるという米国市場のスタイルとは異なり、日本市場はよりお互いを助け合う“協調協力型”の性格で成り立っていると説明する。
「たとえばわたしは、自販機やコンビニの買い物でApple PayやGoogle PayではなくSuicaを使っている。これ(交通系ICカード決済)も、JRが一社で市場全部を取るのではなく、地下鉄や私鉄と協調協力的な姿勢で、両方で使えるようにしている」(マイナー氏)
同じように今後のデジタル社会におけるデータ収集と活用も、日本ではGAFAに代表されるような大企業が一手に独占するのではなく、国を挙げて官と民、また民と民が協調協力するかたちで取り組もうとしていることを指摘した。
そのほかマイナー氏は、日本におけるスタートアップ投資額が十分な規模に達していること、人口あたりのパテント(特許)件数では東京が世界一の都市であること、そして20年もあればITの世界は完全に書き換わることなどを説明し、シンギュラリティの時代に向けて「わたしは日本に賭けてもよいと考えている」と強調した。
「日本人の悪いのは、自分たちのすごさを信じないところだ。将来のためにできることはBelieve、信じること」(マイナー氏)