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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第528回

ワークステーションをRISC設計に移行させたHP 業界に多大な影響を与えた現存メーカー

2019年09月16日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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1986年にようやくSpectrumが完成

 さてそのSpectrum、PA-RISCという名称で1986年に製品が発表された。SpectrumはPrecision Architectureと命名され、これを実装したRISCプロセッサーということでPA-RISCというわけだ。

 最初に発表されたのはHP 3000/930とHP 3000/950、それにHP 9000/840であるが、どちらも納入そのものは1987年後半までずれ込んだ。

COMPUTERWORLDの1986年3月17日号にHPが掲載したHP 3000/930の広告。性能は4.5MIPSで、IBM 4381-12と同等以上の性能とされた。ちなみにHP 3000/930のオリジナルの価格は22万5000ドルだったが、出荷開始前に18万ドルに値下げされた

こちらはHP 9000/840。右側のテープドライブはオプション。本体価格は11万3500ドルで、HP 9000/550の倍の性能だったという話であるが、ドレスデン大学はこのシステムの納入に40万DEM(1987年当時の換算レートでおおむね25万ドル相当)支払ったそうだ

 最初のPA-RISCはTS-1と呼ばれるものだが、こちらはTTL ICを使った構成になっている。実際HP 9000/840に搭載されたCPUボードを見るとわかるが、CPUそのものの構成だけで最低5枚のボードが必要と言う体たらくである。

PUボードというか、ALU+コントローラー部ということか。TTLの山であるが、これ1枚ですべてのALU+コントローラーが完結したとは考えにくい気もする

Register File。74F373N/74F374N(LatchとFF)に混じって富士通のMB81C69A(16Kbit SRAM)が大量に搭載されており、確かにRegister Fileっぽい

FPUボード。右端のヒートシンクの下にFPU(なんとなくWeitekかどこかのFPUではないかという気がする)が隠れている模様

メモリーコントローラー。中央にひときわ大きなDIPパッケージが鎮座しているが、これはTIの74ALS632(32bitパラレルECC IC)

TLB。こちらもSRAMやらFF/ラッチやらが大量に

 これは一応8MHzで動作したそうだが、よく8MHzで動いたなという気すらする。それでも出荷されれば面目は経ったのだろうが、上で書いた通り実際の出荷は1987年にずれこんだわけで、踏んだり蹴ったりではある。

 HP LabにおけるPA-RISCのプロジェクトリーダーはBirnbaum氏が務めていたが、不幸なことにIBMでの経験もあって、パフォーマンスの話はMPE、つまりHP 3000シリーズのソフトウェアではなくUNIXベースのものとなった。

 1986年6月のニュースレターでは、Birnbaum氏がSpectrumはAmdahlやDECのメインフレームと比較して互角以上であり、「OSのチューニングが行なわれていない状態でもVAX 8600よりも高速」と述べたとしているが、VAX 8600がECLベースで12.5MHz駆動だったことを考えると、やや過大評価な気がしなくもない。

 当初の予定よりやや遅れ気味ではあったが、1986年に入ってHP 3000シリーズ向けにSuprtoolとQeditという非常にユーザー数の多いツールを提供しているRobelleというベンダーに、PA-RISCベースのマシンとOS一式が納入された。

 こうした有力ベンダーに先行して機器を渡して開発してもらうのはよくある話で、このRobelleへの納入もHpのFast Start Programと呼ばれる契約に基づいたものであった。

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