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IFA 2019レポート第14回

5Gモデムを内蔵! ファーウェイ、次期ハイエンド「HUAWEI Mate30」に搭載する「Kirin 990」を発表

2019年09月07日 17時50分更新

文● 山根康宏 編集● ASCII編集部

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 9月6日(現地時間)、IFA 2019初日のオープニングキーノートセッションにファーウェイのコンシューマービジネスグループCEO、リチャード・ユー氏が登壇。新型チップセット「Kirin 990」を発表した。9月19日にミュンヘンで発表される予定の「HUAWEI Mate 30」シリーズに、このKirin 990を搭載することもアナウンスしている。

Kirin 990を発表したリチャード・ユーCEO
HUAWEI Mate 30シリーズはKirin 990を搭載して9月19日に発表予定

ついに5GモデムをSoCに内蔵
5G時代の到来でNPUの使い方も変わる

 Kirin 990はAI処理専用のNPUを内蔵したものとしては、第3世代のSoC(統合型チップセット)。昨年発表のKirin 980は4Gモデムが内蔵されていたが、5G対応にはモデムを別途用意する必要があった。Kirin 990では内蔵するモデムを5G対応品にした「Kirin 990 5G」と、4Gモデムの「Kirin 990」の2種類を提供。Kirin 990 5Gを使えば5Gスマートフォンなど5G端末の設計が容易になる。

Kirin 990 5GとKirin 990の主なスペック

 ユーCEOは2年前の「Kirin 970」からNPU搭載チップセットの商用化を業界に先駆けて開始した先駆者であることをアピール。2年間でスマートフォンアプリのAI利用が爆発的に伸びたと説明した。

 NPUの採用でスマートフォンのAI処理が高速化されたことで、スマートフォンでAIを使うことが当たり前になった時代を「Mobile AI 1.0」と定義。Mobile AI 1.0ではほぼすべての処理を本体内部で行ない、クラウドアクセスは必要時だけという形だった。しかし高速低遅延な5Gの商用化が始まったことで、クラウドもリアルタイムで利用することが可能になった。「Mobile AI 2.0」の時代がやってきたというわけである。

 Mobile AI 2.0の実現には5Gモデムの性能も重要となる。クアルコムやサムスンの5Gモデムは、4Gのコアネットワークを必要とするNSA(ノンスタンドアローン)だけを利用できる。これに対しファーウェイの5Gモデム「Balong 5000」は5Gマルチモードに対応。NSAと5G単独インフラを利用するSA(スタンドアローン)の両方が利用できるなど、数年先を見据えた設計になっている。

4Gモデム内蔵SoC+5Gモデムの各社の比較。ファーウェイだけがNSA+SA対応

 Kirin 990はそのNSA+SA対応モデムを統合した世界初のSoCとなる。また「7nm+ EVUプロセスで製造」「16コアGPU」「Big-TinyコアアーキテクチャNPU」の採用も世界で最初になるとのことだ。

4つの世界初を実現したKirin 990

 これだけの機能を搭載するとなると、サイズの大型化が懸念される。しかしKirin 990の専有面積を1とすると、クアルコム(Snapdragon 855+X50モデム)は1.26、サムスン(Exynos 9825+5100モデム)は1.36の面積を必要とすると主張する。Kirin 990は高性能化だけではなく省スペースという点でも優れている。

ファーウェイ、クアルコム、サムスンの5Gソリューションのチップセット面積の比較

 Kirin 990の5Gモデムのそのほかの特性としては、5G NR方式で通信速度が下り2.3Gbps、上り1.25Gbps。5Gの電波が弱い時にはアップロード回線を4Gに分割することで他社の5Gモデムより5.8倍の高速を実現している。

 また「BWP」機能を搭載し、軽いデータを受信しているときは受信帯域を狭めることでモデムの省電力化を図れるという。BWPを有効にすると無効時よりも15%、他社のソリューションより44%の省電力が可能だ。さらにはビームフォーミング特性を高め120km/hの高速移動中のダウンロード速度も他社より120%高速とのこと。

BWP機能はモデムの消費電力を低減できる

NPUの性能は2年前の12倍
画像処理についても大幅に強化されている

 AI機能(NPU性能)は初代Kirin 970から12倍高速化され、最新SoCの比較でもExynos 9825やSnapdragon 855より約3倍速い。またAI効果の比較でもアップル「A12」より性能は高いという。さらに消費電力低減とNPUの効率利用のために新しく「Tiny-Core」を内蔵。重い処理は「Big-Core」で対応し、軽い処理は低消費電力なTiny-Coreに任せることでNPUの効率を高めた。

Big-TinyコアアーキテクチャNPUの動作概念

 AI処理の例として、複数の人物が動く動画で人物のみを切り出し、一部を消したり遠近感を加えて背面をぼかすといった処理がデモされた。従来のNPUでは加工できるのは1人だけだったが、Kirin 990ではそれが多人数でもリアルタイム処理が可能になっている。

複数で演奏している動画。ここから数名を切り出したり、1面を前に出して後ろにボケ効果を与えることができる

 CPUは「Big-Middle-Littleアーキテクチャ」を採用、GPUは前モデルの8コアから16コアへ増加。さらにGPUからアクセスするDDRメモリの間にスマートキャッシュを搭載。これらもパフォーマンスアップと消費電力削減を両立させるためのもの。モバイル端末向けのSoCは通常利用できる電力がバッテリーだけであるため、高速化だけではなく電力消費を抑える設計が重要になるのだ。最近利用者が増えているモバイルゲーム向けにも向いたSoCと言える。

高速かつ低消費電力を実現するため最新のアーキテクチャを採用

 画像処理プロセッサ(ISP)にも大幅な改良が加えられており、消費電力や静止画と動画のノイズ除去性能をアップ。世界初の「BM3D」ノイズリダクションはデジタルカメラレベルの性能を持ち、写真の後ろ側に写った布の繊維もつぶれず1本1本を表現できる。またISPとAIの組み合わせでよりナチュラルな顔の肌処理も可能だ。

ISPも性能アップ。ここでも省電力が謳われる

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