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IBM Watson APIを活用し、2時間でコア開発

ラグビーワールドカップ2019で使いたいAI「教えて!ラガマルくん!」を支えるIBM

2019年08月05日 06時30分更新

文● 末岡洋子 編集● ガチ鈴木/ASCII編集部

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 いよいよ2019年9月20日に開催が迫ったラグビーワールドカップ2019の日本大会。日本勢の活躍はもちろん、世界の名だたるプレイヤーが魅せるラグビーを身近に感じるチャンスだ。だが、野球やサッカーと比べるとラグビーのルールを知らないという人は多い。そこで日本アイ・ビー・エムが作ったのが「教えて!ラガマルくん!」というサービスだ。このアプリ、自然言語でラグビーのルールについて質問できるという使いやすいインターフェイスを持つが、なんと2時間で中核部分を作ったという。

 ラガマルくんは非公式のラグビー応援キャラ。そのラガマルくんに、ラグビーについて聞くことができるというのが、「教えて!ラガマルくん!」だ。サービスはAIチャットボットを利用しており、スマートフォンやタブレットでQRコードを読み込んでリンクを開くと、チャット形式でラグビーの用語、ルールなどを自然言語で質問できる。

試しに、「オフサイドって何?」、「なぜノーサイドっていうの?」と入力すると、画像のように回答が返ってきた

 質問するだけでなく、写真の解説もある。事前に並んでいる写真を選択すると解析を開始、そして何をしているのかを教えてくれる。例えばパスの画像と理解すると、「パスは後ろに」というラグビー独自のルールを解説してくれる。事前に用意された写真だけでなく、試合中に写真を撮って聞くことも可能という。観戦中にわからないと思ったらその場でラガマルくんに聞くことができそうだ。

 「教えて!ラガマルくん!」を可能にしているのは、IBMの人工知能技術だ。IBMは「IBM Watson」で人工知能ブームに先駆け、簡単に利用できるサービスを「IBM Watson API」として12種類用意している。

 「教えて!ラガマルくん!」では、自然言語認識を利用した照会応答機能「Watson Assistant」と、画像認識「Visual Recognition」が使われている。IBM Watson APIは事前構築済みで、IBM Cloudを始め簡単にクラウドで使うことができる。実際、「教えて!ラガマルくん!」の中核部分は個人の社員がものの2時間で作ってしまったとのことだ。

 2019年7月18日、都内で開催された「SoftBank World 2019」で、スポーツ分野で使われるIBMのクラウドとAI技術を紹介した日本アイ・ビー・エム取締役専務執行役員 クラウド&コグニティブ・ソフトウェア事業本部長の三澤智光氏は、IBM Watson APIの特徴について「簡単にアプリを作ることができる。少量のデータでも結果を出すことができる」と説明する。

 さらには、フロント画面ではこれまでカスタムUIを作成する必要があったが、Facebook、Slackなどのフロントエンドの仕組みが含まれており、カスタムのUI作成も不要になったという。さらには、IBM Watson APIで出ていた結果をクラウド側にあるサーバーレスにつなげるなどのことも可能と三澤氏。「AIアプリ開発の敷居は大きく下がっている」(三澤氏)。

 もちろん、自分たちでAI、機械学習、深層学習を使って大量のデータを読み込んでモデルを開発するというカスタムモデル開発もサポートする。IBMはモデルの開発環境「Watson Studio」、モデルの実行環境「Watson Machine Learning」、モデルの運用環境「Watson OpenScale」、そしてデータ基盤として「Watson Knowledge Catalog」を備える。

 IBMは2019年2月、「Watson Anywhere」としてWatson技術のコンテナ化を発表した。コンテナにすることで、Watson Assistantなどのサービスをオンプレミスや他のクラウドでも動かすことができる。三澤氏は、ベンダーロックインのなさに加えて、Watson APIのほとんどのサービスが東京のデータセンターで動いており日本で全て完結できる点も差別化とした。

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