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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第519回

本格的にコンピュータービジネスに参入したHP 業界に多大な影響を与えた現存メーカー

2019年07月15日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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最初のパーソナルコンピューター
HP 9100Aを発売

 その1968年は、同社曰く“最初のパーソナルコンピューター”である、HP 9100Aが発売される。

最初のパーソナルコンピューター「HP 9100A」。当時の価格で5000ドルほどだったそうである

 このパーソナルコンピューターの定義がいろいろ難しい。連載354回でも触れたが、自分で好きなように作れるパーソナルコンピューターという意味では1975年のAltair 8800が元祖になる気がする。

 ではHP 9100Aは?というと、「プログラム可能な関数電卓」というのが正直なところで、パーソナルコンピューターというには少し無理があるように思う。

 実際HPのカタログでも当初は“Desktop Computing Calculator”という表記になっており、これをパーソナルコンピューターだと言い始めたのはつい最近のことである。

 ちなみにHP 9100Aが完成した時、Hewlett氏いわく“If we had called it a computer, it would have been rejected by our customers' computer gurus because it didn't look like an IBM.”(もしこれをコンピューターと呼んだら、IBMに慣れ親しんでいる顧客に却下されるだろう)ということでCalculatorと称したのだそうだ。

 機能的には逆ポーランド記法によるプログラミングをサポートし、3レベルのスタックと16のストレージレジスターを搭載、最大196ステップのプログラミングが可能であった。しかもこのプログラミングや結果表示に利用できる3行表示の小型CRTまで搭載していた。

 固定機能としては平方根/絶対値/指数/対数/三角関数/πなどを搭載しており、これで複雑な科学技術計算が容易にできるようになった。扱える値の範囲は10-98~1099で、また浮動小数点と固定小数点の切り替えも可能だった。

 さらにオプションとして拡張メモリー(ストレージレジスターを248個、プログラミングを3472ステップ増強できる)やテープリーダー/デジタイザー/プリンター/X-Yプロッター/17インチモニター/光学カードリーダーなどが用意されている。

 このあたりは確かにパーソナルコンピューターといっても差し支えないレベルであるが、いかんせん科学技術計算しかできないあたりは、やはりCalculatorの範疇に留まるように思う。

 ご存知の通り、関数電卓の路線は大ヒットとなり、現在もまだプログラマブル関数電卓が販売されている。

 とくのHP 9100Aはディスクリート部品+CRTということで、大型かつ重くなることは避けられなかったが、1972年にはICを利用してポケットサイズにまで小型化したHP-35が登場、価格もわずか395ドルまで下がったことで爆発的にヒットし、この子孫が現在まで続いている格好だ。

初期バージョンには指数関数にバグがあった(e^2.02を計算するとなぜか2になる)そうだが、すぐに修正されたそうだ

 パソコンつながりで余談を1つしよう。この後説明するHP 3000シリーズが登場した1972年、同社の電卓の設計部門部門で働いていた1人のエンジニアが、自分でパソコンのプロトタイプを作成し、それを会社に提示してパーソナルコンピューターマーケットへの参入を提案した。

 HPはこの提案そのものは拒否したが、HPはこのエンジニアのアイディアの権利を彼に譲渡した(会社の資産と勤務時間を利用して構築したプロトタイプだから、本来はこのアイディアの権利は会社に所属する)。

 後に彼はHPを辞して、1976年に友人とともにコンピューターメーカーを興し、新たに開発したパーソナルコンピューターの販売をスタートした。このパーソナルコンピューターの名前はApple I、友人の名前はSteve Jobs、エンジニアの名前はSteve Wozniakである。

 なんというかHPにとっては惜しい人材だったとも言えるのだろうが、ただHPにはWozniakは収まりきらなかったのかもしれない。

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