開発者の情熱とワクワクが詰まった軽スポーツ
ホンダ・S660オーナーによる連載スタート!
もう何年も前の話になりますが、ホンダは長い間「Do you have a HONDA?」というキャンペーンを行なっていました。そのCMソングとして起用されたのが、ハイロウズの「日曜日よりの使者」。その歌詞と相まって(歌詞は調べてみてください)、キャンペーンCMは誰もが一度は体験する乗り物へのワクワクドキドキを、見事なまでに表現していました。そんな「日曜日よりの使者」という言葉がピッタリの一台がホンダの小さなオープンカー「S660」です。
2015年3月30日発表、同年4月2日に発売を開始したS660は、今年で4年目を迎えました。ですが街で見かけるかというと、同年に発売したND型ロードスターと比べて少ないのではないでしょうか。そこでこの小さくも孤高の「日曜日よりの使者」のオーナーとして、余すことなく魅力をお伝えしたいと思います。
ホンダらしさに溢れる孤高の存在「S660」
ホンダという企業から多くの人が想像するのは、他社にはない独創的な発想をする技術屋集団ではないでしょうか。ですが、創業者である本田宗一郎が戦後直後、苦労して買い出しをしていた妻の自転車に「エンジンをつけたら買い出しが楽になる」と思いつきオートバイ研究を始めたことがきっかけという逸話があるように、会社の本質は昔から「使う人」を主体とするモノづくりが特徴です。
それは企業プロモーション活動の一つであるモータースポーツにも表れており、昔からF1やインディ500、そしてMotoGPといったドライバーズレースに参戦するものの、ル・マン24時間レースのような車を主体とする耐久レースには殆ど参戦していませんし、技術面においては現在の車両には安全運転支援システム「Honda SENSING(ホンダ センシング)」をはじめとする各種電子制御を多く搭載しますが、いずれも他社と比べ「動いているの?」と思える位にドライバーを補助するスタンスに徹した動作をします。
ユーザーであるドライバーを中心に車両を作るのがホンダが作るスポーツカーですから、ドライバーが心の底から楽しいと思えるものばかり。NSX、TypeR、S2000という言葉を見ただけで、誰もがワクワクソワソワしてしまうのではないでしょうか。S660もそんな本田イズムが強く反映されたスポーツカーです。
スペックに関する細かい話については、ASCII.jpをはじめ他媒体で色々と書かれているので省略しますが、人を中心にエンジンを後方に配置したミッドシップレイアウトは、走りの楽しさを追及した結果。登場時、多くのメディアはこの配置に「ホンダらしい一台」と称賛しました。
ですが、よく見ると乗用車に当たり前のように付いている、“あるもの”がなくて、再び多くの人が驚きの声を上げました。S660にはトランクが幌を入れるユーティリティボックス以外、収納と呼べる場所が設けられていなかったのです。ちなみに、ドリンクホルダーは1個しかありませんし、それも「運転中にちょっと飲んで置く」がしにくい場所だったりします。
これについて、以前開発者に伺う機会があり尋ねてみました。当時20代の開発責任者は、目を輝かせながら車そのものへの想いや楽しさを私に語りながら、あくまで走りを楽しむための車つくりを真摯に向き合った結果、トランクは不要という結論に至ったようです。営業サイドからの「収納をつけろ」という意見を突っぱねたという話には男気を感じました。
当時、仕事の脚としての車を探していた筆者は、インタビュー後「そんなに楽しいというなら乗ってみようじゃないか」と、ディーラーで試乗することに。軽い気持ちで伺ったのですが、人間知らない方が幸せで、うっかり気に入ってしまい、荷物は乗らないなぁと思いながらも「この車で仕事場に行ったら、その道中が楽しめて、よい仕事ができそう」と思うように。そして営業マンの「今申し込まないと1年後になるかもしれませんよ」「本当にいつ来るかわからないですから」という言葉に後押しされてハンコをポン。こうして仕事用の車として、初マイカーのS660を迎えることにしました。
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