「データ・リテラシー・プロジェクト」が開発、個人スキル評価や企業の戦略フレームワークなども
Qlikがデータリテラシーの日本語版学習コース無償提供開始
2019年07月05日 07時00分更新
BIツールベンダーの米Qlik Technologiesおよび日本法人のクリックテック・ジャパン(Qlik)は2019年7月4日、同社が6つのパートナー企業/組織と展開する「データ・リテラシー・プロジェクト(Data Literacy Project)」において、日本語版コースの提供開始を発表した。データ分析の必要性から具体的な分析手法までを段階を追って学べる9つのE-ラーニングコースや、個人のデータリテラシー評価、データリテラシー戦略プログラム/フレームワークなどの内容があり、誰でも無償で利用できる。
同日の記者説明会に出席したQlik シニアディレクターのジェレミー・シム氏は、昨年の調査において調査対象国中最下位だった日本企業のデータ・リテラシー向上に向けた取り組みであることを説明。データ・リテラシー・プロジェクトのコンテンツはQlik製品を利用していないユーザーでも学習できる内容となっており、データサイエンティストに限らず、企業役員から従業員に学んでほしいと訴えた。
9つの学習コースを提供、「経営幹部から一般従業員まで幅広く学んでほしい」
データ・リテラシー・プロジェクトは昨年、Qlikとパートナー組織6社(Accenture、Cognizant、Experian、Pluralsight、CIM=Chartered Institute of Marketing、Data to the People)が立ち上げた非営利組織だ。世界中の組織と個人におけるデータの理解/分析/活用を促進していくために、データリテラシー向上のための学習リソースの提供、主要組織におけるデータリテラシーの必須要件化の促進、教育機関におけるカリキュラム化の支援などに取り組んでいる。
2018年3月から英語版の提供を開始し、これまで英語版では18の無償コースを提供してきたが、今回はそのうち以下の9コースを日本語化して提供を開始した。
1:なぜ分析なのか/2:データ・リテラシーの文化/3:データの基礎/4:集計について/5:分布について/6:信号とノイズについて/7:ABテスト分析/8:相関と因果関係/9:単回帰分析
シム氏は、これら9つの学習コースは「データリテラシーの概要」や「データの基礎」から「アナリティクスの基礎」「データに基づく意思決定」「高度なアナリティクス」まで、幅広い層の企業従業員に対応するコンテンツだと説明。データサイエンティストなどの特定層だけでなく、経営幹部からビジネス部門の従業員まで組織全体のデータリテラシーを高め、企業文化を“データ主導型”に進化させていくためにも、幅広い従業員が学んでほしいと繰り返し強調した。企業が新入社員教育にこの学習コースを利用しているケースもあるという。
ちなみにデータ・リテラシー・プロジェクトのサイトには、10の質問で個人の“データペルソナ”を評価する仕組みもあり、回答すると4つのタイプ(データ貴族/データ騎士/データドリーマー/データ懐疑主義者)に分類される。各タイプごとに、どの順番でどのE-ラーニングを学んでいけばよいかというトレーニングのロードマップも提供される。またデータリテラシー向上の取り組みを行いたい組織向けに、どのように実践していくべきかのフレームワークなども提供している。
なお昨年のグローバル調査において、日本企業のデータリテラシースコア(中央値)は、調査対象10カ国中の最下位だった。今回、英語版に続く2番目の言語として日本語版を提供する背景には、そうした理由もあるとシム氏は説明した。
なお上述した企業データリテラシースコアは、従業員の「データリテラシーのスキルセット」だけでなく、企業組織としての「データ主導の意思決定」、社内のさまざまな部門/従業員がデータ活用を行っているという「データ活用の拡散度」という3要素のスコアを合計して算出されている。このことからもわかるように、Qlikが考える「企業/組織の」データリテラシーとは、単に個々の従業員が十分なデータスキルを持つことだけにとどまらず、組織内で「データに基づく議論とコラボレーション」ができることまでを視野に入れている。
「企業は(従業員、そして組織の)データの能力を高める役割を果たすべき。そのためには、(リーダーが)しっかりとした『データに対するビジョン』を持つこと、『データに対するガバナンス』を明確化すること、『データ活用に対する戦略』を持つことが重要だ。『データ投資』もより多くの企業が強化すべき領域。そして『データ主導型の文化』を醸成していくことも求められる」「これらを実現し、推進するのは、やはり強いリーダーシップの役割である。組織のトップや上長が、一般従業員も含めこの(データ・リテラシー・プロジェクトの)学習を促してほしい」(シム氏)