AMD製GPUで使える新機能
さて、ここからはNAVIとは直接関係ない話である。今回のNAVIにあわせてRADEON Anti-Rag、FidelityFX、Radeon Image Sharpeningといった技術が発表された。これらは必ずしもNAVIだけでなく、従来のGCNベースの製品でも利用できるものであるが、これを順に説明したい。
遅延を軽減する技術
Anti-Rag
まずRadeon Anti-Rag。ゲームでもなんでもそうだが、まずCPU側で処理を行ない、次いでGPU側で処理して出力する。しかし、マウスやキーボードの操作はCPU側で行なうため、原理的にその操作が画面に反映されるまで、多少のラグタイムが発生する。
これそのものを根絶するのは難しい。それでもCPUとGPUの処理が同期していればまだラグは一定なのだが、昨今のゲームの場合CPUよりもGPUの処理が重い(GPUは常に100%近い負荷率で、一方CPUは数十%ということも珍しくない)結果、CPU側が前倒して処理することがしばしばあり、この場合ラグがさらに広がることになる。
そこでAnti-Ragでは、強制的にCPU側の処理をGPU側にあわせる、つまりCPU側の処理をGPU側にあわせて待機させることで、ラグを一定にするという仕組みである。
下の画像がAnti-Ragを有効にしてどれだけラグタイムが削減できるかの例で、もともとラグタイムが少ないDOTA 2 Rebornなどでは効果が薄いが、ラグタイムが大きいApex LegendsやFortniteでは効果が大きく、平均31%ほどラグタイムが削減できるとする。確かにFPS系ゲームではこの機能は有用だろう。
ただこのAnti-Rag、大原則としてCPUとGPUの処理が交互に行なわれることが前提になっている。これはDirectX 11までのゲームでは成立するのだが、DirectX 12ではCPU側から細かく描画制御をバンバン出すようになっており、基本的に常にCPUとGPUが同期して動作しているため、原理的にAnti-Ragが効果ない。というより、外部から制御できない。その一方でGCNベースのGPUでも可能であり、したがってRyzen 2000G/3000GなどのAPUでも利用可能なものとなっている。

この連載の記事
-
第852回
PC
Google最新TPU「Ironwood」は前世代比4.7倍の性能向上かつ160Wの低消費電力で圧倒的省エネを実現 -
第851回
PC
Instinct MI400/MI500登場でAI/HPC向けGPUはどう変わる? CoWoS-L採用の詳細も判明 AMD GPUロードマップ -
第850回
デジタル
Zen 6+Zen 6c、そしてZen 7へ! EPYCは256コアへ向かう AMD CPUロードマップ -
第849回
PC
d-MatrixのAIプロセッサーCorsairはNVIDIA GB200に匹敵する性能を600Wの消費電力で実現 -
第848回
PC
消えたTofinoの残響 Intel IPU E2200がつなぐイーサネットの未来 -
第847回
PC
国産プロセッサーのPEZY-SC4sが消費電力わずか212Wで高効率99.2%を記録! 次世代省電力チップの決定版に王手 -
第846回
PC
Eコア288基の次世代Xeon「Clearwater Forest」に見る効率設計の極意 インテル CPUロードマップ -
第845回
PC
最大256MB共有キャッシュ対応で大規模処理も快適! Cuzcoが実現する高性能・拡張自在なRISC-Vプロセッサーの秘密 -
第844回
PC
耐量子暗号対応でセキュリティ強化! IBMのPower11が叶えた高信頼性と高速AI推論 -
第843回
PC
NVIDIAとインテルの協業発表によりGB10のCPUをx86に置き換えた新世代AIチップが登場する? -
第842回
PC
双方向8Tbps伝送の次世代光インターコネクト! AyarLabsのTeraPHYがもたらす革新的光通信の詳細 - この連載の一覧へ






