今度はMacがパートナー
もちろんiPadだけで全てが快適にできるわけではない。よりクオリティを求めるユーザーは、MacBook ProやMac Proへステップアップしていくだろう。
ただ、そうしたユーザーにとっても、iPadはムダにならない。なぜならSideCar(サイドカー)があるからだ。
いままで使っていたiPadは、今度はサブディスプレイとして働いてくれる。もちろんMacを持ち歩けないときは、これまでどおり創作ツールとして使えるのだ。
アップルの狙いとしては、いきなりMacBook Proを購入するのが難しいユーザーにはまずiPadから始めてもらい、その後にMacへ、ということだろう。そしてSideCarの存在は、逆にMacBook ProユーザーにiPadを購入してもらうきっかけにもなりそうだ。
この相乗効果を期待して、iPadアプリを簡単にMacに移行できるようSwiftUIを用意したのではないかとさえ思える。
停滞するMacの販売台数、回復なるか
iPadがMacとの繋がりを強くした背景には、Macの販売不振も影響していることだろう。アップルが販売台数の公表をやめたため正確な数字はわからなくなったが、Macの販売台数は停滞している。近年は新製品の投入が遅れていたのも、その原因のひとつだ。
先月、新たなMacBook Proが投入され、今回の「WWDC19」でもMac Proが発表された。だが、これら単体のMacが新規ユーザーにとって魅力的な製品になり得るかとなると、難しいと言わざるを得ない。MacはWindowsと比較すると、どうしても高いからだ。
こうしたMacの販売不振にテコ入れするためには、iPadOSによる独立は避けられない状況だったのかもしれない。
iPadは縮小を続けるタブレット市場のなかでも、そのシェアを伸ばして1位の座に君臨し続けている。そのiPadがiPhoneではなくMacをパートナーにすることで、Macの販売につなげるのは正しい戦略に思える。
アップルの目には、教育市場で伸びるChromebookとマイクロソフトが昨年発売したSurface Goが、iPadの強力なライバルとして映っているはずだ。
iPadとMacの新しいコンビが彼らとどう戦っていくのか、そしてiPadOSはどのように進化していくのか。その行き先に注目だ。