戦争終了後もラジオ、TVメーカーに
検査測定器が売れる
話を1947年に戻す。この年HPは法人化を果たす。社長はPackard氏、副社長はHewlett氏が務めることになった。戦争が終わったことで売上が減少するかと思いきや、その3年後に今度は朝鮮戦争が始まったことで、再び同社の売上は伸びていく。
特にHPの提供するさまざまな測定用機器は、どんどん電子化の進む軍には欠かせないものであり、これに向けて同社もまた測定用機器を中心にラインナップを充実させていく。
1951年に投入された高速周波数カウンターのHP 524Aは、極めて短時間に高い周波数(最大10MHz)を高い精度(6桁表示)で測定できるという優れもので、この後継製品もあわせて好評を博し、トータルで10億ドル規模の売上となっている。
画像の出典は、“Timeline of our history”
ちなみに1952年のHPのカタログ(108ページもある)を見ると、発振器が17製品、真空管用の電圧メーターが4製品+アクセサリー8製品、信号発生器8製品、歪計/波形分析器が6製品、波形発生器が1製品、波形測定用機器が22カテゴリー、マイクロ波測定器が11製品、周波数測定器12製品、その他の機器が数十製品(細かいアタッチメントの類だが、数が多すぎて数える気になれなかった)といったところ。
価格は数百ドル~数千ドル(一番高いものは周波数カウンターのジャスト2000ドル)であるが、1952年当時の2000ドルというのは、現在で言えばほぼ2万ドルに相当する。つまり数十万円~200万円程度の測定器をメインに商売していたわけだ。
そして朝鮮戦争が終わっても冷戦がスタートすることになり、軍需向けのビジネスは引き続き好調であったし、加えてこの頃からさまざまな電子機器の需要が高まることになった。たとえば米国では、1950年代に入ってAM/FMのラジオ局が急増し、TVもこの頃から各家庭に入るようになった。
電子機器が増えるということは、それを製造する企業も増えるという話で、そうした企業は製品の開発や製造/検査の際に測定器が必要になる。HPはこうした市場をがっちり掴むことに成功した。1850年頃にカリフォルニアで起きたゴールドラッシュの最中、一番儲かったのは近所でスコップやバケツを売った人だった、なんて話があるが、それを地で行くような話である。
この連載の記事
-
第804回
PC
AI向けシステムの課題は電力とメモリーの膨大な消費量 IEDM 2024レポート -
第803回
PC
トランジスタの当面の目標は電圧を0.3V未満に抑えつつ動作効率を5倍以上に引き上げること IEDM 2024レポート -
第802回
PC
16年間に渡り不可欠な存在であったISA Bus 消え去ったI/F史 -
第801回
PC
光インターコネクトで信号伝送の高速化を狙うインテル Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第800回
PC
プロセッサーから直接イーサネット信号を出せるBroadcomのCPO Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第799回
PC
世界最速に躍り出たスパコンEl Capitanはどうやって性能を改善したのか? 周波数は変えずにあるものを落とす -
第798回
PC
日本が開発したAIプロセッサーMN-Core 2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第797回
PC
わずか2年で完成させた韓国FuriosaAIのAIアクセラレーターRNGD Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第796回
PC
Metaが自社開発したAI推論用アクセラレーターMTIA v2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第795回
デジタル
AI性能を引き上げるInstinct MI325XとPensando Salina 400/Pollara 400がサーバーにインパクトをもたらす AMD CPUロードマップ -
第794回
デジタル
第5世代EPYCはMRDIMMをサポートしている? AMD CPUロードマップ - この連載の一覧へ