5Gの実用化に向けて、具体的な動きが見え始めた。
総務省が「第5世代移動通信システムの導入のための特定基地局の開設に関する指針案」を公開。ついに免許の割り当てに向けて動き出したのだ。免許を獲得したい希望者を審査したのち、2019年3月末までに免許が割り当てられる予定だ。
割り当てられる周波数帯は3.7GHz帯が5枠、4.5GHz帯が1枠、28GHz帯が4枠となる。3.7GHz帯と4.5GHz帯は1枠が100MHz幅となっており、28GHz帯は400MHz幅だ。
獲得を希望する申請者は、希望する枠について、優先順位をつけて申請することになる。総務省ではすべての申請者の申請に対して、比較審査を実施し、点数の高い者から順に希望する周波数帯枠を割り当てることになる。
2018年10月には、ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルネットワークの各社長が集結し、総務省で公開ヒアリングが開催された。その場では、各社とも2019年にプレサービスを提供し、2020年に商用サービスを開始したいと語っていた。
2019年にはラグビーのワールドカップ、2020年にはいわずもがな、東京オリンピック・パラリンピックが開催されるため、各社ともそれらビッグイベントにターゲットを絞って、5Gでなんらかのサービスを提供したいというわけだ。
5Gネットワークを使い、スタジアムでスマートグラスやタブレットを使った新しい観戦スタイルが提供される可能性がある。また、スタジアム周辺でガードマンに4Kカメラを装着させ、動く監視カメラとして、周辺の警備をするという使い方も想定される。
さらに、会場周辺を走るバスを自動運転にして、5Gネットワークで管理することもできるだろう。世界中からたくさんの競技者、メディア関係者、観光客などが東京などに訪れるため、世界に日本が誇る最先端な5Gネットワークをアピールする場としては最高の場所になるはずだ。
ただ、業界関係者のなかには「5Gのエリアを作るのにはそれなりの設備投資が必要だ。2020年の東京オリンピック・パラリンピックが終了したら、5Gへの投資が凍結するのではないか」という見方をしている人もいる。
しかし、総務省では免許を割り当てる条件として、5Gに地域における課題解決や地方創生への活用を期待していることから、地方にも基地局が整備されるような条件を設定しようとしている。たとえば、全国を10km四方のメッシュに区切り、全国および各地域ブロックごとに5年以内に50%以上のメッシュで5G高度特定基地局を整備しなくてはならないという案を提示。
また、周波数を割り当てたあとは、2年以内に全都道府県でサービスを提供しなければいけないという案もある。つまり、需要が集中する都心部だけ5Gネットワークを構築するというのは許されず、きちんと地方の隅々までエリア化する意思がないことには、免許を割り当ててもらえないというわけだ。
ここで注目となるが、楽天モバイルネットワークの動向だ。彼らもノキアと実証実験を行なうなど、5Gの免許獲得に向けて動き出している。ただ、楽天は4Gの免許も今年割り当てられたばかりであり、4Gのサービスは2019年10月の開始を予定している。つまり、楽天は4Gと5Gを同時に整備していく必要があるのだ。
4Gにおいては、2026年3月まで、東京23区、名古屋市、大阪市以外のエリアにおいて、KDDIのネットワークを借り、ローミング接続することが決まっている。しかし、5Gの免許をもらうには、サービス開始後、2年以内にすべて都道府県に基地局を設置する義務が出てくる可能性がある。4GはKDDIのネットワークを借りつつ、5Gは自社で全国に構築するという状況になりかねない。
ただ、KDDIの高橋誠社長は「楽天とは、5Gのネットワークを共同で構築する可能性もある」と語る。KDDIとしても、5Gへの莫大な投資コストを楽天と折半できるメリットもあるし、5G周波数帯を共有することも可能になってくるだろう。5Gで割り当てられる周波数帯は10枠あるなかで、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天がどのような希望を出し、総務省はどんな割り当てをしてくるのか。また、4社以外に名乗り上げる会社はあるのか。
2019年3月末まで割り当てられる周波数帯の行方が、この業界の将来を占うことになるかもしれない。