クラウドやブロックチェーンなど
多くの分野でチャンスを狙う
別の分野での注力はクラウドである。こちらも2016年の機構改革によって、これまでGlobal Technology Serviceで分類されていたものがTechnology Services & Cloud Platformとして切り出された。
ただこちらも成長というよりは安定横ばいといった傾向にあるのは、Amazon AWS/Microsoft Azuleという強力な競合メーカーの後塵を拝しているからという事情がある。
2015年頃はというと、AWS・Azule・IBM・Googleの4社が全体の5割程度のシェアを占めていたのだが、2018年現在はAWSとAzuleで5割を超えており、IBMやGoogleは1割に満たない程度のシェアでしかない。数字は諸説あるが、Synergy Research Groupのデータ によればIBMは8%ほど、Googleが6%ほどとなっている。
この状況を打ち破るための策としてIBMが2018年10月に発表したのがRedHatの買収である。これによってハイブリッドクラウドのサービスを強化することで、シェアの拡大を狙う公算だ。
IBMは他にもブロックチェーン技術や量子コンピューターの分野でも多くの技術的な知見を蓄えており、こうした分野のビジネスチャンスが来るのを虎視眈々と待ち構えている状況である。
ビジネス構造の転換で果たして
売上の伸び悩みに歯止めがかかるか?
以上のようにRometty氏は就任以来6年ほどかけて、さらにIBMのビジネス構造を転換している最中というのが現状の正確な表現になるだろう。
Rometty氏は日経ビジネスの2018年12月24・31日合併号でのインタビューの中で「現在ではIBM製品やサービスの50%が、4年以内にできたものです。IBMの人材の50%も、この4年以内に入社した人々です。」と述べている。
これを成し遂げるにあたり、60以上の会社を買収する一方で、80億ドル以上の事業を分社化しているそうで、まさしく転換期にふさわしい動き方である。
問題なのは、売上が伸びないことであろうか。2018年年次報告の冒頭では「2018年は、IBMとその顧客にとって記録的な年になった。我々はデジタル改革の第2章に入る準備が整い、再び成長局面に戻った」と高らかにアピールしたが、本当にこれが実現したかどうかは2019年の決算で明らかになるだろう。
その結果次第で、引き続きRometty氏がIBMを率いるか、あるいは別のCEOがまた登場するのかが明らかになりそうな気がする。創業以来107年を経て、まだそうしたシビアな判断を(取締役会が)平気でやりそう、というあたりが、今もってIBMが業界の重鎮として健在な最大の理由だと思う。
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