東京都の「トップレベル事業所」認定から大型機器リユース/リサイクルの取り組みまで
「環境配慮型データセンター」目指すアット東京、その裏側をのぞく
2019年03月29日 09時00分更新
データセンターが「トップレベル事業所」認定を取得する意義とは
アット東京では、東京都が条例で定める「トップレベル事業所」認定を3つのデータセンター(中央第1/第2センター、第3センター)で取得している。
トップレベル事業所の認定は、都が定めた「地球温暖化対策の推進の程度が特に優れた事業所(優良特定地球温暖化対策事業所)」の基準を満たす事業所に与えられる。ただし、都が公表している認定事業所一覧を見ると、その大半は最新のオフィスビルや大型商業施設だ。アット東京 設備運用グループの三井紀生も、「都内のデータセンター事業者で、3カ所ものセンターで認定を取得しているのは非常にまれです」と説明する。
なぜアット東京はトップレベル事業所認定を取得しているのか。アット東京 理事の伊藤久は、データセンターがその認定を取得するメリットについて次のように語る。
「温室効果ガスの排出総量削減義務を定める都条例では、一定規模の温室効果ガスを排出した事業所に対して『削減義務率』と『基準排出量』が決定されます。ただし、トップレベル事業所認定を得ると削減義務率が緩和され、排出量が余れば“キャップ&トレード”のようなかたちで他の事業所に販売することもできます」
それに加えて、トップレベル事業所認定は「事業者としてきちんと環境に配慮している」というエビデンスにもなる。特に海外には環境への配慮を重要視する企業も多く、そうした顧客へのアピールにもつながると、伊藤は説明する。「トップレベル事業所認定は、営業面でも活用できていると思います」。
“付け焼き刃”の環境対策では無理! 200以上の評価項目をクリアする
ただし、トップレベル事業所認定は“付け焼き刃”の対策では取得できない。まず、「評価ガイドラインはA4で340ページくらいあり、項目数は200以上あります」(伊藤)という多数の評価項目に対応しなければならない。具体的には、空調や照明といった個々の設備で省エネルギー化が図られているか、それら全体をBEMS(ビルエネルギー管理システム)で監視できているか、環境対策を推進するための社内体制ができているか、といったことが細かくチェックされる。
さらに、この認定は一度取得すれば終わりというものではなく、毎年、更新の申請をしなければならない。その際、評価項目は毎年少しずつ変わり、それに伴って評価方法も変わる。前年度は問題なかった項目も次年度はレベルアップしていることが多く、更新のたびに基準をクリアするのが大変になっているという。
「トップレベル認定のガイドラインはその年に発表されたものを使うのですが、評価する対象は『前年度の実績』です。つまり、後から出てきた評価基準を確認し、前年度の基準から変わっている項目については一から見直して、あらためて判断していかなければなりません。この作業が大変ですね」(伊藤)
伊藤と三井は、トップレベル事業所認定は「生半可な覚悟ではなかなか取得できない」と口を揃える。企業として地球のため、未来の社会のために環境に配慮する、エネルギー効率を高めるという確固たる意志がなければ、たとえ一度は取得できたとしても継続的に更新していくのは困難だ。
データセンターにおける省エネ対策の難しさと「やりがい」
近年、データセンターの電力/エネルギー消費量は膨大なものになっており、その削減は社会的要請とも言える。その一方で、顧客の重要なデータやシステムを安定的に維持するのもデータセンター事業者の役割だ。両社のバランスを取りつつ省エネルギーを進めるには、どんなところがポイントになるのだろうか。
「データセンター内のサーバールームやラックを使うのはお客様ですので、お客様が設置される機器のエネルギー効率は、われわれが触ることのできない部分です。したがって、場所を提供するデータセンター事業者として工夫できるのは、何と言っても空調です」(三井)
空調の効率を高めるためには、熱源の配置と隔離、供給する冷気の流れ(エアフロー)といったものを細かく計算する必要がある。ときには顧客に対して「ラック内での機器の配列」「ブランクパネルの設置やキャッピング」といったことを細かくアドバイスして、「お客様とともに頑張る」こともあると三井は説明する。そのほかにも、館内照明のLED化や日常のあらゆる場面における節電など、アット東京では全社を挙げて地道な省エネの努力を続けている。
トップレベル事業所の申請をする仕事について、三井は「資料作りがとても大変だけれど、企業として省エネ活動をきちんと実践していることが認められる。形として残るのでやりがいがあります」と語る。
「アット東京は、これからも環境にも十分に配慮したデータセンターとして活動していきます。企業や業界を結び、新たな価値をつむぐ存在として、途切れぬ安心を提供する『デジタルビジネスプラットフォーム』を目指したいですね」(伊藤)