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『アメリカン・スナイパー』『ハドソン川の奇跡』に続く6本目の快挙を達成

『運び屋』クリント・イーストウッド最新作 3つのポイントを見逃すな!

2019年03月10日 16時00分更新

文● 上代瑠偉

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1.主人公がアフリカ系を「二グロ」と呼ぶ理由

 イーストウッド演じる90歳のアールはアフリカ系(いわゆる黒人)を「二グロ」と呼び、メキシコ系を「タコス野郎」と笑い飛ばす。両方とも日本人を「ジャップ」と呼ぶのと同じで、絶対に使ってはいけない言葉だ。

 だが、この設定は主人公が差別主義者だからではないだろう。イーストウッドはマイノリティーへのまなざしを持ち続けてきた。

 出世作のひとつ『ダーティハリー』シリーズでは、彼が演じるハリー刑事が毎回違う相棒と組んで事件に立ち向かっていく。相棒の変遷をまとめると、1作目は若手のメキシコ系、2作目はアフリカ系、3作目は若手の白人女性(1970年代は、女性の社会進出が描かれた時代)、4作目はアフリカ系、5作目は中国系だ。

 とくに、ほかの監督と比べてもすごいのが独自の文化も尊重する点だろう。日本で大ヒットした『硫黄島からの手紙』では渡辺謙や二宮和也などの日本人俳優を起用して第二次世界大戦中の日本兵を描いている。前回彼が監督および主演を務めた『グラン・トリノ』もキャストの半分はモン族の俳優だ。

 『ダーティハリー』には「人間嫌い」を自認するハリーが、相棒のメキシコ系の若手刑事に「僕みたいなメキシコ系は?」と聞かれ、「いちばん嫌いさ」と答える場面がある。この返答はジョークのようなものだろう。

 今作のアフリカ系やメキシコ系を容赦なく「二グロ」や「タコス野郎」と呼ぶ主人公の姿は、ハリーを思い出させる。この作品にはイーストウッドの映画人生が詰まっている。

(次ページでは「イーストウッドが娘を出演させる理由」)

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