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まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第63回

究極のビキニアーマーを鋳物の町のガチ職人集団が制作中!

伝統工芸×アニメは地域を救うのか?――富山県高岡市「高オタクラフト」の取組み

2019年03月05日 19時00分更新

文● まつもとあつし 編集●村山剛史

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3Dプリンターの時代に求められるアナログの技

 「金属も形成できるような3Dプリンターも登場しているのに鋳物制作の技術のニーズがあるのか?」という疑問を持つ読者もいるかも知れない。実際、ここ高岡でもCAD/CAM(3D設計ソフト)を用いた型作りも行なわれているのが実情だ。

 「でも3Dソフトで試作した型では、型抜きが難しく量産できなかったり、そもそも強度が足りないこともあります。実際、『これを何とかしてほしい』と困って私たちに相談してくるお客さんもおられるんです」そう話すのは有限会社嶋モデリングの嶋光太郎さんだ。

イベントなどで目にするドラえもんのキャラクター立像もここで原型が制作された

 「ドラえもんの場合も、最初は小さな見本モデルを元に大きな原型を作ったのですが、等身大にしてみると、『頭が大きすぎてバランスが悪い』という印象が強くなったんです。そこで、立像ではオリジナルよりも頭の大きさを少し小さくしたり、様々な調整を施しています」(嶋氏)

 デジタルの時代でもアナログの技が生きる場面は他にもある。金属の表面に独特な風合いを出す、彩色や加色の分野だ。年月を重ねたような重厚感、環境光によって表情を変える金属加工も専門の工房で行なわれている。

彩色加工では古典で登場する「お歯黒」が現代も金属に独特の風合いを出すのに用いられている。金属や溶液、加工時間や方法で手法は無限大だが、「最近は素材の横に、スカウターのように数字が見えるようになった」と野阪氏は笑う

 こういったアナログな技の積み重ねが、高岡から生まれる鋳物に高い付加価値を与え、中国製などの大量生産品との差別化を絶対的なものとしているのだ。

「ビキニアーマー」制作中! 高オタクラフトのこれから

 ワンダーフェスティバル2019で注目を集めた高岡青年会と高オタクラフト。現在は来年のお披露目を目指し本物の「ビキニアーマー」を制作中だ。

高岡の各工房を案内してくれた和田彫金工房の和田瞬佑さん。彫金師であり、高岡伝統産業青年会の会長を務め高オタクラフトの仕掛け人でもある。手にするのはワンフェスで錫の鋳物制作体験で使われた『ワンダちゃん小皿』の樹脂原型

ビキニアーマープロジェクトロゴ

ビキニアーマーのデザイン。デザインスケッチ:堀圭太

装飾マシマシのビキニアーマーだ

 ファンタジー作品ではお馴染みのアイテムだが、実際に作って着用する「本物」となるとポージングが取れるデザイン成形、美しく見える光沢や質感などの表面加工、手仕事による装飾表現など実現しなければならないことは多岐に渉る。

 その技術全てがここ高岡に集積されているからこそ、『ファンタジー世界の中に工芸の職人がいたら、こんな装飾のビキニアーマーを作っているはず』という夢が現実のものになるはずだ。

アニメ×異業種の取り組みを表彰する
「第3回アニものづくりアワード」は現在、応募受付中

 今回紹介した高オタクラフトが進める伝統工芸×アニメ・キャラクターをはじめ、最近はアニメとのコラボレーション企画が盛況だ。こうした状況をふまえ、アニメ業界と一般企業とのさらなるビジネス活性化を目指し、優れたアニメ×異業種の取り組みを表彰するイベント「アニものづくりアワード」が2年前に誕生した(筆者はこのアワードの企画・運営に携わっている)。

 現在、第3回アニものづくりアワードが応募受付中(3月12日まで)。受賞作品は5月に徳島で開催されるマチ★アソビにて発表の予定だ。

第1回は「サントリー天然水×君の名は。」、第2回では「ソードアート・オンライン ザ・ビギニング Sponsored by IBM」がそれぞれ総合グランプリに輝いている

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