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まつもとあつしの「メディア維新を行く」第63回

究極のビキニアーマーを鋳物の町のガチ職人集団が制作中!

伝統工芸×アニメは地域を救うのか?――富山県高岡市「高オタクラフト」の取組み

2019年03月05日 19時00分更新

文● まつもとあつし 編集●村山剛史

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ワンダーフェスティバルで大きな話題となった巨大な仏像(の頭)。事の経緯を鋳物の町、富山県高岡市の高オタクラフト実行委員会に聞いてみた

鋳物とアニメを融合させたら凄いモノが生まれた!

 富山県高岡市――人口約17万人の富山県第2の都市だが、2017年には新幹線開通に伴う過剰投資からの深刻な財政難が明らかになっている。市はコミュニティバスを廃止するなど再建に努めているが市民生活への影響も大きく、地方都市の苦難を象徴する場所にもなってしまっているのが現状だ。

 そんな高岡市だが古くから盛んな鋳物を中心とした伝統工芸が元気だ。特に若手職人が集まる制作集団「高オタクラフト実行委員会」は、アニメ『天元突破グレンラガン』の五月人形兜飾りなど、アニメ・キャラクターの鋳物作品を断続的に生み出し注目を集めている。

「グレンラガン五月人形兜飾り」より。アニメと異業種とのコラボを顕彰する第1回「アニものづくりアワード」クラフトデザイン部門(https://animono.jp/2017award.php)で銅賞を獲得している

 日本各地で地方の「疲弊」が進むなか、伝統工芸とポップカルチャーはどのように融合を果たし、地域経済に貢献しているのだろうか? 現地で詳しく話を聞いた(取材日:2019年2月21日)。

「床の間文化」消滅からの復活

仏像を制作した株式会社梶原製作所の渡邊尚希さんとワンフェスで展示された作品。その大きさが良くわかる

 2019年2月に開催されたワンダーフェスティバル 2019[冬](ワンフェス)の会場で異様な存在感を放っていたのが、高岡伝統産業青年会ブースの巨大な仏像の頭だ。

 じつは、高岡市は日本における鋳造仏像生産のおよそ9割のシェアを持つ、一大鋳物生産地となっている。ワンフェスの展示は、その総合的な技術力を示すものだ。

 鋳物の制作工程は、粘土や樹脂による原型作成から、型取り(石膏や砂など、制作物に応じて様々な型を使い分ける)、金属を流し込む鋳込み、出来上がった鋳物に研磨や彫刻、着色・加色などを施す仕上げ工程と多岐に渉る。これらの工程のほとんどは手作業だが、その流れは読者諸兄になじみ深いプラモデルやフィギュアのそれととてもよく似ているのも興味深い。

 高岡にはこれらの各工程をそれぞれ専門に行う工房が集積されており、分業で完成品を作り上げているのだ。

鋳物製造を行なう様々な工房が集まる長慶寺工業団地の案内図

 工房の1つ1つは家族経営だったり、大きくても従業員10数名ほどと規模は大きくは無い。しかし、それぞれの職人が専門スキルを発揮して、製品に注ぎ込むことで高級仏具や家具、ノベルティといった高付加価値製品を生み出している。「グレンラガン五月人形兜飾り」を制作・販売する株式会社道具もそんな工房の1つだ。

株式会社 道具の道具志朗代表。グレンラガンの加色加工前のマスク部分を見せてくれた
鋳物の形は型で決まる。こちらは砂型を作っている様子
警察署の入り口に掲げられる桜の御紋もここで作られている。道具氏曰く、工房によって微妙に立体の解釈が異なるため、一目で「ウチで作ったやつだ」とわかるそうだ
淡路島洲本市に建立されたドラゴンクエスト記念碑も(株)竹中銅器のもと、(株)道具、(株)梶原製作所をはじめ、高岡の職人たちの技が結集したものだ(写真提供:竹中銅器)

 かつて、この工房では床の間に置かれるような、裸婦や動物をモチーフにした「鋳物の置物」を中心に製造していた。昭和のバブル期にはゴルフコンペのトロフィーなどでも一世を風靡したわけだが、景気後退によってそんな「床の間文化」は過去の遺物となってしまっていた。

 そこで、道具氏はじめ高岡の若手職人たちは、自分たちの技術を様々な形でアピールし、新しい需要を発掘しようと活動している。そのなかの1つがアニメやキャラクターに関連した活動「高オタクラフト」というわけだ。

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